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Killing Park 鉄棒遊戯(2)

「情けない格好」
「もっと抵抗すればいいのに? わざとされるがままになってんの?」
 両腕をロックする必要がなくなった稲葉と長田、二人は離れて口々に健一を罵り始めた。激情した健一は蹴りを放つ。だが蹴りの届く距離を計算に入れていたため二人には届かない。砂を蹴って飛ばすがこれも大したダメージは与えられていない。
「馬鹿じゃないのこいつー」
「あし、みじかっ!」
 六実は冷めた目で眺めている。健一は紐を解こうともがく。しかしガチガチに固定されビクともしない。
「捕まえた!」
 いつの間にか背後に回った倉見。健一は足を掴まれてしまった。倉見は笑っている。
「うわっ。クソッ」
 倉見も異常なほどの握力だ。長田はでかしたと言いながら紐を持ち出してきて健一の足をグルグルに縛った。健一は最後の抵抗とばかりに長田につばを吐きつけてやった。
「いやっあ!」
 ぽっちゃり体型の癖に女みたいな悲鳴上げやがってと健一はほくそ笑む。長田は顔を赤くして怒った。
「このバカチン野郎!」
 長田は拳を握って健一の鼻にストレートを放った。
「へぶっ」
 意識が一瞬飛んでいったように思えた。血の匂いがする。
「こうしてやる!」
 長田が健一のアンダーシャツに手を掛けたかと思うと、引き戸ても開けるかのようにアンダーシャツを引き裂いた。ビリリ!ビリリ!
「…うぉ」
 健一は驚いた。上半身がはだけてしまう。地面にアンダーシャツの破片が散った。
「六実ぃ、下も破いていい?」
「ハハハッ、長田マジで怒ってるぅ」
 長田は六実の指示を待った。目は健一を睨んだまま。健一は恐怖を覚え始めていた。「下も」だって? まさか? ここは公園だぞ? そこまでする…のか…?
 六実が歩み寄ってくる。健一の正面に立った。傍らには3人の少女たち。
「私がやる」
 六実はポケットからカッターナイフを取り出し刃を出す。
「お…い…。やめろ。やめろってバカ!」
「まだどっちが上か解ってないみたいだね」
 六実はグッとボクサーブリーフを掴んでカッターナイフで切り裂く。左の裾から上に刃を入れる。ハラっと切れたゴム。
 健一のペニスが彼女たちの前にあらわになってしまう。
 六実以外の女の子たちは笑った。
「きゃー何これっ!」
 倉見は涙を浮かべ健一の股間を指差し大口で笑う。
「ちっさ…」
 長身の稲葉は鼻で笑った。
「縮こまってんじゃねーか」
 恰幅のいい体格を揺らして長田がニヤリと口を曲げ嘲笑する。
 健一は彼女たちから目を逸らすように目を瞑って下を向く。六実はそのボクサーブリーフをするりと引き下げてカッターナイフでビリビリに破いた。長田が健一の背後に回りこむ。
「肌白ぇな!」
 健一の尻に長田の張り手が飛んだ。パチンッといい音がする。その音でまた六実以外の少女たちは笑い合う。
「ひゃははっ今ちんちんピクっなった!」
「写真撮っとこうっと」
 稲葉は自分のケータイを取り出してカシャリと撮影を始めた。
「あ、あたしも~」
「記念写真撮ろうぜ」
 盛り上がってる三人を尻目に六実は健一を睨む。健一は顔を真っ赤にして耐えていた。
「弟が…、やられた方がどんな気持ちだったか…」
 六実は呟いた。
「今更謝っても遅いけど、謝罪の言葉は?」
「はい…」
 完全に力が抜けてしまった健一は目も合わさず返事をする。
「はいじゃなくて」
「…」
「謝るの?謝らないの?」
 子供を諭すように語気を荒げる六実。健一は目に涙を浮かべていた。
「…」
「黙ってちゃ解らない」
 健一はポロポロと涙を流し始めた。しゃくりあげる。
「泣いちゃった? 泣いちゃった!泣いちゃった!」
 倉見はそれを見てまた大笑い。稲葉は健一の泣き顔をアップで撮ろうとケータイを近づけてきた。間近でシャッター音が響く。
「ぷっ悔しそうな、この顔っ」
「震えてるぞコイツ」
 六実は「どうなの?」と詰め寄る。
「…」
 もうプライドもへったくれもない。男が女の子に屈するなんて恥ずかしすぎる。六実が問うまでもなく勝敗は決していた。しかしこれくらいで追及の手を緩めない六実だった。


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