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初恋のあの娘の前で(4)

「やりすぎかな?」
 千代がボソリと言った。
「甘いよ。コイツ美里のパンツ見といて謝りもしないんだよ。それに私たちおっぱい触られたし!」
 早希が冷酷に言う。俺の髪の毛を掴んで顔を上げさせた。赤面して泣きべそをかいた情けない男の顔ががみんなにもっとよく見えるようにという意図だろう。もう俺の顔は涙と鼻水と血でぐちゃぐちゃだった。
「もっと痛めつけようぜ」
 南が怒りを込めて言った。おもむろに俺の足を開いて右足で俺のちんちんを踏みつけた。
「うぎぉっ!」
 激痛。
 俺はビクッとなって跳ね上がった。勢いで早希と深衣奈が俺の両腕を離してしまった。俺は両手で股間を抑えた。クスクスと教室中に笑い声がこだまする。一年の女子や二年の顔見知りの同級生に笑われているんだと思うと涙が止まらない。
「キャハハッおもしろいな!もっとやろう!」
 南が俺を見下して笑う。俺は蹲って猛烈な痛みに耐えた。逃げようとか恥ずかしいとか何も考えられない。
「みんな写メ撮っとこうっ」
 深衣奈が号令をかける。その声に賛同の声があがってやがてパシャッ!カシャッ!とシャター音が響く。
「美里ちゃん記念写真っ。ほら並んで」
「えぇーヤダ」
 美里は早希に押されて俺の横に並んだ。制服を着た美里と密着する。「下を向くな」と早希が俺の両手を後ろに回し、髪を掴んで顔を上げさせる。深衣奈がシャッターを切る。深衣奈は美里と俺に撮れた写真を見せてくれた。ちゃんと俺のちんちんが写るように身体全体を枠に入れている。好きな美里と初めての2ショットがこんな写真だなんてショックだ。美里は嫌そうな表情で写っている。俺だってこんなの嫌だ。消してくれと言おうとしたが声にならない。
「ういやぁーしてぇー」
 俺は涙声で嫌だ消して欲しいと訴える。気持ちの悪い呻き声にしか聞こえなかった。
「なにコイツ…」
 美里が俺の側を離れる。その時美里がハッと息を呑んだのが解った。そして悲鳴を上げる。
「いやっ!」
「オイ、お前どういうつもりなんだよ」
 早希の声色が低くなる。どういうつもりと問われても俺には何のことか解らない。
「いやだ何これ…?」
 千代が呟く。
「初めて見た」
 真悠子が抑揚なく言った。
「写メ撮られて興奮しちゃったんだね。これは勃起って言うんだよ」
 深衣奈が笑って応じる。その言葉に俺は自分の股間を見た。深衣奈の言う通りちんちんが屹立していた。俺は混乱して急いで手で隠そうとするが早希が俺の手を離さない。早希が凄んだ。
「お前、どういうことか説明しろよっ」
「ううぅ…見ないで…」
「アハハッみんなもよく見えるように両手と両足広げてあげよ」
 深衣奈は楽しそうだ。深衣奈の指示通り、南と真悠子が俺の足を引っ張る。深衣奈が左手を早希が右手を引っ張って俺は大の字になってしまった。抵抗はしたがあっさりと手足を広げられた。10人以上の女の子たちが見下ろす中、俺の勃起したちんちんを晒されてしまう。
「やめ…て…」
「美里っ蹴ってやれ。コイツのちんこ潰してやれ」
 俺の消え入りそうな声を無視して早希が呼びかける。美里は「いいよ…」と拒否した。かなりドン引きしている。
「ヒクヒクしてる~」
 南がゲラゲラと笑っている。
「どうして大きくなるんですか?」
 真悠子が誰に言うでもなく問いかける。興味津々のようだ。
「興奮してるからだよ。あたしさぁ、思ったんだけどぉ、美里ちゃんのこと好きなんじゃないこの子?」
 深衣奈が弾んだ声を上げる。
「えっ!?」
 早希が驚きの声を上げる。思ってもみなかったという声だ。他のみんなも一葉に驚いている。俺は美里の顔を見上げる。先ほどまで汚いものを見るような目だったのが、怒りと侮蔑を込めた目に変わっていた。
「ほら当たりだよ。美里ちゃん見る目だけ違うもん。見てれば解る!」
 深衣奈が嬉しそうに言った。
「いやだ。こんなヤツ!」
 美里は何を思ったのか俺の足の間に入るように回り込む。そして足を振り上げる。怒りを込めた表情だった。サッカーボールを蹴るように俺のちんちんを蹴りあげた。パーンと小気味いい音が響く。一瞬のことだった。
「いぎゃーー!!」
 あまりの痛みに俺は叫び、暴れた。4人に抑えこまれて動けない。俺の思考は痛みに支配される。その痛みは一発では終わらなかった。美里は「汚らわしい」とか「死ねぇ」とか言って連続して俺のちんちんを蹴りまくった。周りでクスクス笑いが起きる。
 パーンッ!
「ういぎゃー!!!」
 パーンッ!
「いいいぎい!!!」
 どんなに身体を捻っても逃れられなかった。それどころか、南と真悠子の手で足が持ち上げられて、ちんぐり返しの格好にさせられた。勃起したちんちんに美里の生脚が何度も振り下ろされる。
 何発目かで千代が「潰れちゃうよ?」と冷静に言って間に割って入った。初めは笑っていたみんなもそろそろ止めないと…という雰囲気になってきた時だった。
「ううううううあああああ」
 俺は手足をばたつかせた。痙攣が起こった。
 深衣奈が自分の足で俺の左腕を抑え込んで、自分の手を自由にする。その手を股間に伸ばしてくる。何をするかと思えば深衣奈は俺の金玉をおもむろに握った。ニギニギと玉の形を確かめるように…。握り慣れている様子だ。
「大丈夫だよ。潰れてない」
「ふーん、結構丈夫なんですね」
 真悠子が不思議そうな表情でぼそりと呟く。
「じゃあもっと蹴ってもいいんじゃない?」
「さすがにちょっと可哀想」
 南と千代が言い合う。
「最後にもう一発蹴らせてっ」
 美里が怒りを込めて呟く。その声を誰も止めようとしない。
「勃起なんてしやがって」
 美里は静かに距離を取った。
「嫌だぁ…やめてくれ… お願いします。許して…嫌だよぉ」
 俺は恥も外聞もなく頼み込んだ。早希は黙っている。何故か早希も怒っているようだ。
「まだおちんちん勃起したままだからダメだって、諦めなよ」
 深衣奈が俺を慰めた。俺は残った力で暴れ、逃れようとするが徒労に終わる。女子たちにしっかり身体をロックされている。もう駄目だ。南と真悠子がさらに俺の足を持ち上げる。腰が浮いて幼児におしっこさせるような格好にさせる。蹴りやすいようにという配慮だ。4人の女子に押さえつけられて…、そこへ美里が勢いをつけて走り込んでくる。
「潰れろー!」
「いあああ!」
 美里の叫びとともに勢い付けられた右足を振り抜く。見事にちんちんに命中する。バチーンッ!と部室内に音が響く。
「まああああっ!!」
 勢い余った美里が俺の胸に倒れ込む。美里の柔らかい髪が俺の顔にふさあとかかった。俺の身体がビクッビクッと震える。美里の指が俺の乳首に触れた。美里の顔が目の前にある。大好きな女の子にちんちんを蹴られるなんて…。でもなんで勃起なんてしてしまったんだ。これじゃまるで変態だ。俺の遠のく意識の中で必死に考えたが答えは出そうにない。
「わっ何これー!?」
 やがて身を起こした美里が自分のスカートに付いた白いものを見て叫ぶ。
「あっ精子だ」
「やだっ!?」
 深衣奈の指摘に美里が悲鳴を上げた。
「蹴られて逝ったんだコイツ…」
 軽蔑の眼差しを俺に向ける早希。
「ケッサクだな。玉潰そうとして射精なんてっ」
 南が大笑いする。
「男子って最低…」
 千代が感想を述べる。
「男の子の射精初めて見た…」
 顔を赤らめた真悠子。
 口々に感想を言い合って部室を後にする美里たち。俺は素っ裸のまま部室に放置された。残った1年の下級生たちと2年の同級生の女の子たちはヒソヒソと話し合った。
 結果、優しい女子たちによって俺は服をなおざりに着せられる。女の子に服を着せてもらうなんて、意識が確かなら丁重にお断りするところだ。彼女たちは逃げるように部室を去っていった。
 俺は結局、見回りの先生が来るまで意識を失ったままだった。


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