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【プレビュー版】プール開きで(2)

 前田アンコは両足を肩幅に広げて仁王立ちしていた。
 一年生の頃から俺に突っかかってくる変な女だ。
 紺色のスクール水着を身に纏い、髪を後ろで結って短めのテールをつくっている。意思が強く芯の太そうな眉に尖らせた唇。赤いほっぺに低い鼻。こまっしゃくれた顔だ。ペチャパイの癖に胸を張りやがって。
 靖奈(やすな)という立派な名前がムカつくので「やす」を「安」に変えて、「安子」というあだ名をつけてやった。甘いものを好み、餡こが取り分け好きらしいので「安子」が「アンコ」に変容していったのだ。
 隣にはヒヨコが申し訳なさそうに佇んでいた。
 本名、後藤雛子は俺好みの女子だ。丸顔で意志薄弱。男がしっかり手綱を握ってやらないと駄目なタイプだろう。一人では何もできないような華奢な女だ。頬をペチンと張ってやれば何でも俺の言うことを聞きそうなところがいい。
 おどおどした目と所在なさ気な手、ぷっくりと膨らんだ胸の辺り、内股で細い太もも。どれをとっても男の征服欲がそそられた。
 女子たちは男子たちより早く着替えてプールに集合していた。スクール水着の女子たちがわんさと居る。お喋りに興じて煩いったらない。女子というのは喋るしか能がない生き物だから困るぜ。
「ちょっと男子っ もう授業始まるのに遅いでしょっ」
 プールサイドに集まった女子の群れからメガネキャラの女が出て来る。
 中川鞠鈴(なかがわ まりりん)は俺の一番キライな部類に入る人間だ。
 メガネの奥の釣り上がった鋭い目。硬く結ばれた唇。正義感に溢れた態度。どれも癇に障る。副学級委員長だが、その振る舞いは「副」ではなかった。大らかなリュウシンと違って細かいことをチクチクとのたまう女だ。どうでもいいことを問題提起し、さも大問題かのように喧伝する。まるで民●党の女党首かよと思う。尻がでかいことだけは評価できるが、他は見るべきところはない。
「ったく…」
 俺は目を逸らして無視してやった。
「プール開きであいつらテンション上がってんだ。許してやってよ」
 リュウシンがニコニコと相手をしてやったようだ。
「べ、別にあんたたちのことなんて心配してないんだからね!」
 なんだ、マリリンのやつ、頬を赤くしやがって。
「あーしぃ、水泳で金メダル取りたい! そんでみんな幸せにすんだあ!」
 べらべらと一人でまくし立てているのは奈々だ。
 中目奈々(なかめ なな)はバカで有名な女である。まず算数ができない。そして国語も怪しい。体育と図工だけはズバ抜けて良いのだが他は全滅だ。身体は小さいくせにパワーはある。女版のトンタと言っても過言ではない。
 色黒で、常に開いた口。八重歯に、夢見がちそうな目。ちょんまげのように結んだ髪。身体のラインはほっそりとして、身体をくねらせているせいか胸やお尻が強調されていた。つまりエロい。
 断言してもいいがコイツは将来ヤリマンになる。ギャル化してスポーツのようにセックスを楽しむに違いない。間違っても金メダルなんて取れないだろう。

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