朝倉佳苗(あさくら かなえ)にも、その気持ちはよく解った。
「あたし、牛の乳搾りって初めて!」
桃奈(もな)は満面の笑みで牛を見つめている。彼女は一年生。ツインテール、八重歯、色黒でぽっちゃりとした可愛らしい娘だ。部活が終わったばかりでジャージ姿のまま。目が輝いて、口は開きっぱなしだった。
佳苗は冷静なつもりだったが、目の前の牛は「も~も~」と鳴きながら悶ているので可愛らしいと思い、興奮もしていた。
「お手本見せてあげるわ」
良奈(らな)はウヒヒと笑い、手を伸ばす。
桃奈の姉である。制服のスカートが少し捲れているが気にしていない。明るい茶に染めた長い髪に悪戯っぽい口元、八重歯に、我の強そうな眉。佳苗と同い年だ。
「…」
窓際の席で冷めた目をしている亜美。
彼女は乳搾りに参加せず、スマホをいじっていた。佳苗はやはり亜美のことがまだ怖いと感じる。付き合ってみれば優しいと思えるが、初めて見たときの格闘のセンスは鮮烈な印象だったのだ。サラサラとした黒髪や品のいい口元などからは想像できない強さがある。
佳苗と同じく立ち見の少女、春香(はるか)は中学になってからの友だちで興味深そうに牛を見つめていた。
「…っ」
メガネが曇って鼻息が洗い。
低い身長に三つ編みやメガネ、暗い表情は全体的に大人しい印象だ。桃奈よりも歳上なのに幼く見える。
「握り方はこう!」
良奈が人差し指と親指でマルをつくった。オッケーサインを出しているみたいだ。
「搾るときは中指ぃ、薬指ぃ、小指ぃって手を閉じていくの」
空中で実演して見せて、良奈の手は最終的にグーになっていた。
「握る場所はここね」
「ゥ」
牛が小さく呻いた。
誰も居なくなった教室で佳苗たち5人の少女と1人の牛、けんじが残っていた。
掃除当番をサボったばかりか、紙のボールで野球を始めた彼の愚行に当番の佳苗たちが怒ったのだ。中2になっても懲りない男だと思う。他の男子には逃げられたが行動パターンの単純なけんじだけが狙われて捕まったのだ。
お灸を据えてやろうということで彼のズボンとパンツを下ろして、上半身は裸にさせた。机を2つ使って、両手を前の机に、両膝を後ろの机についた四つん這い状態だった。
同年代の女子の前ではとても恥ずかしい格好だろう。
こんな屈辱的な目に遭っているのに、けんじのおちんちんは見事に勃起し、赤く腫れたように興奮している。もう見慣れた光景だった。
良奈はそれを無造作に掴んだ。
熱り勃った竿の根本を人差し指と親指でホールドする。キュッと首を絞めるように穴を小さくした。
「んも!?」
「ちょっと金玉が邪魔だなー。佳苗ちゃん、この袋さ、摘み上げといてよ」
「え…」
佳苗は嫌そうだが、メンバーの中では男子の裸に慣れているほうだったので口を尖らせながらも摘んでやった。汚い雑巾を摘むようにして金玉袋を爪で引っ掛け持ち上げるのだ。
けんじの表情が歪む。びくんっとおちんちんが跳ねた。
「うわっ ビクッてなったー」
桃奈はすべてが初めてのことで初々しい反応だ。
「こうして」
良奈は教えたように指を折り曲げて実演して見せた。パンパンだった肉棒がさらにパンパンになっていく。ぎゅうっと絞られていった。最後の小指まで握られた段階で、半分だけ皮に覆われた亀頭がおもしろ
いように赤くなる。血の逃げ場がなくなったらしい。それほど良奈は強く握ったのだ。
いように赤くなる。血の逃げ場がなくなったらしい。それほど良奈は強く握ったのだ。
「んぐぐ…」
「も〜って言いな! 牛だろ! お前」
「ん、も〜…」
けんじは悔しそうに良奈に従った。
彼は小学生時代から彼女たちの言いなりなのだ。