これは僕が高校を卒業したばかりの頃の物語だ。
「三遍回ってワンッて言って」
榊さんは僕を全裸にさせるとそう命令した。
真夜中の公園で僕はおちんちんが勃起しちゃった状態だ。前を隠すこともせずに気をつけの姿勢でコクリと頷く。
靴もメガネも腕時計も整髪料もない。正真正銘 生まれたままの僕の姿を榊さんはつまらなさそうに眺めていた。
化粧をしてマニキュアも塗って、茶髪に染めた髪もキレイだ。肉感的なジーンズにキャミソールというボディラインが浮かび上がっている。白い肌を見せているのは腕の部分だけで後は完璧に服を纏った状態であり、僕とは真逆である。
唇がぷにっとしていて少し開いている。とろんとした目と大人可愛いメイクに引き込まれそう。彼女は軽く腕を組んで片足に体重を乗せ、首を傾げて僕のみっともないおちんちんをシゲシゲと見る。
大砲のように砲身を持ち上げて挿入準備、発射準備ともに完了している。プルプルと震えてはいるが胸を張って腰を前に突き出し、できるだけ堂々と立派に振る舞った。
ビビっているとバレないようにするだけで必死だ。
僕はその場で犬のように自分の尻尾を追いかけるがごとく、駆け足で回った。ザッザッザッと地面の砂が舞っている。硬くなった肉棒はまさに尻尾みたいに横揺れしてバカみたい。
外灯からやや離れているのが救いで、明るいところで見られたらと思うと死にたくなるくらい恥ずかしい。
榊さんのほうが歳上だけど身長は僕のほうが高い。僕は鍛えているので胸板はあるほうだ。華奢な榊さんと比べれば、当然だが暴漢を撃退するだけの体格を持っている。立派な成人男子であるにも関わらず、女性の前で命令されるまま、おちんちんをブラブラさせて走り回る姿は実に滑稽だ。
同僚や友人の前でやるような行為ではない。
「わぁん!」
ピタリと足を揃えて急停止し、すかさず姿勢を正す。指先を伸ばして気をつけをし、胸を張った。榊さんの望みどおりの言葉を放って僕は舌を出しハァハァさせていた。
恥も外聞もない僕の彼女への忠実ぶりは、ペットかプログラムされたロボットのようなものだ。あるいは玩具の兵隊か。しかし兵隊のようにピタリと止まったはずなのに、おちんちんはゆぅらゆぅらと宙空を漂った。
体操の選手が最後の最後で着地を美しく見せられなかったようなもの。
勃起した硬い肉棒は止まることができずに、はしたなく尻尾を振るみたいに揺れ続ける。榊さんは「駄目な子…」という瞳の色だ。失望しているのかも知れない。
僕は彼女に気に入られたい一心だが、興奮して尻尾を振っちゃうような駄犬では飼って貰えそうにない。審判を待つように僕は目をつぶって見捨てないでと祈るしかなかった。