戦いの火蓋は突如として切られる。
俊也(としや)はメガネを外して上半身裸になった。学校指定のジャージであるハーフパンツだけの恰好だ。祭のときに買ったナントカマンのお面を装着してファイティングポーズを取った。
「ウィー!」
中指を立てて妹たちに叫んでいた。
何か違う気もするがそんなことはどうでもいい。
「マカロンのうらみー!」
「まつだいまでたたったる!」
右サイドポニテの莉奈(りな)は双子の姉である。
左サイドポニテの玲奈(れな)は双子の妹だ。
わざわざ体操服に着替えてくる辺り、彼女たちの本気が伺えた。だが俊也からすれば取るに足らないことだ。飛んできた蚊を叩き潰すようなもの。
「妹の分際でほざけやがって!」
先手必勝だ。腕を広げてダブルラリアットをお見舞いしてやる。莉奈と玲奈の首元にまともに喰らい、俊也の部屋の入り口付近の壁に叩きつけられた。
「ぐぇ」
「ぐぇ」
同じ顔で同じリアクションしやがって。俊也はすぐさま二人の髪の毛を掴んで引っ張り上げた。
「たかが… 駄菓子だろ!」
「痛ーい! 離してっ」
「マカロンは駄菓子じゃないし!」
「っさいわ! ぅおらぁ!」
俊也は二人を引きずり回した。
「ウィー!!」と言いながら水風船のヨーヨーでも遊ぶように莉奈と玲奈を手篭めにしてやった。これは兄である『男』に逆らった愚鈍な女の末路だ。
「ぐぇっへっへっへ」
「離して痛ぁい!」
「最悪! 兄クソ!」
反撃の仕方も思いつかないほど幼い彼女たちに俊也は負ける気がしない。天文部所属、ガリ勉のヲタクであってもこんなチビどもに遅れを取ることはないのだ。
「これに懲りたら二度とお兄ちゃんに逆らうなよ! 鼻ぺちゃの一重まぶたのバカちび×2が!」
「兄ちゃんだって短足のくせに!」
「ガリガリのくせに食いしん坊!」
莉奈と玲奈はようやくパンチとキックを繰り出してぺちぺちぱちぱちと俊也を攻撃する。しかし俊也には生温い。ちょっと痛いだけで耐えられないほどではないのだ。それならと余計に髪の毛を引っ張り回してメリーゴーランドのようにしてやるだけだ。莉奈と玲奈はキャーキャーと喚いておもしろいようについてくる。それだけでもうパンチやキックを放てなくなる。ちょろいものだ。
「ひきょうもの!」
「お母さんに言うよ!」
「アァ? だいたいマカロンがお前らの分だけしかない時点でおかしいんだろうが! 俺のはァイ!?」
「体操クラブの昇級のご褒美に買ってくれたの!」
「スケートクラブの昇級のご褒美に買ってくれたの!」
「俺だって天文部がんばってんだぞ!?」
昇級とは無縁だがそんなことは知らない。兄妹の中で除け者にされたことに怒ってマカロンを平らげた自分が正しいのだ。俊也は二人をベッドの上に引き倒して、狙いを莉奈に絞る。転がった莉奈をぐいと持ち上げて肩の上に乗せた。
「ロビンのタワー… …ブリッジィ!!」
「んぐぇえ…」
涙ぐむ莉奈。グギゴキと骨が軋む。
「りっちゃーん!」
玲奈は起き上がって姉を助けようとローキックやチョップを放った。
「シャーオラ!」
莉奈をベッドに投げ飛ばし、俊也はいい気になった。手も足も出ない奴らをいたぶるのはなんて気持ちの良いことだろう。
「お前、お兄ちゃんに向かって殴る蹴るしやがって。舐めたマネしてんな? あ~?」
ガシッと玲奈の頬鷲掴みしてアッチョンプリケ状態にしてやる。
「ふょふふぃぃ!(はなせー!)」
「くけけけけけ!」
俊也はそのまま玲奈を床に押し倒してうつ伏せにさせる。そして背中に馬乗りになり両手で玲奈の顎を持ち上げた。
「キャメルクラーッチ! ぐわっしゃー!」
「んぐぅぅっ……」
背中が反って苦しそうな玲奈。涙ぐんでいた。だが男に楯突く女などこうでもして教育してやらないといけないのだ。グキボキと痛めつけて俊也は玲奈を解放した。
「フンッ。口ほどにもない… 俺の勝ちだ」俊也はそのままくるりと回転して玲奈の体操ズボンを掴んだ。「マスクがないからこれを剥ぎ取らせてもらうか」
ずりっと脱がせていく。
「んん!?」
満身創痍の玲奈は自分の身に起こったピンチにすぐに反応できない。モジモジッと抵抗するだけ。五角形パンツが丸出しになってしまって恥ずかしい。
「くけけけけけ!」
ぺんぺーん!
俊也はパンツの上からお尻を叩いてやった。打楽器のように良い音を奏でる。
「玲奈から離れろ!」
姉である莉奈がカットインしてきた。ベッドの上からジャンピングキックだ。本来ならここで大げさに転がるべきだろう。妹のピンチを救ったというストーリーができる。だが、これはお遊びではない。絶大な兄に対して二度と逆らえないようにするための教育だ。
無視して体操ズボンを足から引き抜いた。
すぽーん!
「フンッ」
立ち上がって体操ズボンを腕に嵌める。
「か、返せー」
「なんてことすんだー! エロ兄!」
「五月蝿え! 負けたやつが文句言ってんじゃねえコラ! お前もこうだっ」
俊也はいい気になっていた。無力な民を蹂躙するのはなんて愉しいんだ!
莉奈に覆いかぶさるようにして抱きついて、その小さな身体を引き込んだ。背中から両手を回してがっしりと抱える。
「きゃああ!」
非力だ。女のガキなど天文部男子の敵ではない。
そのまま持ち上げてパイルドライバーの態勢に入る。莉奈は足をジタバタさせて暴れた。
「ぅいやあぁあ!」
「へっへっへっ」
ベッドに上がって枕を蹴り、そこをめがけて落下する。「スクリュードライバーッ!」ぜんぜんスクリューしていないパイルドライバーが炸裂した。
「ふぎっ」
「お前も終わりだ。俺に勝とうなんて一生無理だな。マスクの代わりにこれはいただくぜ」
恥ずかしいことに莉奈はその恰好のまま体操ズボンを下ろされていった。
「ふぎゃああ」
暴れても後の祭りだ。パンツを丸出しにしてやる。
「うぇえええええん」
負けた姉を見て泣き出す玲奈。
「ふんっ…… またつまらぬものを斬ってしまった」
立ち上がって剥ぎ取った体操ズボンを腕に嵌める。
これでコイツらは戦意を喪失したはずだ。
「ウィー!」
両腕に女児の体操ズボンを嵌めた怪人が誕生してしまった。
「ぅぅっ… ぐすっ… おぼえてやがれぇ バカ兄!」
涙ぐむ莉奈。
パンツ丸出しの恥ずかしい二人は支え合いながら俊也の部屋を出ていった。
コメント
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傍若無人に振る舞う兄に対する一転構成が楽しみです
双子ならいろいろな責めが期待できそうですね
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> 傍若無人に振る舞う兄に対する一転構成が楽しみです
> 双子ならいろいろな責めが期待できそうですね
この後、双子妹を助けるために大きいお姉ちゃんが登場します。
3姉妹に囲まれてあんなことやこんなことをされちゃいますよ!
女の間に挟まれた男兄弟ってどんな気持ちなのでしょうか。
書いてておもしろいです。