これは僕がS学5年生の頃、仲のいい三家族で海水浴に行ったときの実話である。
僕とお母さんとお姉ちゃんのK家、それからT家のお母さんと娘二人、M家のお母さんと娘二人、女子が八人で男は僕一人だけというバランスの悪い大所帯の日帰り海水浴だった。
こんなオンナばっかりの旅行なんか、ぜんぜん乗り気ではなかったけど、連れて行かれたのだから仕方ない。S学生が家族旅行を拒否るなんて難易度が高い話だからな。僕は連れて来られただけ。自分に言い聞かせるしかない。
兎にも角にもこの三家族はお母さん同士も仲がよく、娘達も仲がいいので、何をするにも一緒の家族ぐるみのお付き合いなのだ。ただ僕一人を除いてはという注釈は付けさせてもらうけどね。男が女子なんかと仲良くするなんて、そんなダサいことできるかよ… って感じだ。
「あっ 海見えてきたっ」
「めっちゃきれいー」
「早く泳ぎたいねっ」
後部座席からキャピキャピした声が聞こえてきた。お姉ちゃんとその友達が騒いでやがる…。オンナってすぐ騒ぐんだよな。だから一緒の旅行って嫌なんだ。
「うわーテンション上がる~」
「ビーチも見えてきた。けっこう人多いね」
両隣の席からも女子の声、うんざりだぜ。
僕は自分の友達が一緒じゃないから、海に行ってもたぶんつまんないんだろうなと思う。一人で泳いでも楽しくないだろ。すぐ飽きそう…。まあ女ばっかりの団体行動だから男が一人くらい居てやってもいいかって思うけど。基本、僕は既に飽き始めてるよ。
不意に手が伸びてきた。
がさっ
「ぁ、おい!? 姉ちゃん。オレのポテチ取るなよッ」
「うるさい、みつお! お前だけ独り占めするなー」
僕のお姉ちゃんのみかだ。おバカの癖に本当に偉そうで生意気だ。後ろの席からひょいと僕の持っていた菓子袋に手を伸ばしてきやがったんだ。オンナの癖にはしたない!
「お前はさっきビスケットみたいなもん食ってただろ!」
「お姉ちゃんに向かってお前って言うな! 小せえな、クソガキ!」
「なぁにぃ!?」
どうしようもなくイライラしてしまう。乗り気じゃないからこんなに苛つくのか? いや八人乗りの大きな車だけど、荷物も多いから僕たち子どもは後ろにぎゅ~ぎゅ~に押し込まれて乗せられているからかな。狭くて苛つくんだ…。
「…もうっ 煩いな」
横に座ってるえみはムッとした様子で睨んできた。
「ポテチくらい、いいじゃん」
もう一人横に座ってるけいこも呆れたのか溜め息を吐いた。
彼女たちは僕の同級生でクラスも一緒の、T家のえみと、M家のけいこだ。二人とも景色が見たいからとか言って僕を真ん中に座らせやがって、それもイライラさせる要因の1つだろう(僕は窓際に座りたいと言ったのに、ここでは男の意見は通らないんだ)。
「オレが買ったポテチだぞ。部外者は黙ってろよッ」
「知らないわよ。カバンの上にお菓子こぼさないでよ」
「暴れるとツバが飛ぶからやめて。男子ってほんと幼稚~」
ムカッ
僕は言われて腹が立った。同い年でオンナの癖に好き勝手に言いやがって。男を敬わないと後で痛い目を見るんだからなッ。男が上で、オンナが下。自然の摂理ってやつを解らせてやらないとなっ。
ムカついた僕は即座に言い返していた。
「は? お前らだってツバ飛ばしてるだろっ」
隣の女子たち、正確に言うと僕の両隣にはリュックサックが挟まれていて、えみとけいこは自分たちの荷物で僕との接触を避けている。だからリュックの上にポテチの粉が落ちるのを心配して文句を言っているのだ。ちなみに左隣りがえみ、右隣りがけいこで、運転席の後ろに当たる一番右側にはけいこのおばさんが座っている。
「服着てよ! もうっ」
「乳首丸出しでキモい!」
えみとけいこの波状攻撃が来た。
確かに僕は上半身裸だ。海に着いたら早く泳げるように、先にTシャツは脱いでおけとお母さんに言われて車に乗り込んだんだ。「男だから別にいいだろ」ってね。男は女子なんかと違って上半身くらい異性の前でも恥ずかしくないし、確かに脱いでおいたほうがコウリツテキだなと思って、言う通りにしただけだ。海に行ってから時間をかけて水着に着替えるアホの女子たちなんかとは大違いである。
「はんっ。海に着いたらすぐに泳げるからな。こっちのほうがコウリツテキなんだよっ」
こいつらよりも先に、1番で海に入ってやるぜ! と僕は気が大きくなっていたんだ。
「なんで上脱いでるわけ? 意味わかんない」
「そうよ! 気が早すぎ。ホントにバカかもねッ」
「いや、今説明しただろッ」
「あんたガニ股でスペース取りすぎ~。ふんっ」
左隣りのえみはそっぽを向いて僕を非難した。
「背が小さいのに態度は大きいんだよね。みつおは。ふんっ」
右隣りのけいこも調子に乗って僕を小馬鹿にする。
話がどんどん飛ぶな。論点ずらしや会話のゴールポストがみるみる動いていく。人の話も聞かないし。これだからオンナと話すのが嫌なんだ。
イライラ!
「あんたなんて私たちに囲まれたら捕まった宇宙人状態の癖にさ」
昭和の時代に流行ったグレイという宇宙人のことを言っているのだ。そいつが実際に捕まったときの絵面がまさにお父さんとお母さんに手を繋がれた子どもっぽくて…。要するにチビだと言いたいようだ。
「運動も苦手で足遅いし」
「成績だってウチらのほうが上だし」
オンナって頭悪いし、ほんとすぐ徒党を組むよな。こいつらは弱いもん同士でつるんで男子に対抗しようとするんだ。僕がもう少し大きくなったら筋肉量の差で力を見せつけて黙らせてやるのに。ビビらせて刃向かえないようにしてやる。男の力を舐めるなよ!!
「てめぇら…」
「うるさい黙れみつお! バーカ! アーホ! ちーび!」
みかのやつっ。タイミングよくお姉ちゃんの小馬鹿にした口調がみんなの笑いを誘った。えみとけいこの援護射撃をしたのだ。
「くぅ…! なんだと! だいたいお前ら…」
「煩いわよ! みつお!」
僕の反論を遮るように、運転席からお母さんの大声が飛んでくる。ビクってなった。女性陣の波状攻撃に、僕はついに黙るしかなかった。
「女の子になんて口の利き方するの! ちんちん付いてるんだからもっと男らしくしなさい! 優しくしない子はここで降ろすよ!? ふんっとにもう!」
小競り合いを一掃する母親の怒りに一瞬で騒ぎが収まった。
「ふへへ、ダッサ」
「うふふ、怒られてやんの」
えみとけいこがニンマリと笑って小声で僕を誂う。母親に叱られるという、男が女子に見られたくない姿ランキングの上位に食い込んでくるやつだ。顔が紅潮してくる…。なんで僕だけ…!
「ぐぬぅ…」
くそっ。理不尽だ。恥かいた…。こいつらだって騒いでたのに…。女ばかりの大所帯だから必然的に男性の発言力というものはないに等しいのだ。
【本編に続く…】
平日毎日投稿企画の第3弾です。
この小説はみつおさんが実際に体験したお話を元に書かれております。昭和の男子の性が軽んじられていた時代のお話です。
お父さんの存在が語られていないことからも察することができますが、極端な男嫌い家系で、みつおさんはお母さんから「なんでお前だけ男なんだよー」と言われた記憶が色濃く残っているそうです。
一緒に海水浴に行った仲の良い家族も、お父さんだけ来ていません。娘ばかりで男子はみつおさんただ一人。
「お前は男だから今日はすっぽんぽんだよ」
お母さんの指図で小5年生なのに水着を与えられず、みつおさんは裸で海水浴をすることになりました…。
★絵師、さくらだでんぷんさんに挿絵を描いてもらいました!
みつおさん体験者ご本人や絵師さくらだでんぷん様に感想コメントがありましたらぜひお願いします。励みになったり、次の作品に対して意欲に繋がったりしますのでCFNMラブの気持ちを伝えましょう。
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※現在新作構想のため休載中です!
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