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お隣さんへの犯罪行為で(2)

 しばし沈黙。
 とうとう歳下の女の前でほぼ全裸になってしまった。靴下だけ履いた状態だから何だか全裸より惨めだ。ちょっとパンティ盗まれたぐらいで怒り過ぎだっつーの。
 しかしどうやら110番だけは避けられた。その代償として自分でも情けないと思うこの身体を、ただお隣さんというだけの女に視られている。女なんかにこんなことさせられて、惨めだ。俺のちんちんが女の前で萎縮してしまっている。弱みがなければ今すぐにでも犯してやるのに! 麻衣の蔑んだ目、俺の縮こまった身体が、俺の臭い部屋に佇む。俺は裸体をさらけ出しているのに、麻衣は服を着ている。俺は居た堪れなくなって両手でちんちんを隠した。
「あ、あの…?」
「土下座は?」
「あ、ああ…」
 そうか土下座もしなければいけなかった。俺は跪き、額を床につける。腹の底から怒りがこみ上げてくる。他人には見せられないな…。
「謝罪の言葉はないんですか?」
「…!? …な、もう良いだろ? 勘弁してくれ」
 俺は頭を上げて許しを請う。俺はそのとき目を疑ってしまった。麻衣がケータイのカメラで俺の土下座光景を撮影してやがったのだ。
「ちょっ…。撮ってどうするつもり…」
「何、頭あげてるんですか!」
 素早く振り上げられた布団たたきが俺の左腕にヒットした。
 バシンッ
「うあぁあ!」
 我ながら情けない声だ。俺は反動で床に転がる。素肌に布団たたきは殺傷力が増すようだ。
「いてえ…」
「謝罪の言葉は?」
「う、あ…、あ」
 俺は怒りを忘れ、撮影されていることも忘れ、すぐに座り直し土下座した。
「も、申し訳ございませんでした。もう二度としましぇん。慰謝料も払います!」
「それと顔も合わせたくないからここ引っ越してください」
「はいっ」
「それから…」
 俺は身を起こした。判決文を言い渡される段階だからもう土下座はいいだろう。
「それか…ら…」
「はいっ」
 まだあるのか…。悔しい、悔しいが我慢だ。喉元過ぎれば…。
「ちょっ…」
 俺は台風が去るのを耐えて待てばいいだけだ。
「何それ?」
「え?」
 麻衣は恐ろしく冷めた声で言った。今までよりトーンが低い。
「何でそーなるんですか!?」
 何を聞かれているのか解らなかった。何きっかけに怒りのボルテージが上がったんだよ!? もうこれで気が済んだんじゃないのか? 女の前で…こんなに悔しい思いをさせられて!
 俺は間抜け顔のままで麻衣の顔を見つめた。引きつった表情だ。パンティ盗んだことを許して欲しくて飼い犬のように従順な態度を示しているというのに! なんだってんだ!?
「…あ」
 俺は自分で異変に気がつく。麻衣の顔は見る見るうちに、さらに怒り度合いが増していく。ゆっくり布団たたきが振り上げられる。ゴムを限界まで引き伸ばすようにだ。
「いや、あこれは、違う、う、…ち、が」
「ハァアァン!?」
 麻衣の口調が変わる。思い切り布団たたきが振り下ろされた。
 バシィィィンッ!!
「いぎゃー」
 それから容赦なく何度も布団たたきを打ち付けられる。
「何でだなんだ、このヤロー!?」
「これはイテェ! …その…アガッー!」
「何おっ勃ってやがんだテメー!?」
 そう、摩訶不思議なことに俺のちんちんは見事に勃起していたのだ。
「いや、そう言うのじゃ、ハギャッー!」
 麻衣の可愛らしかった顔が怒りに歪んでいた。顔を真っ赤にしている。
「最低!!!」
「イギャッーーー!」
「消えろッ!!!」
「アギャッーーー!」
 俺はのた打ち回った。腕で防御すれば腕をメッタ打ちされる。左から布団たたきが飛んでくれば右へ逃げ、右へ逃げると左から布団たたきが飛んでくる。のた打ち回って、逃げようとして立ち上がろうとして、真上から布団たたきを振り下ろされ、尻餅をつき、背を向ければ背中に張り手のごとく布団たたきが飛んでくる。俺は麻衣の前で踊るようにくねくねと動きまわった。
 俺は寝転んで両足で防御姿勢をとった。俗にいう「猪木アリ状態」である。しかし太もも、足裏、内太もも、すねなどところかまわず何発も布団たたきが飛んでくる。あまりの痛みに足を引っ込める。
「この糞親父!信じられない!」
 麻衣は一層強い力で、空を切る轟音を立てて、俺の股間を目掛けて…。
「うなぁー!!!!」
 ちんぐり返しで麻衣にお尻の穴を向けたような格好だったから、股の間から露出した金玉に思いっきり命中してしまった。
 エビが跳ねるように飛び跳ねて、部屋の中をのたうち回った。俺は意味不明なことを何度も叫んだ。麻衣はそれから何度もちんちんを狙って打ち付けてきた。
「潰れろ!!!」
「ぎゃあん!!」
 亀のように防御姿勢を取り、股間を隠すがそうすると今度はお尻に布団たたきが飛んでくる。逃れようとすればちんちんに飛んでくる。
 パンティを盗まれたぐらいで女はこんなに怒るものなのか!ちょっと勃起してしまっただけでこんなに制裁を加えられなければいけないのか!いつまでも終わりの見えない狂騒が繰り広げられた。俺はいつしか意識を失っていった。


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