優は童貞をバカにされたことですっかりと意気消沈してしまった。
絶望だ! もう一生童貞のまま…。誰も自分には振り向いてくれないんだ。もう誰にも声をかけられないと優はガタガタ震えてしまう。
宛てどなく廊下を歩いてフラフラと誰もいない教室に入った。焦らなければならないのに優は窓際の席に座って外を眺めた。そんなことをしている場合ではないのに。プログラムがスタートして早々、既にどうしていいのか解らないのだ。ヘタレ童貞なので仕方がない。
「キャー! 来ないで!」
外から悲鳴が轟いた。優はビクッと跳ね上がって階下を見る。窓を開けて覗き込むと髪の長い女子が大柄で太ましい男に追われているのが見えた。
「ふはぁうっふはぁうっ」
男は90キロはありそうだ。重戦車のように走って、逃げていく女子の髪を掴んだ。
「キャッ痛いッ 離して!!」
「ちょっとの間ガマンしてりゃいいんだ。いいだろっ。な?」
優と同じ境遇の男だ。プログラム参加者である。さきほどホールに集まった8人の男たちの中の一人。あの巨体には見覚えがある。
「離して!!」
女子は何もできずに引き倒されて芝生の上に転がった。男はのしかかって、女子の羽織っていたカーディガンを無理やり脱がせる。女子に抵抗され、引っかかれてもモノともしない。
ゴッ
「黙ってろっ! 静かにしてりゃすぐ済むわ!」太い腕から放たれるストレートが女子の顔にヒットする。「おれだってお前みたいなメスガキなんかにゃ興味ねーんだッ」
歪んだ笑みを浮かべ、女子のシャツを脱がせる。はだけて白いブラが見えた。配慮のない強い力で衣服がビリッと音をたてる。
「こっちだって仕方なくやってんだぞっ。はぁはぁ」
きっと普段は女性に声もかけられない根暗で人見知りの偏屈な思想の陰湿キモニートに違いない。童貞を捨てなければいけないというDTR法の拘束力が彼を強くしているのだ。
「やだっ」
あんな巨体にのしかかられたら、か細いあの娘は身動きができないだろう。女子の髪が乱れて泣きぬれた表情で必死に抵抗している。優と同い年くらいだろうか。童貞に捧げられる生贄として無理やり連れてこられたんだろうな。可哀想に…。
いや、同情している場合だろうか?
おちんちんを切り取られるくらいなら優もあれくらい悪漢になるべきなのでは?
他人の不幸に構っていられないはずだ。優も早く行動をしないといけない。ライバルが一抜けしようとしているのだから。
しかし優は足が竦んで動けなかった。暴力とは無縁で過ごしてきた15年間。平和な国の申し子である。無理もない。
「大人しくしろっ」
「やめてっ」
男は20代半ばくらいか。脂ぎった手でスカートをたくし上げていく。もう少しだ。もう少しで女子のパンツが見られるっ。
優はズボンとパンツを下げて、この短時間に速攻で勃起してしまったおちんちんを取り出していた。
「はぁはぁ…」
ライバルの活躍を指を咥えて見ているだけなのか。いやおちんちんを握って見ているだけでいいのか? 女の子を助けるべきでは? 助けるというよりライバルの妨害をするべきなのだ。それは自分が勝ち抜けるチャンスを増やすことに繋がる。
しかし、シコシコとやり始めていた。おちんちんはカッチカチだった。目は乱暴される女子に釘付け。暴力にビビっているのにしっかりとおちんちんだけは反応しているのだ。
「やだ! やめて! このキモデブ! 息が臭いッ」
「黙れっビッチっめ!」
男は乱暴にスカートをめくり、女子のパンツが露わになる。飾り気のない白の綿パンだ。藻掻いて暴れる生足がエロティック……。初めて見るその下半身に優の頭が追いつかない。猿みたいにシコるしかできない…。
男がパンツを脱がせようと手をかけた。女子に抵抗されても暴力で抑え込む。グイッと力任せにパンツを脱がせていった。
「あぁぁぁあぁ…」
優はガタガタしこしこと女子の股間を見つめた。2階からでは遠すぎる。ちゃんと見えない。つるんっとしていて男子みたいに何もぶら下げていない。割れ目がわずかに見えた。
「ぁぁはぁはぁ…」
しこしこしこしこしこしこしこ……
「ふんっメスガキがっ」
男は楽勝ムードになり、ぶちゅっと女子に口づけをした。征服― 自分の力により女性を抑え込み、これから思うままに蹂躙できるのだ。
「ぅぶっ ぅぅ… やめ… ぅゎ… ぅぷ…」
ぶちゅベロベロッ
いやいやして目をつぶって口を真一文字に結び、押しのけようとする。だが力のない女子はされるがまま…。
「へへへへっ」
ブラをずらして乳を露出させた。小ぶりだがぷっくりと膨らんだ若々しい成長期の胸だ。
「ぁゎゎゎゎゎゎゎゎ」
左手は震えながらも軽く握って口元に。右手はガタガタ震えを利用して勃起おちんちんを高速でしこしこ。ライバルの活躍を邪魔もせず、黙っ… しこって見ているだけなどDTRにおいては愚の骨頂だ。
「おらっ おらっ 気持ちいいだろッ」
ベロチューしながらわしわしと胸を揉んで自らの性欲だけを満たそうとする男。
「痛いっ やめてっ!」
本気で嫌がり必死で抵抗する女子。
「へっへっへっ お前らはいつもおれのこと見下しやがってよ! 年下の癖にちょっと先に入ったからって先輩ぶりやがって! おれのほうが年上なんだぞっ」
「痛い痛いっ やめてっ」
「うるせえっ 女は黙ってろ!」
差別意識丸出しで男は自分のズボンとパンツを下げた。勃起した陰茎を取り出す。短小包茎だが関係ない。どんなに嫌がってもあの娘に拒否権はないのだ。
「いやっ……」
男はガバッと女子の足をおっぴろげた。卑猥なM字にさせて、本来なら秘匿される聖域が丸見えだ。優はがんばって目を凝らし、初めて見るおま○こに夢中になる。あれが… あれが… 女の子のアソコ……。
「はぁはぁ ゥ」
ドピュッ
壁に無駄打ち。
「穴… 穴はどこに…」
濡れてもいないのに挿入しようとしている。だが悲しいかな童貞はどうやって挿入すればいいのかと戸惑っていた。
「おらー!」
気づけなかった。
女子が乱暴されているところに誰かが割り込むなんて、オナニーに夢中で気づけなかった。男の背後からギャル風の恰好をした女子が走り込んできて、いきなり彼の股間を蹴り上げていた。
スパァンッ!
「んぐッ…!?」
「なにやってんだてめー」
「…んぐぎゃあ!??」
男は股間を抑えてのたうち回った。
「大丈夫か? 千笑(ちえみ)」
腰に手を当てて誇らしげに仲間を助けたといった感じだ。ミニスカートで金髪の色黒女子。サングラスを髪にかけている。
「あ、ありがとう。真緒(まお)さん」
はだけた服を直しながら髪の長い女子は立ち上がる。ギャルと対比するとやはり清純派なイメージだ。童貞なら99%は彼女を選ぶ。
「くっそ…! なんだテメー! 邪魔すんな!」
脂汗を流しながら男は叫んだ。勇ましい声とは裏腹に股間を抑えて地べたに這いつくばる姿は滑稽だった。
「ふんっ 童貞のガチクズのキモデブめ。次はマジで玉潰すからな」
真緒という女子は吐き捨てて見下ろす。千笑と呼ばれた女子は衣服の乱れを直していた。
「一人で行動するなって言ったっしょ」
「ごめんなさい。いくらDTRプログラムでもこんなに凶暴になるなんて思ってなかった…」
「ハッ チンポコちょん切られるんだから、そりゃ必死になるわな」
憐れんだ目で真緒はペッとツバを吐く。ぺちょっと男にかかった。
「行こっ」
颯爽と去っていくギャル。
「はい」
ノーパンスカートにブラ姿のままの清純派黒髪の女子。芝生を蹴って土を男に浴びせてから、パンツと服を手に持って慌てて真緒に追い縋った。
「………」
しなぁと優のおちんちんが萎れて、後には惨めな男たちだけが残された。
DTR第一夜(2)
現在―― 童貞8名、女子7名、死亡者0