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Killng ParkⅢ 回旋塔遊戯(2)

 それは名前も知らないような遊具だ。ジャングルジムのようでもある。地球儀のような球体のジャングルジムと言えなくもない。正式名称をグローブジャングルという。
「中に入れて」
 六実の指示で健一はグローブジャングルの中に押し込められた。牢獄のようだ。健一は息を整えて周りを見渡す。4人の女子が檻に入った健一を見て勝ち誇った笑みを浮かべていた。健一の中で怒りのボルテージが上がっていく。
「バカにしやがって…」
 健一は彼女たちの反対側の小さな隙間を狙った。肩さえ抜ければ何とか抜け出せそうだ。しかし素早く健一の意図を察した倉見は反対側に回る。そして隙間から頭を出した健一に向かって足蹴にする。
「ぐっ」
 健一は頭を引っ込めてすぐに方向転換する。守りの手薄なところから脱出するつもりだ。しかし倉見がグローブジャングルを掴んで回転させる。すると中華料理店のターンテーブルのように健一の身体は六実の前に差し出された。
「うあ」
 パシィン!
 身構える前に健一の頬に六実のビンタが飛んできた。健一は慌てて頭を引っ込めた。めげずに他の隙間に向かう。しかし移動している間に倉見に回転されて、やはり六実の正面に回ってしまった。
 パシィン!
「くそっ」
 また他の隙間を探す。だがグローブジャングルの内部はポールが邪魔して動きにくい。何度やってモタモタしている間にぐるりと回転して六実の正面に回ってしまう。その滑稽な姿に六実以外は笑っていた。しかし檻に入れられたまま動物園の動物のように見られているのは屈辱だ。健一は再度挑戦する。今度はフェイントをかけてやった。そうすることで倉見を出し抜こうと考えたのだ。
「おっ?」
 しかし倉見は勘が良いのか健一の陽動をあっさり見抜いた。逆回転させてだんだんと勢いをつける。もう少しで抜け出せそうなところまで来ていたのに健一はまた六実の正面に回ってしまった。
 パシィン!
 またしても六実の小さな手にビンタされてしまう。しかし今度は回転の勢いが止まらなかった。倉見がグローブジャングルを走ってぐるぐると回し始めたのだ。
「あはははっ」
 六実たちが退いて倉見が一人ぐるぐる回す。
「またビンタしてやろうぜ」
 今度は長田が回ってくる健一の頬に向けて張り手を振るう。
 バシィン!!
「うおっ」
 尚も回転は続いて稲葉も手を差し出した。健一が回ってくるタイミングで腕を振り下ろす。バレーボール部だったかバスケ部の彼女の腕はしなやかで勢いがあった。
 パァァァン!
「あがぁっ」
 同級生の女子たちにビンタされて健一は頭を引っ込めようとする。しかし回転しているグローブジャングルの中で身動きが思うように取れない。目まぐるしく景色が回って六実、長田、稲葉の順にビンタが飛んでくる。
 パシィン!
 バシィン!!
 パァァァン!
 健一の左頬が赤く腫れ上がっていく。段々と目が回っていく。健一はやっとの思いで頭だけ引っ込めてビンタ地獄を回避した。
「うう…」
 回転がやっとゆっくり収まってきた。球体の中で健一はバランスを崩して尻餅をつく。そのとき軸となっているポールに頭をぶつけてしまった。目が回って立てそうにない。彼女たちの笑い声が響きわたっていた。ここまで遊ばれてバカにされるなんて…。

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