DTR(3)
ついに日が落ちてしまった。 「まずいよ…」 優は女子の姿を探して校舎の中を歩き回っていた。もしかしたら建物の中にはもういないのかも知れない。全員が女子寮に避難してしまったとも考えられる。他の男の姿は見かけるのに、女子が見当たらないということはその可能性は高かった。 「その場合は無効にならないのかな…」 女子寮は男子禁制である。踏み込んだ瞬間に失格だ。女子と出逢えないのならそもそもプログラムとしては欠陥品だから、無効試合になるのではないか。他の男もまだウロウロしているところを見ると優と同じ境遇… 出逢えないのだ。であれば助かる。 昼間のように無理やり襲うようなマネをする男がいるから女子たちは引っ込んでしまったと考えられた。あの一件で警戒されてしまったのだ。 「だったら……」 どこに行けばいいというのだろう? 暗くなってきた廊下の隅に腰を下ろして壁にもたれかかる。どうやってライバルを出し抜けばいいのか検討もつかない。 「ねえ、君」 「!?」 凛とした可愛らしい声が背後から聞こえた。女子だろうか! 優はこんな僕に声をかけてくれるなんてと、光速で振り返った。 「君も見つからないのかい?」 「え? ぁ?」 声とは裏腹に見える姿は男のものだった。線は細くて華奢な印象の男だ。 「あ、はじめまして。僕は正樹と言います」 「は はじめまして……」 優は向き直って頭を下げた。そしてギョッとする。折りたたみのナイフを右手に持っているのだ。 「君も切羽詰まってるんじゃない? 女の子見つからないよね」 「え、ええ…」 人見知りの優は言葉少なに答えた。 「ぁ僕は怪しい者じゃないからね。これは御守りみたいなものさ」 正樹は軽く両手を上げて怪しくないとアピールをした。だが折りたたみのナイフは持ったままだ。 「時間がない。単刀直入に言うね。声をかけたのは協力しない? という提案だよ」 「え、協力ですか?」 優は正樹の柔らかい物腰に半ば安心して、立ち上がって歩み寄った。 「そう。協力プレイだ。女の子を一人ずつ確保して二人で押さえつけて、無理やり童貞を卒業してしまおうという案ね」 「はぁ…」 ルールでは男女のカップルが成立(性交)した時点でプログラムから離脱できる。どちらが先に性交するにせよ、事後は協力してくれる可能性が低くなるのは確かだ。そして一人の女子に対して二人の男子が挿入するのはNGとなる。つまり最低でも二人の女子が必要となる。二回は単独の女子に襲いかかる必要があるのだ。 「もちろん君が先にやっていいよ。その後は僕のときも協力して欲しい」 「はぁ」 正樹という男は自分の信用を得るために順番を譲ろうというのだ。もし… 守らなかったら……? あの折りたたみナイフはそういう意味合いもあるのか…? 自分の身を守る、女子を脅すため以外にもそういう使い道があるのだろう。 「わかりました。協力します」 即断即決。 何もできずへたり込んでいた優にとってみれば渡りに船である。何もしないままでいるよりは何十倍もいい。 「でも… 女子がどこにも歩いてないんですよ…。女子寮に避難してるのかも知れません」 「ああ、それは大丈夫だよ。ルールブックは確認したかい? 夜の10時から12時の間は“夜這い”が可能なんだ」 「よ、夜這い…?」 優は一瞬にしていろいろなことを想像して赤くなった。童貞には刺激が強い。 「つまり女子寮に堂々と入れるんだ」 正樹も少し興奮してきたのか息を弾ませていた。 「よし、作戦を立てよう」 二人は“夜這いタイム”にすべてをかけることにした。 * 正樹と優は女子寮の潜入に成功した。正面玄関の鍵は閉まっているので1階の窓を金属バットで叩き割ったのだ。こんなことをしても侵入を咎められることはない。 「見つけたよ」 「あ、ああはい…」 正樹は折りたたみのナイフを、優は金属バットを持って先に進む。2階へ上がって目当ての寝室を発見する。女子寮の小部屋は二人部屋が基本である。おあつらえ向きに部屋割り表が食堂の掲示板に張り出されているので、ちゃんと確認もしている。 狙うのは奇数で溢れた千笑という少女の部屋。 昼間、太った童貞に襲われていたあの娘だ。 「いいかい? 武器で脅せばいいんだ。実際に傷つけるわけじゃない」 「はいい」 小声で話しながらドアの施錠を確認した。難なく開いてしまった。こんなに簡単に侵入できるなんてラッキーだ。 「針金も探してきたのに、いらなかったですね」 「……いや、鍵をかけてないなんて不用心だ。罠かも…」 しかしこちらには凶器がある。気は大きくなっていた。 中に入ると真っ暗で人気はなかった。静まり返っている。2つあるベッドの片一方はこんもりと人型に膨れていた。黒い髪の毛も見える。しっ…