一年戦争で(13)
体育館倉庫での処刑を終えて以来、ピーチは学校を休んでいる。 一日だけかと思ったらもう一週間以上だ。学校を休み続けて戦争のことが大人にバレたらどうするつもりなんだよ。ツバメ&ハヤブサやツグミちゃんでも恥を忍んで登校だけはしているというのに。 女子って勝手だな。 ちなみに僕はというと体育館倉庫での一件以来、オナニーを覚えて毎日のように自分磨きに勤しんだ。どうでもいいよね。 何にしても僕たちの人質解放作戦は大成功に終わる。女子軍のリーダーであるピーチ一派を葬ったことで勝敗はもう決したようなもんだ。 しかし女子軍はまだ諦めていないらしい。残党が鳴りを潜めて僕たち男子に睨みをきかせてるよ。 そんな女子軍は新たにメガネのイチジクさんがリーダーとなったようだ。 彼女は学校権力を傘に今まで男子に対抗してきたけど、武力の後ろ盾が弱まったことで完全にパワーバランスが崩れてきたんだ。 ピーチ派の最大武力であるブルーベリーとメロンが殺やられたことで女子軍の武力は半減以下だろうからね。僕らが弱い女子の言うことなんて聞くわけがないよ。 それでもイチジクさんは男子軍のところへ交渉に来た。休戦協定を結びたいと言うのだ。男子軍としてはメリットの少ない協定だけど夏休みはみんなずっと一緒に居るわけじゃないし、単独のところを襲われたくないからね。 みんな家族旅行とか塾で居ないこと多いし。 休戦協定はそうして結ばれることになった。 で、夏休みに突入。 8月の後半まで何事もなく平和に過ごしたんだ。戦争なんてなかったことのように。「あれ、イチゴじゃん。何やってんだ」「あ…、待ってたんだよ」 イチゴは浴衣姿で髪も結んでうなじがよく見える。いつにも増して色っぽいな。 僕の家の前で待っていたらしい。うちわを片手に小さい子どもを連れていた。「…ぅー」「ミーコ。これ私の幼なじみのお兄ちゃんだよ」 イチゴは子どもに僕を紹介しているようだ。ミーコとやらは警戒心丸出しで僕を睨んでいた。「ホークさぁ、祭り一緒に行ってくれない?」「え…、う…、あー… 休戦中だからいいのか。いいけど何で僕なんか?」「いやなの?」「あ、行くよ。僕も浴衣着てこよっと」 僕は一旦家の中に引っ込んで浴衣に着替えた。イチゴの奴、何だか可愛く見えてきた。あいつあんなに大人っぽかったっけ…? リビングにあった飴を持って外にでる。「よぉし、子どもー。飴やるぞー」「!? メー!!」 ミーコは飴を視認するとイチゴの手を離れ僕に向かって突進してきた。「おぼっふ!っとと…」 衝突されて倒れそうになるのを耐える。ミーコが僕の手から飴を奪って口に放り込んだ。「お兄ちゃんお兄ちゃん!」 ミーコが僕の手を引いてイチゴのところへ戻る。よし、手なづけたぞ。 イチゴはミーコの手を取り一緒に歩き出した。ミーコを間に挟む形で祭りのやってる公園まで歩く。「せ、戦争の作戦とか考えてんのか?」「んー? 特にないよ。みんなとしょっちゅう会ってないし。戦争のことはいいじゃん今は」「もーいーくつ♫」「ああ、でも2学期始まったらまた戦争(ケンカ)か…」「んー、そう言えば何でいがみ合ってたんだっけ」「ねーると―♫」「えーと僕がいろいろ容疑をかけられて…」「あぁそうか。でもレモンにもいろいろ聞いたけど大したことしてないんでしょ?」「そうだよ。レモンは大げさなんだ」 意外にイチゴは話せるな。一年以上もこうして話してなかった気がする。「まーつーリィー!」 ミーコが突然ダッシュする。しかしイチゴは手を離さない。「こらミーコ! すぐ迷子になる癖に! ミーコ見てないとすぐどっか行っちゃうから、ホークも目離さないで欲しいんだ」「あぁ、そういうことか。わかった」 僕はミーコの手を取って拘束する。犬を散歩かのようにミーコはダッシュし続けた。僕とイチゴというリードで繋がれてるけど、それでもダッシュを諦めない。「子どもってすげえな」 その後、祭り囃子の音を聞きながら金魚すくいや射的なんかをやって遊んだ。 僕らは戦争で激しくぶつかっていたことも忘れて久しぶりに友達同士に戻って遊んだんだ。 遊び疲れて神社の境内へ足を伸ばした。 公園は丘になっていて階段をどんどん上に登って行くと神社があるんだよ。裏手の方は人気もなくて静かだ。 正直ずっと大人っぽいイチゴに見惚れて僕はのぼせていたんだ。「おにい…ぐー」 ミーコはイチゴの膝の上で急に完全脱力して眠ってしまった。さっきまであんなに騒いでいたのにね。「…あのさ。戦争が終わったら…」「え? なに?」「あ、いや… このままだと男子軍が勝つと思うよ。力で制圧すると思う」「うん… まあわかってたけどね。売り言葉に買い言葉だからここまで来ちゃったけど」「このまま行って男子の奴隷なんてことなったら、イチゴどうする?」「どうするって仕方ないじゃない。アンタの言う…