一年戦争で(4)
男子と女子とでは男子のほうが生徒数が多い。 僕らのクラスも総勢30人で、男子は16人に対して女子は14人である。 数の優位もあって、今日中にでも戦争ルールが調印されれば僕ら男子が戦争を圧倒して終わらせることになるだろう。 イーグルは男子の他の派閥にも話しして総意をまとめ、女子のリーダー ピーチの元へタカと共に乗り込んでいった。「ルール的に”捕虜”って兵隊として参加できなさそうな気がする」「え、そうなのか?」「そりゃ普通に考えて捕虜が自由に動けるわけないでしょ」 僕の親友であるファルコンが隣でつぶやく。「なんだ、そっか。せっかくスカートめくりまくってやろって思ったのによ…」「そんなむしのいい話ないよ」「ひゃははっ。まあ観戦してろよお前らは。俺が女子全部のパンツ脱がしてやっからよ」 ドラゴンがそんなことを平然と言ってのける。だからそれだと反則負けなんだって…。 僕らは三人肩を並べて帰路を共にしていた。先ほど話しあったことで単独行動はしないようにするってこともあるが、ドラゴンは護衛というより僕を餌に女子を釣ろうとしているんじゃないか? バトルが好きなんだろう。「参加できなくてもいいじゃん。ずっとどっかに監禁されるわけじゃないんだ。となるとスパイとして女子側の情報を持って帰れる。優位に立てるよ」「ま、どっかのタイミングで捕虜解放作戦でもやって助けてやんよ」 ドラゴンとファルコンはそう言って僕と別れた。 一緒に帰るって言っても、家の中まで一緒に帰ってくれるわけじゃないからな。当然、途中で別れることになる。 僕は安心しきっていた。 よく僕らの年代だと女子のほうが成長早くて背も高いし力もあるし運動能力も男子に引けをとらないなんて言われるけど、そんなわけないじゃん。そんなの一部の発育のいい女子だけだ。 脱がし脱がされの力勝負なら相対的に見て男子は絶対優位だし、女子のほうが成長早いからとか言って都市伝説を信じてるであろうピーチやイチジクさんは余裕を見せているみたいだけど、今に泣きベソかいてパンツ一枚にされて土下座することになるよ。 僕はレモンの五角形のお子様パンツを思い出していた。 不可抗力のアクシデントとはいえ僕は実戦で女子に勝っているという実績もあるし、ルールがあの時点で制定されていたなら女子の一人を葬っているということになる。 女子を葬れば葬るほどクラス中の女子の股間を拝めるというわけだ。 そうだアクシデントついでにパンツも脱がしてやれ。パンツの向こう側がどうなってるのかにとても興味が湧いた。女子のアソコの構造がどうなってるのかじっくり見てやるんだ。そのときは反則負けになってもいいや。捕虜解放作戦で自由になれる日が待ち遠しい。 ひっひっひっ 早くルールが決まらないかな。 僕ら男子に逆らったらどうなるか教えてやる。「なんかホークくん、ニヤついてるよー。キモい」 誰かが僕のすぐ近くでつぶやいた。 自宅のあるマンションまであと5メートルといったところか。 周りを確認すると僕の背後に人影が躍り出た。 みかんだ。 クラスで一番背が低くて丸顔の娘だ。オレンジの髪留めをしていたことからみかんだって。ほっぺが赤くてアホ毛を揺らしてて子供っぽい奴だ。「ホーク…、ちょっと話があるんだ」 もう一人の声が聞こえる。 涼やかな声、潤った瞳、背中まで届くさらさらの長い髪、凛とした立ち居振る舞い。 僕の自宅のあるマンションの入り口から現れたのはイチゴだった。「え? なんで…?」 僕の家の前にこの二人が居るなんて思ってもみないことだ。二人ともランドセルを背負ったままだった。「ちょっとこっち来てくれる?」「え、なんだよ。待てよ、なんの用だ?」「…戦争が激しくなる前に聞いておきたいんだ、私。幼なじみとして話しておきたくて」「話? いや…話って、ここでもできるじゃん…」 僕はそこはかとない不安がよぎる。 ずっと口を利くことのなかった女子連中が、向こうから接触してくるなんて… いや大丈夫だとは思うんだ。イチゴは人を騙すような奴じゃないし、万が一騙されても逃げ切って見せるし。相手は二人だけだし。だけどなぜか不穏な空気は払拭できない。「戦死の問題は女子にとってデリケートな問題なんだよ? ここじゃちょっと…」「一人で来るのが怖いんでしょ? 意気地なしだねっ」 みかんがバカにしたようににかっと笑う。「ちがっ…。話なんかここでもできるって思っただけだっ」 みかんはアホ毛を揺らしながら「じゃあついてきなよー」と小馬鹿にしてくる。「どっちにしても捕虜なんだから、あんたに拒否権ないんだけどねっ」「くっ…」 確かに捕虜は言うことを聞かなければならないんだ。僕はイチゴとみかんの後についていくことにした。罠であることはわかっているが。くそっこんなときのためのドラゴンだってのに。 呼び出された先は僕…