全裸キャンプで(11)
「おいおい… まずいな…。でかい川が出来ちまってる。迂回しないと」 山を登ってくるときは歩けていた場所も激しい流れの川となっていた。植村の後について僕らは他の道を探す。 「あれ… 澪ちゃんが居ない!」 早川が大声を出す。澪というのは歌方澪のこと。彼女がいつの間にか居なくなってる。はぐれたのだろうか。 「大変っ 捜さないと…」 「落ち着け早川っ。一旦 上に戻るから歌方も歩き回ってなけりゃ合流できるだろ」 植村の目論見は結論から言えば甘かった。僕らも深く考えずに従ったので同罪だ。戻っても歌方には会えないのだった。 「けっこう濁流だよ…」 「ああ、キャンプ場に戻ってもヤバイんじゃね」 吉村と金田が話している通りキャンプ場も無事ではなさそうだ。 「やべーよ! これ鉄砲水だ!」 デブの清水が悲壮感たっぷりに声を張り上げる。あまり危機感もなくキャンプ場に戻れるものだと思っていたが、どうやらそれは難しいのかも知れない。 「は? なに? てっぽう? どういうこと?」 バカそうに小倉坂が清水に問う。 「雪崩みたいなもんだよ! こりゃ今ごろキャンプ場なんか水没してるわ!」 「なんてこと言うんだ!」 植村が割って入った。 「とにかく鍾乳洞があっただろ。一旦あそこに戻ろう」 迂回しても下山は難しそうだ。下山は中止して雨が止むまで避難したほうがいいと思える。 しかし清水はもっと上に登るべきだと言い始めた。 「頂上まで行ったほうが安全なので!」 「いや、待てよっ。バラバラに行動してもらっちゃ困る」 「でも先輩、清水の言う通り頂上のほうが安全だと思いますよ」 そこへ村主が介入してきた。 「いや、頂上まで歩くのは危険だろ」 吉村が主張する。 こうして鍾乳洞へ向かう班と頂上へ登る班に分かれてしまった。 濁流を離れて来た道を引き返す。僕らはそうして鍾乳洞へ戻り、頂上へ向かうべきだと主張した清水たちがそのまま登っていった。 清水誠太、村主りょう、浅見朋愛、湧井栞、それから5班の金田橙児。 鍾乳洞に残ったのは僕と植村美聖、早川琉夏、バカの小倉坂麻友、吉村光。 金田は別にして、ちょうど3班と5班のメンバーで分かれたような感じだ。 * 「澪を捜さないと…」 早川はすっかり落ち込んでヒザを抱えて座っていた。 「望月のやつもどっかに行ったままだし、紫村のヤローもどこに行きやがった?」 植村が腕組みをして鍾乳洞の外を睨む。 歌方たちのことも心配だが、僕らの服はどこに行ったのだろう。普通に考えてみれば、誰かが持ち去ったとしか思えない。でも何のために持ち去る必要があるんだ? それが解らない。 「ねぇー。紫村先輩が服を持ってったんじゃないの?」 小倉坂ががばっと足を開いた状態で座っていた。両手を後ろについている。 「あの状況で先輩だけが先に居なくなってたんだから、きっとそうだよ」 「いや、小倉坂。そういうふうに人を疑うのはよせ」 植村が小倉坂を窘める。小倉坂はぷくぅと頬を膨らませて不満を顔に表していた。 「チッ みんなここを動くなよ。わたしが歌方を捜してくるから」 苛立った様子の植村は鍾乳洞を出る。 「えっ 先輩! あたしも行きますっ」 当然のように早川が名乗りを上げた。しかし植村に止められ、結局残ることになる。植村は「すぐに戻ってくるから」と言い残して出ていった。 残された僕らは無言のまま時を過ごす。 「やっぱりあたしも行ってくる…」 そして一時間が経過した頃、我慢できなくなった早川が行動に出る。みんなは止めようとしなかった。疲れ切っているんだ。僕は早川と離れるのは何となく嫌だったので彼女の後についていくことにした。表面上は仲間を見捨てておけないという顔をして一緒に外に出た。 そして僕と早川は歩き回った。 「雨が弱くなってきた。先に下山して応援を呼んできたほうがいいかも」 「うん…。じゃあ都築行ってくれる? あたしもう少し捜してみる」 「いや、あの… 早川を一人にできないって言うか…」 「…」 何となく気まずい。歌方のことを想って付いてきたんじゃないとバレているようだった。 早川は無言で先に進む。 ジャングルにも似た山の中を雨が降りしきる中、歩き回っていると生きて帰れないのではないかと不安になってくる。 静かに歩いていると、突然 草むらから何か影が飛び出してきた。 「きゃっ」 「何だ、お前らか」 望月だ。全裸の上に葉っぱでおちんちんを隠している。 「いいところに来た」 「あ、望月くん。下は増水してて危険だよ。鍾乳洞にみんな避難してるから行ったほうが…」 「おい。都築!それ寄越せ」 望月は早川を無視して僕に向かってきた。 「は?」 「なんでおれが葉っぱなんだよ! お前のそれ寄越せっ」 …