閉ざされた村で 第四話 男の娘リンチ(4)最終話
「そらよっ」 ぐちゃっっ!「あぐっ…」「おらっ」 ぐちゃっっ!「んがっ…」 陰嚢を蹴られる度に竜一は恍惚とした表情になっていった。生まれたての仔鹿のようにぷるると震え、姫鬼に睨まれている。素っ裸で勃起した陰茎を晒して舞台に立つ竜一。それを憤慨した表情で集まった女性市民たちが見ていた。「覗き魔はチンポ切っちゃいなさいよー」 40代の性欲旺盛そうなおばさんが叫んだ。キャリアウーマン風のスーツの女性だ。ストレスでも溜まっているのかキツイ目つきだ。会場はアハハと共感して「やれやれ!」と囃し立てた。「鎌を持ってきて。おちんちんをちょん切りましょう」 いかにも現場で叩き上げた様子の火蔵八重(かぐら やえ)が前に出た。彼女の部下が予め用意されていた鎌を持って走ってくる。 竜一は背筋が凍った。顔が引き攣る。「なぁんだ。うふふふっ」 姫鬼が無表情のまま笑う。「わち、ぱこぱこして遊べるのかと思ってたよ。みなはお兄さんのこと断罪したいみたい。うふふふっ」 それもまた一興とばかりに姫鬼は下がっていった。自分の意志では動かないらしい。「悪いことしたら懲罰。お母さんに教えてもらわなかったのかな?」 八重が鎌を持って目の前で屈んだ。正義感に溢れた強い女性の目だ。聞き分けのない子どもを叱りつけるような口調で竜一の男のプライドが小馬鹿にされた。「この人は悪い雑誌記者よ。N市の機密情報を盗んだわっ」 檜山塔子だ。太い腕で竜一の右足を取る。「どうせ有る事無い事 書き散らして悪い印象を有権者の皆様に知らせるつもりよっ。きっと偏向報道するんだわ。みんな剥き出しの好奇心に負けちゃダメよ! 平和のために活動している女性の敵だわ! 不倫したってちゃんと仕事していたらオッケーなのよ! 憲法改正反対!」 会場が拍手に沸く。政治家らしい大衆を扇動する発言で会場の女性たちを煽った。「ひぃっ」「悪いけど麻酔なしな?」 天都夜宵(あまみや やよい)が背後から竜一を羽交い締めにした。「ひぃぃ」と竜一は死を予感して力の限り暴れた。全裸男が「やだやだ!」と言いながらジタバタと跳ね回る。「ウチの生徒を盗撮したなんて許しませんからねっ。まだ、いやらしく勃たせちゃって! 穢らわしいっ」 時宮敦子(ときみや あつこ)がパシッと竜一の左足首を掴んで引っ張った。 三人に捕らえられて身動きが取れなくなり、カッパーッと股が割かれた。会場で見守る女性たちに勃起した陰茎が大公開される。舞台上で大股開きだ。「やめてっ やめてくれっ」 童貞の竜一は女性の前で裸になるのが初めてだった。セックスをするわけでもない、ソープでもない、ましてや風呂でもないのに大勢の人前で素っ裸なのは羞恥の極みだ。自分だけ…。しかも周りは女性ばかり。おまけに無駄に勃起した陰茎を晒して。「うがあああっ 童貞のまま死にたくない!」 無茶苦茶に暴れて、今まで出したことのない大声で叫んだ。「死ねっ 包茎野郎!」「勃たせてんじゃないわよ! ヘンタイ!」 会場のボルテージも最高潮だ。なんだろう、この異常な空間は…。必死の大声はあっさりとかき消された。「ま、待って! 俺はみんなの味方です! フェミニストです!」「嘘おっしゃい! 女々しいわね!」 時宮が耳元で一喝した。「本当ですっ。女性社会の素晴らしさを世に…」「白々しい! そんなことは政治家である私の仕事です! 役立たずの男はすっこんでなさい!」 檜山が眉間にシワを寄せて怒りをぶつける。 女性にガミガミ責められて竜一は黙るしかなかった。 八重は竜一にお構いなしにぶらぶらする男性器をグギュッと掴んだ。ゴム手袋をした手で根本から陰嚢ごと絞り上げるように鷲掴みだ。千切り取られるのではと思うほどの握力で引っ張られる。親指と人差し指でつくられた輪の中からボールが2つ、ニョキと棒が1本。花束のように収まった。すっぽりと収まるくらい竜一の陰茎は小さかったのだ。周りに集まった女性たちからプッと失笑が漏れた。「ダサいですねー。あなた。男の癖に女性に取り押さえられちゃって」 ケラケラと笑うのは渡草理津子(とぐさ りつこ)だ。マイクを片手に「悔しくないんですかー?」とインタビューしてくる。マイクを向けられてもまともな答えはない。「ひぃいっ」 泣きべそをかいていた。死の恐怖で目から、鼻から、口から、液体がダダ漏れだ。 パシャッ 八重の部下が死体を撮影するかのようにカメラを構えている。竜一の醜態が画像として克明に記録されてしまう。「あははっ みっともな〜い」「男の癖に泣いてみっともないわね」 会場の女子高生やおばさまたちが口々に竜一を罵った。 八重が鎌を股間に充てた。「ひぎぃいい!」 冷やりと命を刈り取る死神の鎌の感触。グッと根本に刃が通った。陰嚢の裏側から刃が引かれて痛みが走った。「いぎゃあああああ」 つー… と赤い血が流れた。…