人里離れた山奥。緑が辺り一面に広がる渓流。僕は山登りが大好きで、このような秘境に足を踏み入れることが多い。何時間もかけて汗をかいて登ってきたのだ。素人はちょっと入って来られない、とっても難しいコースである。
「いやーぁ絶景だなぁ」
ここには天然の温泉が湧いていて、僕は到着するなり石を積み上げて即席の湯船を作った。そんな作業も苦にはならず楽しかった。今日はここでビバークする予定だ。
…何だろうか、木々の向こうから何か音が聞こえるぞ。僕はハッとした。まさか人の声? そんな簡単に登って来られるわけないが…。
「…わいわい」
「…きゃっきゃっ」
そうこうしている内に声は段々と近づいてきた。どうしよう…? 素っ裸なのにっ。
森の奥から複数の黄色い声が聞こえてくる。
「みて~、すごーおい」
「わぁキャンプ出来そうだね」
「きれい!」
「素敵ね。ほら来た甲斐あったっしょ?」
4人の女の子が姿を現す。なんだと? あの鬱蒼とした森を抜けてきたのか? そんな馬鹿な!? 女の子だけのパーティでこの秘境を見つけ出したというのか?
彼女たちは一頻り騒いだ後、やがて僕の存在に気づいた。当たり前といえば当たり前で、こんな開けた場所にぽつんと人間が居るのだ。彼女たちは眉をひそめて僕を指さしたりしてヒソヒソ会話している。何アレ? すっぽんぽんじゃない…。何でこんなところに人が居るわけ? 口々にそんなようなことを喋っている気がしてならない。急に手を叩いて笑い出した。若く張りのある声だ。僕のことを指して笑っているのではないか? このままどっかに行ってくれることを願った。
しかし女の子たちは近づいてきてしまった。
「こんにちは~」
女の子たちは僕に自然な感じで挨拶をしてくる。裸の男が居るのだから悲鳴でも上げてどっか行ってくれると助かるのに、何故に山道ですれ違ったみたいな普通の挨拶をしてくるのか。
「…あどーも。こんにちは」
僕は仕方なく挨拶を返す。
「ひょっとして温泉ですかー?」
「気持ちよさそうですねぇ」
「お一人なんですか?」
彼女たちは口々に質問を浴びせてくる。僕は彼女たちに性器が見えないように足を曲げて気を配る。さらに岩べりに身体を張り付けるようにして隠した。こうして大事な部分は見えないようにして、社交辞令なコミュニケーションだけ済ませて早く退散してくれることを願った。
「へぇ良いですねぇ。私も入りたいなぁ」
「はぁ」
そうこうしている内に女の子たちの内の一人が湯船の外周沿いに歩いて僕の背後に回り込んだ。そんな所に立たれたら背中を向けているとは言え恥ずかしいじゃないか。
目の前にいる他の3人は僕を見下ろすように囲む。その中の黒髪ショートカットの娘がしゃがみ込み手を差し伸べた。
「おぉ、あったか~い」
お湯に手を突っ込み顔をほころばせた。八重歯のある童顔の可愛らしい女の子だ。笑顔を僕に向けてあったかいですね~などとうそぶく。そんなこといいからどっか行けよ…。ここは僕の見つけた場所だぞ? 恥じらいとかないのか、お前らは? 4人もの服を着た女の子が取り囲む中で風呂に浸かっている無防備なところを見られるのがどんなに恥ずかしいことか!
「どれどれぇ?」
「あつーいっ」
ショートカット娘の両隣は山登りには不向きな麦わら帽子をかぶった黒髪ワンピースの娘、それから明るい栗色の髪が可愛い長身で細身の娘、二人がお湯の感触を楽しんでいた。それをきっかけに彼女たちは実に楽しげに喋り出す。まるで僕の存在を無視しているかのよう。こんなところで井戸端会議なんてしないで欲しい。
「こんなに素敵なところへ簡単に登ってこられるなんてねぇ? 都会から時間もかからないし」
「そうそうあまり知られてないけど、知る人ぞ知る初心者向けコースなんだ、ココ」
「ねえねえ記念写真撮らない?」
僕の背後に立っていたギャルっぽい茶髪セミロングの女の子がカバンからカメラを取り出した。
「お兄さんも一緒に入ってくださいよ?」
「な!? い、いいよ! 僕は遠慮するよ」
「そんなこと言わずに~」
ショートカットの女の子が濡れるのも構わず僕の手を取る。頑なに抵抗するが他の女の子にも手伝われて僕の身体は引っ張りあげられてしまった。
ま、まあ抵抗し過ぎても男らしくないかも知れない。この程度恥ずかしくもなんともないぞ…。自分に言い聞かせるが、とは言え膝立ち状態でこのまま立ち上がったら性器が丸見えになってしまう。むしろ彼女たちはそうさせようとしているようにも見えるが…。
「わ、わかった。わかったから引っ張らないで…」
水面ギリギリで性器が空気に触れることはなかったが、透明度の高いお湯の中では確実に彼女たちの目にちんちんやお尻が映っている筈だ。だんだんと身体が火照ってきた。両腕を女の子たちに取られた状態でカメラの方を向き直る。すると茶髪セミロングの女の子がカメラを構える。あの娘には正面からちんちんを見られることになる。
「はーい撮るよ~」
湯気で幾らか隠せている気もするがそれは気のせいだろう。僕の身体が濡れているにも関わらず、取り巻きの女の子たちは自分の身体を寄せてくる。それぞれ得意のポーズを決めたりしてシャッターが切られるのを待った。
カシャリと音がして、僕はもういいだろと言わんばかりに湯船の中にしゃがみ込む。しかしまだ駄目ですよぉと女の子たちは再び僕を引っ張り上げた。それからしばらく記念撮影会となった。何枚撮るんだよ!?
そしてとうとう湯船の縁に腰掛けて性器がお湯の中から出てしまう。彼女たちは何の反応もせず自然に振舞うが、性器が…、ちんちんが丸見えになってるのはとっくに気づいている筈だ。ひょっとして確信犯か!? 僕はひょっとして弄ばれているのではないのか? 最近の女の子は行きずりの男を捕まえて遊んだりするのか!? 愉しそうに笑いながら身体を寄せてくる彼女たちだった。