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妹の足で(1)

「兄ちゃん、起きてぇ!」
 頭上で声が聞こえた。朝っぱらから煩くて敵わない。俺は布団を深くかぶり直した。
「それー」
 バッ
 かぶり直した筈の布団が盛大に剥がされた。
「何すんだお前」
 妹の仕業であることは間違いないだろう。こんなことをする家族は他に居ないから。俺は眠くて眠くて仕方ない。掛け布団を手探りで探す。
「みんなで遊びに行く約束でしょー? 起きてくれないと困る!」
 そういって妹の寛子は俺の脇の下に手を回す。いやらしく指を動かしてコショコショ這わせてきた。
「うぉっ! あおっ!あがっっは。やめぇー!あぅ」
「どうだっ」
 一気に目が覚めてしまった。休みの日にだけ働く高機能目覚まし時計のようだ。寛子は笑みを浮かべながらけたたましく動きまわった。
「解った、解ったから…」
「よぉし」
 収まった。まったく面倒な奴だ。
「起きるから下行ってろ…」
 俺は5分だけ微睡んでから起きようと思った。さっきの攻撃でもう目は覚めた。二度寝しないから大丈夫。
「…」
「俺もすぐ…降りてくから…」
「…」
 部屋を出ていく様子がない。寛子は俺を跨いだまま見下ろしているようだ。
「兄ちゃん?」
「…」
 大丈夫、完璧に起きてるから。
「兄ちゃん?」
「zzz…」
 起きてるって。俺は夢のなかで寛子に言葉を返した。
「早く起きないとこうだぞー」
 寛子は俺の両足をがっしりと掴んだ。そして自分の右足を俺の股の間に滑り込ませる。これは寛子の必殺技、電気あんまだ。
「うぅうお!」
「ほれー」
「あうおーっ、やめおっ」
 俺はしっかりと目が覚めて暴れた。寛子の足を退けようと身体を起こすが、寛子には熟練した技術がある。身体を起こすタイミングを見計らって電気あんまに強弱をつける。小刻みに震えていたかと思うと突然グリグリっと足を押し付けるように動きを変える。
「のおっ、やんめぃー!」
 俺は頭を抱えてエビが跳ねるようにのた打ち回った。再び工事現場でよく聞こえてきそうな音のイメージでズガガガガッとバイブレーションが始まった。
 ジャージの上からではあるが、寛子はちんちんの形を確かめるように足指を動かした。寛子は素足なので俺にも生足が動く感触がちんちんを通して伝わってくる。
 寛子はにやけながら「起きる? 起きる?」と問うてきた。
「やめいっ!起きるからっ!起きるからっ!」
「ホント?」
 そしてピタっと強襲が収まった。寛子は俺の足を離して仁王立ちで見下ろす。俺は両手で股間をケアしながら息を整えた。
 それにしても難儀な約束をしてしまったものだ。無理やり誓約書に調印させられたといっても過言ではないが。やっと激しい目覚ましを止めた俺は、不用意に大の字で仰向けに転がる。
「…あれぇ~、これ何?」
「ん~?」
 俺は寛子が何を言っているのかを把握しようと寛子の顔を捉えた。寛子は俺を中腰で跨いでいて、俺の股間のあたりを凝視している。
 不思議そうな嬉しそうな、不安と期待が入り混じったような顔だ。小首をかしげて寛子のポニーテールが揺れる。
「おいっ!」
「え?」
「見るな!!」
 俺は一瞬で顔が熱くなり、すばやく両手で股間を覆い隠す。そして目の端で剥がされた掛け布団を捉え、右手で掴んでこれを股間の辺りに覆いかぶせる。
 見られた…。ジャージ越しとは言え朝勃ちしてるところを見られてしまった。

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