けんじの白いブリーフが良奈に引っ張られている。けんじが必死にガードしているのに対し、良奈は半分の力も使っていないように見えた。要するに弄んでいるのだ。いつでもあっさり脱がすことができるとでも言わんばかり。脱がされそうになって顔を赤くしているけんじの様子を愉しんでいるということだろう。
「や… やめろ…」
亜美が再びチョークスリーパーの体勢をとる。けんじの首に亜美の腕が絡みついた。
「ぅ」
「なかなか脱がせないからみんな手伝ってー」
良奈が佳苗のことを見た。佳苗は自然と足が前に出る。深智も回りこんでけんじの左手を掴んだ。ブリーフにかかった指を外そうとし始める。
「そうそう手ぇどかして」
良奈がけんじの右手を外しにかかる。けんじは残った力を振り絞って必死にぷるぷると身体を震わせながら貞操を守ろうとしていた。
「さ、朝倉さん。仕返し仕返し。脱がせちゃえ。けんじのちんちん見ちゃえ」
佳苗はけんじの下腹部に回りこんでしゃがみ込む。そして恐る恐るブリーフに手をかけた。
「ゃ…」
消え入りそうなけんじの声。ぐすっと鼻を啜る音。佳苗はけんじの赤くなって恥ずかしがる顔を見る。なんと泣きべそをかいていた。驚いた。いつも威張ってばかりのあのけんじが泣いてしまったのだ。女子に取り囲まれて衣服を脱がされて、身動きできないように取り押さえられている。男子にとってこれ以上の屈辱はあるだろうか? 佳苗には想像がつかない。
「泣いたって無駄なのに」
佳苗は心臓が大きな音をたてているのを自覚する。けんじの顔以上に佳苗自身の顔も真っ赤になっていることだろう。暑さを感じるような季節ではないのにとても熱い。
「朝倉さん早く」
良奈が興奮した様子で促す。
「あたしもドキドキしてきた」
深智も鼻息が荒くなっていた。
亜美を見ると、とろんとした目が佳苗を見据える。何も言わず頷いた。
佳苗は意を決して手を引いた。ブリーフがずりずりと下がっていく。もう少しでおちんちんが見えそうだ。そこで佳苗の手が止まる。鼓動が煩くて一度深呼吸をする。
「大丈夫? 思いっきりね。一気にずり下げちゃえ。“せーの”でいこうか?」
「…うん」
「よーし。せーのっ」
「せーのっ」
佳苗は良奈と深智の掛け声に合わせて目を瞑ってブリーフを引っ張った。ゴムが伸びる感覚。脱がすときに“突っかかり”を感じた。おそらくおちんちんだろう。それがぽんっと飛び出すのを感じた。ブリーフは膝まで下がっていた。
「わー! なにこいつ!」
「いや~っ」
深智と良奈の声。佳苗は恐る恐る目を開けた。男子の裸がそこにあった。威張っている割には逞しくもない身体つき。現代っ子らしい白い肌。股の間に突起物がある。股間にちょこんとついているのは本当におちんちんだろうか?佳苗の想像とは少し違っていた。もっとグロテスクな生物をイメージしていたのだ。牙を向いて爪を立てて襲ってくるという恐怖感があった。それなのにけんじのおちんちんは小指ほどの大きさで、万が一襲ってきたとしても片手で払い除けられる。
「包茎じゃん」
先っちょは恐れていた牙もなく、とても大人しそうに皮を被っていた。
「へぇ… つるつるだね」
ライオンの鬣のような気高さを想像していたのに、まだ毛が生え揃っていないのかつるんつるんだった。
「幼稚園児…」
亜美がボソリと感想を漏らす。「あはははっ」と深智が笑う。「ぷーっ…くくく…ホント園児並だな」と良奈が同調した。
「ぅぅ…ぐすっ」
けんじは女子におちんちんを見られてしまってとても悔しいのだろう。目を瞑って泣いていた。