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身体測定で(2)

 聡はブリーフ姿のまま梅原加奈の後ろをついていく。背後には柳忍がいる筈だ。存在感が薄くて足音もないのでついてきているのかどうか解りにくい。廊下をすたすたと歩いていく加奈。俯いたままの聡は加奈のお尻を見ながら歩いていたわけだが、もじもじと歩く聡は遅れが出始めていた。
「ちょっと」
 加奈が振り向いて聡のことを見る。前屈みで両手を前で組む形で股間の部分を隠している聡は、目線だけ上げて加奈の方を見た。目線が合う。彼女のメガネの奥はキッとつり上がった怒りがこもった目だった。
「ゆっくり歩かないでくれる?」
「あ、ああ…」
 それでも前屈みでちゃんと歩こうとしない聡。加奈はつかつかと歩いていって聡の横に立つ。そしておもむろに聡の左手を取った。
「え…?」
「柳さんは右手をお願い」
 右側を見ると柳がぬっと回り込んできた。右手もぐっと掴まれて引かれる。意外に力が強い。聡は両手を女生徒二人に掴まれた格好になった。股間の膨らみを隠したくても隠せずに聡は戸惑う。
「あ、…あの」
「もう、早くしてよ」
 迷惑そうに加奈は歩き出す。聡のせいで授業を受けられないではないかと言わんばかりだ。聡はブリーフ越しとはいえ、おちんちんの形が見えてしまうのを恥ずかしがった。そんなことは知ったことではないと、ぐいっと加奈と柳が聡の腕を引っ張って歩く。聡は相変わらず内股で俯いていたのでやはり変な歩き方になった。両手の自由を奪われ、学校の中を女子につれられて歩くなんて情けない姿だ。
 体育館が近づくと前方から身体測定を終えた生徒たちが歩いてくる。男子たちばかりだ。校舎と体育館をつなぐ中庭の狭い通路で彼らとすれ違う。嫌な予感がした聡は顔を背けて何とかやり過ごそうとしたが案の定無駄に終わった。
「うわーなんだこいつー」
「やべー変態がおるぞ!」
 などと囃し立てられ、笑い声が起こり、聡を取り囲むように前に回った。
「どいて」
 加奈が言うも、おもちゃを見つけてしまった男子たちは勝手に盛り上がる。一部の男子生徒たちが取り囲んできて前に進めなくなってしまった。体育館は目前だというのにだ。
「お前また遅刻でもしたのかよ?」
 去年同じクラスだった奴も居る。加奈は丁寧にも事情を説明して道を開けろと対応していた。聡は答えられずに下を向いて顔を赤くするばかりだ。
「というわけでこんな格好なの」
「うわぁひでーな。藤木の奴」
「はははっ。気の毒ー」
「早く身体測定受けさせないと私たちまで何か言われそうなんだから道開けてよ」
「そっか。悪かったな」
 意外にも彼らはすんなり通してくれた。悪ガキなのに。何かしてくるだろうと思っていたがやり過ごせそうだ。
「くくくっ」
 しかし見逃してくれる道理はなかった。両手を女子に掴まれたまま歩いていこうとする聡は後ろから引っ張られるのを感じた。背後に誰か立っている。なんとそいつはブリーフを引っ掴んでいたのだ。
「あ…」
 聡は立ち止まって後ろを振り返る。悪戯で脱がされてしまうと思ったのだがそうではない。ブリーフを掴まれたままだ。にやにやとした男子の顔がそこにあった。他の男子たちもその状況をにやにやと見守っていた。柳はそれに気付いていたが見ないようにして聡の腕を引っ張る。加奈は歩こうとしない聡に一度怪訝な目を向けて「早くぅ!」文句を言ったが後ろの男子の所業には気付いていない。
「え、ぁぁでも…」
 加奈と柳は強引に力強く腕を引っ張る。聡は引っ張られて一歩前に踏み出た。ブリーフがその分伸びる。
「あっ… やめろよぉ」
 もう一歩、さらにもう一歩前へ進む。ひゃひゃひゃと笑い声が起こる。お尻が露出しているのだろう。ブリーフは伸びきってしまった。注射を嫌がる子どものようにへっぴり腰になる聡。女生徒二人に引っ張られ引き摺られる。ブリーフが脱げ始めた。
「もーふざけないで!」
「ぁ…ぁ…」
 聡は焦った。後ろからブリーフを引っ張る男子は少しだけ下に引き下げるように調整した。聡は座り込むような格好で抵抗するが、前に引っ張られるのと後ろからの引っ張りでブリーフがついにぶりんと裏返る。
 ブリーフが膝まで一気に下がり聡のおちんちんが露出してしまった。
 そこで男子たちの笑いが沸き起こり聡は声を失った。みんなの前でおちんちんを露出させてしまったのだ。柳がちらりと聡を見たが彼女は引っ張るのはやめない。女子たちに引っ張られて、引き摺られるようにしてまた一歩前に進む。膝までこれば後は抵抗なくするりとブリーフが足首まで下がって右足から引き抜かれてしまった。かろうじて引っかかった左足のブリーフ。聡は必死に足首を曲げてフックの形をつくり、もっていかれまいとするが、無駄な抵抗に終わった。するりと左足からも引き抜かれて、聡は勢いで前のめりに倒れ込んだ。
「あぅっ!」
「もうっ。何やってんの!」
 ようやく振り返った加奈はうつ伏せに倒れている素っ裸の聡を発見する。生白いお尻が陽光に照らされていた。加奈はそれを見てしまった。
「ゃー!」
 加奈は甲高い悲鳴を上げて目を背ける。柳は顔を赤らめながらも横目で見ていた。ただ二人とも握った聡の腕だけは離さなかった。

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