ファインダーを覗くとカズの想像通りの映像が飛び込んできた。同じ学校の生徒である夏子や智子の競泳水着姿だ。リゾート地で合宿を敢行している水泳部の女子たちを追ってカズは自費でやってきたのだ。
「チックショ… なんで俺がこんなこと…」
カズは独り言ちながらカメラのレンズを夏子に向ける。健康的な身体にブルーと深い紺のピッチピチの水着が動き回っている。彼女たちは撮られていることにまったく気づいた様子はない。当然だ。カズは充分に注意しながら慎重にことを進めていた。絶対に見つかっては拙い。カズは自分の人生に傷が付くのを恐れていた。こんな犯罪紛いなことをしてもし見つかったらと思うと、こんなリスクは背負いたくなかった。
「ま、要は見つかんなきゃいい…」
この一点に尽きる。本来ならこんなことをやっている場合ではない。冷房の効いた部屋で受験勉強に勤しまなければいけないところなのに、まったく運がない。
それにしても夏子はいい身体してるなとカズは夏子ばかりを追い回した。童顔な上に程よく肉の付いた身体。健康的な日焼けをしている。丸みを帯びたお尻を振ってプールサイドを歩いたりぎこちなくストレッチをしたり。カズはムラムラと燃えてきた。
「ま、やるからには少しは愉しまないとなぁ」
カズはモゾモゾと自らの股間に手を伸ばした。ジッパーを下ろしておちんちんを摘み出す。夏子の身体に反応してむっくりと息子は顔を上げていた。うつ伏せに寝そべった体勢だったので右手でカメラを操作しながら左手でおちんちんを握った。少し身体を横向けてシコシコと上下させる。
智子が真面目に夏子と孝美に技術指導をしていた。夏子の泳ぎは下手で飛び込みのとき腹は打つし息継ぎも巧くできてない。泳げない素人のカズでも解るほどアレは下手くそだ。夏子のクラスメイトである孝美も真面目に話を聞いているが、彼女も運動神経がないようだ。だがその分勉強はよくできるらしい。始めから運動系の部活なんて向いてないのだろう。身体も華奢で普段はメガネをかけているような子だ。もう少し肉を付けないと何かの拍子でポキっと折れそうな身体である。
「んー…あれはあれで… いけないこともない…か」
コトンと背後で音がした。
「!」
カズは心臓を掴まれたと思うほど身体を跳ねあげて驚いた。振り向いて見るとカズの近くには石ころが転がっていた。そのまま顔を上げてみる。10mほど離れたところ、しゃがみこんだ見知らぬ少女が何かをコチラに向けていた。妖精か天使の類だと思った。そうカズが思ったのは彼女の髪が金色だったからだ。この石ころは彼女が投げたものだろうか。
「な…」
咄嗟に言葉が出ず状況を整理し直そうとカズは思考を巡らす。
「え… どうして?」
ピレポロプルリ~ン。
「!?」
間抜けな音が辺りに響いた。ケータイのシャッター音と気付くのに時間はかからなかった。彼女が構えているのはケータイだったのだ。
「あははっ。証拠撮ったぜ変態さーん」
カズの思考は凍りついたまま動かなかった。まずここは廃屋となったビルの屋上なのだから人が入って来る筈がない。だからこれはきっと現実じゃないだろう。カズは目をぱちくりさせる。
「よ~し。キャプテンに報告だー」
少女はすっくと立ち上がって背を向ける。白の短パンから伸びた細っこい足。膝に転んだ傷なのか痕が残るだけで綺麗な足だ。胸はまったくない。水色とクリーム色がかったデザインの小さなキャミソールがよく似合っている。金色の長い髪をポニーテルにして揺らしていた。屈託のない笑顔で「いっそげ~。あははっ」と笑うとタタタッと消え去った。
呆然とするカズ。1分ほど経過してようやく事態を飲み込めてきた。カズはおちんちんをチャックから出したままだ。あれは妖精などの類ではない。これは現実だ。大人に知れたら拙い。おちんちんは半勃ちで顔も写っている。言い逃れはできなさそうだ。
「…あ、追わなきゃ」
カズはチャックを上げてから階段を降りていった少女を追いかけた。とにかく捕まえなければ。オナニーしているところを少女に見られて写メまで撮られたのだ。キャプテンと言っていた。きっと誰かに報告するのだ。水泳部の関係者だろうか。下級生の子かも知れない。カズは小走りにビルの中を見て回った。少女の足音は既に消えていてどこを捜していいのか解らない。しかし適当に捜していれば捕まえられるだろうと、カズは簡単に考えていた。このとき既に冷静さは失っていた。