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水泳部の合宿で(6)

 何の因果たろうか。辿り着いた先は盗撮の対象ポイント、水泳部が合宿を行なっていた屋外プールだった。智子たちを除いた残りの水泳部員が練習を続けている。チーちゃんに見守られながら女児用の水着を着込んだカズは、チーちゃんから差し出されたキャップも受け取った。厳かにそれを被る。まるで死地に赴く戦士のように。
「おおっ、変態ぽくなったね」
 確かにスク水を着て勃起している男を他にどう呼べばいいのか。
「ん?」
 ふとプールの方を見ると、何だか騒々しい。
「こっちに全裸の男が来なかった?」
 夏子の質問に首を傾げる孝美。
「チーちゃーん」
 成実の声、チーちゃんを探している様子だ。
「はーいー!!」
 爽やかな笑顔で手を振るチーちゃん。絶体絶命という言葉が頭によぎる。競泳水着の女子の集団がこちらに注目する。走ればまだ逃げ切れるだろうかとカズは思った。
「変態のお兄ちゃん、もっとあそぼーぜー」
 チーちゃんがカズの手を引いてプールの方へ導いた。カズは何故だか高揚してくる。勃起が収まらなかった。ヒタヒタと歩いて行くと、水泳部員たちの悲鳴が聞こえた。水泳部員たちの間を掻き分けるようにして智子が現れる。
「先輩、チーちゃんから報告された盗撮の件やそこでマスターベーションしていたこと、夏子さんたちにも話しましたから」
 怒りに満ちた若い女性の目。視線が突き刺さって痛い。部員たちがカズを取り囲む。
「…最低」
「それから、先輩が過去に2日間だけ水泳部に所属していたという事実も話しておきます」
 部員たちからどよめきがあがる。
「…ホントですか?キャプテン…」
「みんな、この人はこんな格好してるけど、3年生であなた達の先輩です。私が1年のときに後から入部してたった2日間で退部届を出してすぐに辞めていきましたけど」
 智子がカズの素性を明かす。確かに泳げないから男子水泳部に入部して鍛えようと思ったのだが、練習がキツくてすぐに辞めたのだ。
「…こんな女子の水着着ておちんちん勃たせてる人が…先輩?」
「同じ学校の先輩だとは思いたくないな」

 カズは悟りきったような顔になる。勃起は未だ収まらないのだ。自分に対する非難の声。罵声がゾクゾクとカズの心を震わせた。
「う…」
「盗撮とか…神経疑うわ」
「先輩としても、男としても、人間としても全部失格よね」
 成実や夏子、他の部員たちもヒソヒソと話していた。
「うんワーーー!!」
 カズが突然叫び声をあげ、振り向いて走りだす。部員たちは涙目で向かってくる女児用の水着を着た男に道を開けた。彼女たちには止められないのだ。成実と智子がカズを追った。
「てやっ」
 ガッ。成実が軽やかに跳んでカズの背中めがけて跳び蹴りを喰らわす。
「うがっ」
 バランスを崩すカズ。智子が果敢に向かっていってカズの水着の肩紐を掴む。引っ張られて足止めされた。カズは振り切ろうと「うんわー」と叫びながら暴れた。振り回す彼の腕が智子のバチッと顔に当たる。
「痛っ」
「このぉ」
 成実もカズを取り押さえようと取り付く。無茶苦茶に暴れるカズの腕が智子と成実にバチバチと当たる。
 夏子も勇気を出してカズに近寄る。太い腕を取って暴れるのを止めさせようとしたのだ。
「キャッ」
 太めのカズの腕が、夏子の胸部に当たる。カズは柔らかな感触にも気付かず暴れ続ける。その内に他の部員たちもキャプテンらに触発されカズを止めに入った。ある者は腕を取りある者は足を取り、カズはその場に引き倒される。
「うんぎゃー」
 成実が、智子が腹に蹴りを入れる。カズは丸まって防御した。他の部員たちもキャプテンに習って蹴りを入れていく。
「うげっ!うべっ!」
 カズは繰り返される痛みの中に不思議な感覚を味わった。決して強くもない一発一発の蹴りがカズの厚い身体には心地良い刺激になっていく。股間が痛いほど膨れてきた。水着を突き破ろうとしているみたいだ。
「もうコイツ許さないっ。プールに落としちゃえっ」
 夏子が提案する。それに賛同した部員たちが重そうにカズを担ぎ上げる。カズは焦って暴れ続ける。5mも移動すればそこはもうプールの中。手足を引っ張られ引き摺られるようにジリジリと移動する。彼女たちはプールサイドでカズの手を持つ方と足を持つ方に別れた。
「いくよー」
「ヤメてー!」
 カズは人間ハンモック状態で揺らされる。彼女たちは勢いをつけてプールに投げ込もうとしているようだ。
「いーちにーの、さ~ん!」
「ノーッゥ!」
 水泳部員たちは協力してカズをプールに投げ込んだ。宙を舞うカズ。バッシャーン!と水飛沫をあげてスク水を着た男がプールに沈んだ。協力して作業を達成した水泳部員たち。みんな笑顔で拍手をして喜んだ。しばらくして水面を叩く音。カズが水中で藻掻いていた。カズは何とかプールサイドに寄ろうとして手足を動かした。しかし何故かプールサイドから離れていく。
「アハハッ何アレ」
 成実が笑い転げる。
「楽しぃーね」
 チーちゃんも笑顔でプールサイドに腰を下ろしていた。
「誰かフロート持ってきてやりな」
 智子が指示する。しばらくして大人が寝転べるぐらいの大きさのフロートが用意された。リゾート用のフロートだ。それを持ってくるまでの間カズは必死に藻掻いていた。フロートがプールに浸される。夏子と成実が先行してプールに入りフロートをカズのところへ運んだ。フロートが近寄ってきてカズはそれにしがみつく。
「はぶぅ! はぶぅ!」
 水をたらふく飲んでしまった。
「運んであげるから上に乗りなよ」
 成実が優しく言った。カズは疑わずにそれに従う。必死によじ登った。フロートの上でカズは息を整えた。智子や他の部員もプールに入ってカズに近寄る。フロートを取り囲むように水泳部員が集まってきた。
「さぁケーサツ行きますか」
 智子が腕を組んでフロートに寄りかかる。
「私が先輩から受けた屈辱は許しませんから」
 カズは首を振り嫌だと示す。水泳部員たちがキッとカズを睨む。カズは四つん這いになりながら自分の股間を見つめた。膨らんだおちんちん。
「も、もう一回オナニーしますからっ。見ててください。僕の恥ずかしい格好をー」
「は?」
 カズはスク水の股間の布をずらしておちんちんを露出させた。水泳部員の女子たちの悲鳴があがる。ヘンタイ、シネ、クソデブなどの罵声が飛んだ。しかしカズは硬くなったおちんちんを、足を開いてみんなに見えるようにした。そして顔を赤くしながら必死に手を動かす。
「これで許してくださぁい。ケーサツだけはやめてくださぁい!」
「…そーやってまた私にぶっ掛ける気ですか?」
「いえ…、ち、…ち、違います。ほらっ」
 カズは瞬時に、どうすればまた智子に飛び散らないかを考えた。その場に足を開いたままちんぐり返しする。
「こっこれで!」
 カズは言いながらもおちんちんを擦る手を休めない。はち切れそうになっていたおちんちんは既に自らの精液でベトベトだった。
「あーそれならセルフ顔射だもんな」
 成実は半ば呆れた様子で棒読みするように言った。フロートを取り囲む他の水泳部員たちはカズに罵声を浴びせ続けた。
「ぼくこんなに恥ずかしいところ見られてますから!許してください!」
「外で露出してるんだからこれも軽犯罪なんじゃないんですか?」
 夏子は怒りのこもった口調で智子に聞いてみた。
「まぁ、どちらにしてもケーサツ呼びましょう」
「あふっ…そんなぁ…あふっ」
 競泳水着の女子たちが見ている前で、フロートに乗せられたカズ。高速で擦られたおちんちんがビクンと脈動する。
「はぁぁん」
 勃起したおちんちんの先から白い液がピュッと飛んだ。喘いで開いたカズの口へ、頬へ、額へと白い液が飛び散った。一斉に悲鳴と非難の声があがる。カズはプライドという言葉を思い出す間もなく快楽に溺れていった。
「さっ、ツーホーしてくるか」
 チーちゃんが立ち上がってプールサイドを走っていった。
〈終〉

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