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秘密の部活動で(1)

 紗季は男子のパンツをズルッと脱がせてやった。
 夢の中に居るようだ。すべてがスローモーションに動いていた。おちんちんがぷるるんっと顔を出す。全裸を晒した男子を見下ろしていると、服をちゃんと着ている自分の優位性に安心した。
 男子は何事かを喚いていた。床下で暴れている。紗季が彼のパンツを脱がしたことに抗議しているのだろう。しかしいくら抗議したところで男子は身動き一つとれない。
 並んでいる机や笑顔で周りを囲むクラスメイトが居るのを思い出して、そこは自分の教室だったことを改めて認識する。クラスメイトたちはそれがさも当然と言うように、その男子を取り押さえていた。取り押さえる役は主に力の強い男子がやっていた。女子はパンツを脱がされた男子の下半身に注目するように集まっている。
 こんなに大勢の中で一人だけすっぽんぽんになった男子は、恥ずかしさのせいかとうとう泣きだしてしまった。ゆっくりと頭を振りながら大粒の涙を零す。
 紗季は自分よりも力のある男性がめそめそ泣いてしまうのを目の当たりにして身体が熱くなった。でも彼がいくら泣いても構わないと思う。だって、彼はおちんちんを勃たせて喜んでいるのだから。
***
 紗季はまだ何の部活に入ろうか決めていなかった。放課後に室内系の部活を見学しようと体育館を訪れた。
「バレー部かバスケがいいな」
 彩は腕組みしながらつぶやく。彼女は同じ学年の友達だ。紗季は文化系の部活に興味があったので、今日の見学は彩に付き合って見に来ただけだった。
「どっちも朝早そうだし、夜遅そう」
 紗季は身体を動かすのはどちらかと言えば不得意だ。紗季自身は美術部か放送部にでも入ろうと考えていた。
「でもあたしバカだからな、脳より身体動かさんとねぇ」
「それは右の握力が弱いから、左の握力もっと強くしようと言ってるのと同じじゃない?」
「不得意分野伸ばしてもしょうがないじゃん」
 考え方は人それぞれだと紗季は思った。
 ふと前を見ると体育館に入る前の扉に蹲っている人影があった。紗季は彩と顔を見合わせて彼に近づく。その男子生徒は部活中なのか体操服を着ていた。腰に手を当てて擦るようにしている。
「あのぉ大丈夫ですか?」
 彩が声を掛けると男子はハッと顔を上げる。顔をこちらに向けて紗季たちの存在を確認した。
「あぁ、あ…いえ、大…、あ…丈夫です」
 彼は脂汗をかいて顔色が悪かった。紗季は驚いた。手を貸そうと二人がさらに近寄る。
「立てますか? 保健室まで歩けます?」
「あのっ。…お本当に、うぇう…。大丈ぶ…で」
 辛そうだ。紗季と彩は保健室まで連れて行こうと話し、肩を貸すことにした。紗季は彼の手をとってどうにか彼を立たせる。同学年だろうか。華奢な身体つきで運動部には見えない。何の部活か知らないが練習がキツくて休んでいたのだろうか。
「保健室まで行きますから」
 男子は返事もままならない様子だ。立ち上がっても内股気味でプルプルと震えて腰を落としている。
「どこか痛みます?」
「いえ…」
 微かに首を振る。彼の顔が段々と朱に染まってきた。苦しそうな表情だ。どうしたというのだろう。とにかく彼を保健室まで連れていかなければ。ふと会話が途切れて静けさが訪れる。何か音がする。どこからかウィ~ンという音がなっている。紗季はかすかなバイブレーションの音を聞いた。一体どこから? 彩も気づいて不安そうな顔だ。
 1m歩くにものろのろとしか移動できない。紗季はけっこう時間が掛かりそうだと覚悟した。
「あー、君たち。困るんだよね」
 背後から声を掛けられる。割りと近くだ。紗季と彩が振り向くと表情の暗い少女が立っていた。 紗季と同じクラスの佐伯 深藍(みあ)だ。彼女は手を伸ばせば届く距離にまで迫ってきていた。
「え? なに?」
 紗季は驚いた様子で訊ねた。深藍は目線を合わせない。どこを見ているのか解らない目だ。彼女はいつも一人で行動していてクラスでも浮いた存在だった。話しかけられるのも会話するのも初めてだ。ルーズな制服の着こなし。髪も前髪をゴムで縛っているだけで、後は伸ばしっぱなしの様子だ。
「そいつはウチの部員だから」
 深藍がぼそりと口を開く。
「は?」
「トレーニングの最中よっ」
 彼女は勢いよく何かを掲げた。それはゲームのコントローラーだった。
「え?」

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