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秘密の部活動で(2)

 唖然とする紗季。
 ドヤ顔で宙を見つめる深藍。
「トレーニング?」
「そ」
 深藍は掲げた手を下ろしてコントローラーを両手で持った。そしてゲームをするかのようにコントローラーを操作し始める。
「うふふ」
 何をしているのだろうか? 携帯ゲーム機ではないようだし、操作によって何が起きているというわけでもない。
 紗季と彩は顔を見合わせた。そう言えば同じクラスになってから彼女はずっと浮きっぱなしだった。変人だという噂は聞いていた。最近の彼女といえば授業中は寝ているかケータイをいじっているか、ふらっと教室を出て行く時もある。工事現場で使う誘導灯やキュウリを持ち歩いていたという目撃談もあるようだ。
「あうっ!」
 突然、肩を貸していた男子が声をあげる。彼は崩れ落ちるようにその場に蹲った。常に内股気味、苦しそうな表情。お腹が痛いのか、腰が痛いのか、お腹や腰をさすっていた。
「大丈夫!? 早く保健室に…」
「ところでさ」
 深藍が急に笑顔になる。
「え?」
「ところであなた達はこんなところで何してたの?」
「え、あの…」
「あ…あ…う…ぅ」
「えっと確か同じクラスの…まあいいや、で何してたの?」
 紗季や彩の顔に見覚えがあったのだろう。深藍は何かを思い出そうとしてすぐに止めた。
「あの、それより彼を保健室に…」
「ん?」
「私たちは部活の見学をしようと思って来ただけです」
 彩が間に入って説明する。
「ほんとに!? そっか。いいねぇ。いいじゃないの」
 深藍は身体を揺らしながら喜んだ。
「いいよ。じゃ、案内するね。すぐ入部する?今入部する?」
「え?」
 紗季と彩はまた顔を見合わせる。何を言っているのか解らない深藍に、お互いどう対処していいのか困ったといいう顔だ。
「でも彼を…」
「くにちん立てるよね」
「!? あっ…はい!」
 紗季たちの心配を他所に、深藍は急に真顔に戻って男子に焦点を合わせる。男子は立ち上がって気をつけをする。そのとき、紗季は彼の股間が盛り上がっているのを見てしまった。彩も手で口元を覆って驚いた様子だ。
「部室まで“バイブランニング”の続き」
「はい」
 男子は辛いのを我慢しているように見える。冷や汗が滴る。だが辛いのを跳ね除けるように走りだした。
「がんばれー」
 男子は走り去っていった。
「じゃ、あなたたちも後付いてきて」
「え…、あの…」
「付いてきてー」
 なんだろうか、有無を言わせぬ深藍の振る舞いは。こうして紗季たちは深藍に無理やり連れられ部室に向かうことになった。男子が去っていった方向へ歩き出す。
「くにちんは部員なの。男子はくにちんだけだから物足りないかも知れないけど」
「物足りない?」
「愉しいよ? うちは朝練とか目指す大会もないし気楽に活動してね」
「あの…まだ入部は…」
「うんそうだね、珍しいよね。うちの部活に入りたいなんて」
 とにかく深藍は一方的だった。その後も紗季たちの話は聞いてもらえなかった。どうやら相当に自分勝手な人のようだ。部室棟へ向かっていく。彼女の部活とは運動部なのだろうか。一体なんのクラブなのだろうか。部室棟の中へ入っていく。運動部らしい臭いが充満していた。奥へと向かい手書きで「科学美術総合研究会」というプレートが目に入った。脇目もふらずその中へ入る。紗季は怯えにも似た気持ちが湧き上がる。
「さあ、お入り」
 深藍が中で手招きする。紗季たちは戸惑いながらも渋々中へ。薄暗い部屋だった。テーブルとパイプ椅子だけのシンプルな構成。深藍がパイプ椅子を2脚用意してくれた。
「はい、すわってー」
 その部屋の窓際には女生徒が2人。栗毛色のお下げの女子と、長身のショートの女子だ。
「お帰り、深藍」
 2人に挟まれるように、先ほどの男子が居た。驚いたのは彼が上半身裸だったこと。
「え?」
 紗季と彩は身を寄せ合う。
「なに、その子たち?」
「入部希望者」
「あのまだ見学だけ…」
「そうなんだ。お茶出さなきゃ」
 お下げの女子が部室を出て行った。
「まあゆっくりしてって。お菓子もあるよ」
 紗季たちは座らされて、深藍も席に着く。
「さ、続きを」
「え、あの…でも」
 長身の女子が見下ろすように男子を見ていた。男子は彼女を見上げながら紗季たちの顔を交互に見合わす。紗季は自分たちが居ることが何か都合が悪いことのように感じた。
「しかたない奴」
「愛衣乃ちゃん、脱がせちゃって」
「ああ」
 愛衣乃と呼ばれた長身の女子はおもむろに男子の短パンに手を伸ばす。
「いや、あぁ」
「え? え?」
 紗季は深藍の顔を見る。深藍はお菓子を紗季と彩の前に差し出した。目の前で短パンを脱がされそうになっている男子。彼は必死に抵抗していた。愛衣乃がいくら長身でも、力の強い男子の抵抗を跳ね除けられるのだろうか?
「いつもはすぐ脱ぐ癖に」
「いやっ。だって…」
 男子はやはり紗季たちを気にしているようだ。
「あいつね郁彦ってゆーんだけど、私の幼なじみでね。昔からいじめられっ子なの。いっつも私が助けてやってさ」
 深藍がチョコ菓子を口に入れながら話す。ドアを開けて紙コップを持ったお下げ女子が帰ってきた。
「はいどーぞ」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
 麦茶の香りだ。よく冷えている。
「麻理璃(まりり)、手伝って」
「なに、どうしたの?」
「脱ごうとしない。採取ができない」
「そうなんだ。やっぱ私たち以外の女子が居ると恥ずかしいのかな?」
 麻理璃と呼ばれた栗毛色のお下げ髪の女子。彼女が男子の前に回り込む。先ほどまで短パンを脱がそうとしていた愛衣乃が今度は男子の背後に回った。そして彼の手首を捻り上げるように握る。
「いててて」
 郁彦の防御が弱まる。すかさず麻理璃が短パンに手を掛ける。それはズリッと躊躇なく下ろされた。紗季と彩は目を疑った。そして悲鳴をあげる。
「きゃー」
「いやだ。なにあれ!?」
 紗季は目を逸らして顔を覆った。一瞬見えたのはおちんちんだった。どういうことだろう? 彼はパンツを履いていない? 郁彦は顔を赤くして窓の方へ顔を背けた。
 何が起こった? 全裸にさせられている? 一体何の活動なんだ? 紗季は一瞬にして頭が混乱した。短パンを脱がされてせいぜいパンツ一枚の格好にさせるだけだろうと思っていたが、彼はノーパンだったのだ。
「ちょっと何アレ?」
「ん? んー」
 紗季の抗議も深藍は聞き流すだけだった。
「あはっ。ほらおもしろいよ。見てみなよ」
 深藍は悪びれずに紗季の肩を揺する。紗季は指の隙間を作って覗いてみた。さっきまで小さく下を向いていたおちんちんが大きくなって上を向いていた。あんなに反り返ってピクピクと動かして。何故こんな状況で勃起するのか紗季には解らなかった。そしてよく見るとおちんちんの先に何か括りつけられていた。あれは何かに似ていると思ったら、金魚すくいの金魚を持って帰る用の袋にそっくりだ。勃起したおちんちんの先に括りつけられ、袋の中に液体が溜まっているのが確認できた。透明な液でおちんちんの先から糸を引いている。おちんちんから出たものなんだと紗季は理解して顔が熱くなるのを感じた。
「やだ、もう」
「なんの部活なわけ?」
 彩が困ったような怒ったような表情で聞いた。
「あれ、知ってて見学に来たんじゃないの?」
「私たち一度もそんなこと…」
「まあいいじゃん。活動は見ての通りね」
「何が…」
 麻理璃がおちんちんに括りつけられた袋を外していた。
「もうっ。ちんこベトベトじゃん」
 文句を言いながら今度はお尻の方へ手を伸ばす。どこから伸びているのか、コードを摘んで引っ張んる。ウィ~ンという音が聞こえてきた。ピンク色の卵のようなものが現れた。紗季は驚く。身体のどこからあんなものを取り出した? 郁彦の表情は終始見えなかったがぷるぷると震えているのが解る。
「はい、もういいよ。待機」
「…」
 麻理璃と愛衣乃が郁彦の側を離れる。解放された郁彦は顔を背けたままその場に正座する。身体を丸めるようにして両手でおちんちんを覆いながら頭を垂れた。
「20分15秒。だいぶタイム上がったね」
 麻理璃が紙切れに何か書いていた。なんの記録だろうか?
「ね? 愉しいクラブでしょ?」
「どこらへん…が?」
「あははっ」
 彩は無駄な質問をしてしまって後悔しているようだ。

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