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透明人間で(2)

 擬態を解くと、僕はさっそく遥ちゃんの机に向かった。

 カーテンの締め切られた教室に、女子たちが脱いだばかりのセーラー服がいっぱい…。ここはパラダイスだ。遥ちゃんの席に生尻をくっつけて座った。

 机の上に載せられたセーラー服を手に取る。

 ぬ… 温もりを感じる。

 ふんわりと柔らかい。

 僕はセーラー服のシャツとスカートに顔を埋めた。

 くんかくんか…

 女子のいい匂いがする。

 遥ちゃんの顔が浮かんでくる。

 「べぇ~っ」と舌を出して笑っている。悪戯好きの遥ちゃんはホントによく笑うなぁ。Dカップのおっぱいに抱きついて、ぽむんっと顔を埋めると遥ちゃんはくすぐったそうに笑って身をくねらせた。今度はスカートを舐める。しっかりした幹のような太ももに抱きついて唾液だらけにする。両手でお尻を触ると弾き返されそうなほどの弾力に驚いた。

 女の子の身体は柔らかいな。

 あぁ遥ちゃんにおちんちんを握られてるよ…。

 小刻みに扱かれて、もうイキそうだ…。

 くぅ…、「早漏~」ってバカにされてるよ。

 実際は自分で握ってるんだけどね。

 童貞である僕は未だ触れたことのない女性の身体に、妄想の中とはいえ酔い痴れていた。

 よし、この制服を持って帰ろう。他の女子のもついでに持って帰ろう。

 僕は教室の後ろに仕込んでおいた、中の見えない黒いゴミ袋に制服を詰め込んでいった。

 この背徳感が堪らないんだよな。

 困るだろうなぁ、みんな。体育が終わっても女子だけ体操服のまま過ごすんだ。男子たちの目に晒されて、みんなの困惑した表情を見てこっそり愉しもうっと。

 教室の鍵を中から開ける。

 僕はゴミ袋を持って教室を出る。

 一応、擬態の能力は発動しておいた。誰かに見られる可能性もあるからね。廊下は誰も居ない。既に授業が始まっているから静かだ。ゴミ袋を担いで、腰を落とし、ひたひたと歩いた。

 傍から見るとゴミ袋が浮いて移動しているように見えるだろう。

 難なく校舎を出てゴミ捨て場に向かう。人に見つからないように慎重に歩く。そして中庭を抜けてゴミ捨て場にゴミ袋を置いた。

 これで後は帰るときに回収していけばいいのだ。

 運動場のほうから女子たちの掛け声が聞こえてきた。僕は誘われるように歩いていく。校舎の角を曲がると、運動場の隅でラケットを振る女子たちが見えた。

「そいっ」

 みここがパワフルなスマッシュを見せる。

 テニスボールをやってるみたいだな。

 素振りをしている娘たちと、既にコートで対戦をしている娘たちに分かれている。これだけ近くでブルマ女子を眺めるのは素晴らしい光景だ。

 もっと近くで見よう。

 全裸の僕だけど臆せず近づいていく。全裸で女子たちの輪の中に入るって気持ちいいな。

 遥ちゃんは友理子と仲良く肩を並べて素振りしていた。遥ちゃんは腰の入ってない素振りでつまんなさそうだ。友理子はマジメに完璧なフォームでやってるよ。

「はぁラーメン食べたーい」

「…」

 友理子は無駄口を叩く遥ちゃんに何で答えてあげないんだよっ。

 ちゃんと友達A子役をやって欲しいものだ。遥ちゃんが可哀想だろっ。

 しかしマジメに素振りしてる友理子のおっぱいはぷるんっと揺れて見ものだった。遥ちゃんも思いっきりスイングして欲しい。あんな工事現場の誘導みたいな、ラケットをぶらぶらさせているだけじゃおっぱいが揺れないよ。

 僕は遥ちゃんの前に2メートルほど離れてしゃがみ込む。

 ブルマっていいなぁ。むちむちな太ももが剥き出しでキレイに見えるし、ボディラインもよく解る。お尻の形も堪能できるし、股間の具合もよく見える。運動している少女というのは映えるんだよな。

「あぶなーい」

 みここの叫び声が響く。

 何だ?

 と、首を曲げてコートを見るとテニスボールがドライブシュートのように弧を描いて飛んでくるではないか。

 僕に向かって。

 当たるっ。

 僕は立ち上がって逃げようとする。

 テニスボールはバウンドした。

 ぱこんっ!

「きゃいっ!?」

 そしたら見事に僕を追尾してきて股間にヒットしてしまった。

 勃起した亀頭は両手で覆って隠していたけど、テニスボールはバウンドしてきて下から突き上げるように、僕の金玉を狙ってきやがった。

「…!」

 僕は内股でぷるぷると震えながら痛みに耐えた。

「だいじょうぶー?」

 みここが駆け寄ってくる。

「何ともないよ。大丈夫」と遥ちゃんは答えた。

「でも、ボールが変じゃなかった?」

 友理子が不思議そうに首を傾げる。

「そうだね。なんかに当たったみたいっ」

「えーこわーい」

 外野からも他の女子が騒いでる。まずいな。彼女たちからしたらボールが空中で跳ね返って落ちたように見えただろう。

 僕は痛む金玉をいたわりながら、ぷるぷる震えて移動した。生まれたての子鹿のように。

 ぶんっ

 風をきる音が耳元で響いた。

「なんもないよー」

 振り返ってみると、さっきまで僕が居た辺りを遥ちゃんがラケットを振り回していた。

 恐ろしい。

 もし、ちんたらしていたら遥ちゃんにラケットでシバかれていたことになる。遥ちゃんのスイングが僕のお尻にスマッシュヒットしたら… 痛そうだけど、気持ちよさそう。

 おちんちんがびくっと反応を示した。

 試しに受けてみたいけど透明人間がバレたら困るので我慢だ。

 アミだから意外に痛くないのかも知れない。ラケットでフルスイングされて、何度もお尻を叩かれてお尻がアミアミの跡がつくんだ。遥ちゃんは僕をいたぶってご機嫌な様子。悪戯っぽいドSな笑みが僕の心を鷲掴みにしていく。

 あ、またおちんちんが勃起してきた。

 硬度を増していく…。

「変ね?」

「見間違いじゃない?」

「でもあんな勢いで飛んできたボールが何かに当たったみたいにここに落ちてるからね。やっぱり変よ」

 友理子が訝しげにしているが、僕には気付かないようだ。

「それに悲鳴も聞こえたきがする…」

「気のせいよー」

 遥ちゃんは細かいことを気にしないようで助かった。友理子もいい加減に口を噤んで、素振りばっかりしていればいいのに!

「…?」

 ふと、視線を感じて振り返ると千菜が僕を見ていた。

 僕を見て震えているよ。

 何だか幽霊でも見えてるかのような怯え方だ。

 千菜は成長が遅くてブルマ姿も様になってないけど、なだらかなお乳のカーブや腰つきの愛らしさはやっぱ女の子だな。子どもっぽいけど未成熟な可愛らしさがある。

 あれ?

 ひょっとして千菜には僕が見えているのか?

 見えているならもっと騒ぎになってもよさそうなものだが、誰かに言わないのかな。それなら好都合だけど…。

 千菜にはどう見えているのだろう?

 まさかクラスメイトの鷹橋くんがすっぽんぽんになって、おちんちんを勃起させて、女子たちをいやらしい目で見回してるなんてふうに見えてないだろうね。

 しかもスキンヘッドで。

 そう思うと急に恥ずかしくなってきた。

 誰にも見えてないからこそ、こんなに堂々と外を全裸で歩けていたんだ。同級生の女子に全裸姿を見られるなんて死刑宣告に等しい。

 どうなんだろう?

 今のところ、「“何か”居る…」程度のリアクションなんだと思うけど…。

 疑念は拭えない。

 みんなが謎の動きをしたボールのあったところをヒソヒソと訝しんでいた。急にそのヒソヒソも「あれ鷹橋じゃない?」「やだっちんこ丸出しよっ」「毛がないわ」「キモいっ」などと聞こえてくるようだった。

 そう思えば思うほど恥ずかしくなる。

 今まではこっちが一方的に女子のむちむちブルマ姿を堪能してやっていた立場だと思ってたけど、よく考えたら僕は全裸でみんなは服を着ているわけだ。

 大丈夫… 大丈夫… 見えてない… 透明人間のはず…。

 現にみんなが見てるのはボールが落ちたところで、僕はそこからズレて立っているのだから大丈夫さ…。

 しかし千菜の表情を見る限り、素っ裸を見られている気分になって自信が持てなくなってきた。千菜にはいったい何が見えているんだろう…。

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