それは突如 訪れた僕の人生最大のピンチだった。
僕は素っ裸になってブルマを股間に巻きつけている。
陰茎はこれでもかというくらいに勃起していた。千菜のブルマを手に入れて以来、ずっと手放せなかった。履いてみたり頭にかぶってみたり。千菜と一緒に居るみたいで気恥ずかしくもエレクトしてしまっていた。
しかもカツラがないから、ツルピカのハゲ頭である。
この姿を誰にも見られるわけにはいかない。
「顔見せてよ」
「いやだっ」
タオルケット一枚を挟んで遥ちゃんが恭しく声をかけてくれる。
だが、こんな恰好で布団から出てしまえば僕の人生が間違いなく終わる。いくら遥ちゃんの頼みでも聞き入られないことだ。
「せっかくお見舞いに来たのに、ちょっとは顔を見せてくれてもいいじゃないですか?」
友理子もクイッとメガネを指で押し上げ、ベッドの脇に立って僕を見下ろしている。
クラスの女子が二人も僕の部屋に!
こんな恰好じゃなきゃ嬉しいことなのにっ…。
「めくるよ?」
そう言って遥ちゃんはタオルケットをむんずと掴む。無理に引っぺがそうとしているんだ。僕はムササビのようにタオルケットの端を掴んで、サナギのように丸まった。
ベッドの上にはタオルケットの塊が転がっている状態だ。
身体を揺らされて、タオルケットを引っ張られ、僕の命は風前の灯火であった。
いったい、何でこんなことになってしまったんだ…。
僕は風邪を引いたことにしてこの二日間、学校を休んでいた。
千菜との一件でカツラを失くしてしまったからだ。透明化していないときは必須のアイテムなんだ。しくじったよなあ。あれがないと外も出歩けないよ。
だからタオルケットをかぶって誰にも顔を合わさないようにしていた。家族にだって見られたくないからね。
お腹が空いたら床ドンして親にご飯だけ持ってこさせるんだ。二階の部屋の前に置いていってもらう。まるで『引きこもり』だが、僕はそんなんじゃない。透明人間ならではの特殊な事情なんだ!
僕は部屋に引きこもってオナニー三昧となった。
千菜のブルマを手に入れたことで性欲が止まらないんだ。下着にも似たいやらしい穿き物だよ。こんなの穿いて、恥ずかしい恰好なのに、外で運動しちゃうなんて、女子っていやらしいっ。
当然のごとくブルマをおちんちんに巻きつけて遊んだよ。
あぁ… 千菜に素股されてるみたいだぁ。ブルマの股間が裏筋に当たって気持ちがいい…。そうしてオナニーをしていたら二階に誰かが上がってくる音。
床ドンしてないのに!?
僕は急いでタオルケットを頭からかぶったんだ。服を着ている暇がなかった。完全に油断していた。
カツラを通販で購入したから今日の夕方には届くはずだった。しかし届く前に彼女たちはお見舞いと称して現れてしまった。
僕に友だちなんかいるはずがない。お見舞いになんか誰もやってくるはずもないと高をくくっていたのだ。
まずいよ。証拠をいっぱい残してきているから気づかれたのか?
千菜の件は学校に行ってないから状況が解らないけど、きっと何らかの問題になっているんだ。学校側にチクってはないみたいだけど、千菜の証言から女子の間では僕が犯人だと解っているに違いない。
そうでなければ同じクラスの女子が僕の部屋になんか来てくれるはずがない!
「帰ってくれ!!」
僕が喚いたところで、それで引き下がる彼女たちではなかった。
「私、保健係りとして励ましたいんです」
友理子も引き下がろうとしない。
「何か顔を見せられない理由でもあんの?」
ぐいぐいとタオルケットが引っ張られる。
「風邪だから! 移したくないんだっ」
「構いませんよ、せっかく来たんだし顔を見せてくれません?」
友理子もタオルケットをむんずと掴む。
「やーめーてー!」
「ふう。なかなか強情ね」
溜息をつく友理子。
「ちょっと暑いわ」
「クーラーが効いてないよ。壊れてるのかな? あたし脱いじゃおっと」
「ちょっと遥、鷹橋の前よ?」
「別に大丈夫じゃない? 顔も出さないって言ってるんだから。下着だけになったって見られることはないと思うけど」
「でももし顔を出しちゃったら… 見られちゃうよ?」
「そんときはそんときだっ」
エイっと遥ちゃんは衣擦れの音を響かせて制服を脱いでいるようだった。そう言えば僕が盗んだ制服もカツラと共に置いてきてしまったからな。彼女たちの手元に戻ったんだ。もしくはスペアかも知れないけど。
「ふーっ。すっきり」
すとんっとスカートが床に落ちたらしい。
僕は想像してドキドキしてきた。
大好きな美少女、遥ちゃんが下着姿ですぐそこに!
想像するだけでおちんちんがカチカチに向上してきた。
むさい僕なんかの… 男の部屋でアラレもない姿にっ。
教室で盗み見た身体を思い浮かべる。豊満なお胸にぷるんっとした桃尻!
見たい!
僕の手から力が抜けてきた。
いや待てっ。罠だ。
これは単純な罠に違いないよ。
だってそんなワケがないじゃないか。女子がたやすく男の前で脱ぐはずがないんだ。これは僕をおびき出そうとする女の罠。
ふふんっ。
つくづく女子ってのは知能が足りないよね。
こんな手に誰が引っかかるかっての。
罠を見破った僕は、ちらっとタオルケットの隙間から外を覗いてみた。
「それっ」
「ああんっ」
タオルケットが引っぺがされた。
バッと宙に舞う。
「おぉ!」
「まっ、いやだっ」
僕は足をおっ広げて、恥ずかしいところを全開にしていた。ベッドの上にムササビがひっくり返ったように転がる。
なんてこと!
男の世界を暴かれてしまった。
勃起したおちんちんが女子たちの前に晒されてしまった。しかも千菜のブルマ付きだ。そしてハゲ頭だということもバレてしまった。
いや… だって、ほんの少しの隙間からなら彼女たちにバレないと思ったんだよ。少しくらいなら大丈夫だと思ったのが間違いだった。
少女たちの目は様々な感情がこもっていた。同級生男子の真っ裸を見て、驚きと優位に立った者の笑みを同時に浮かべる。
「ほら思った通りじゃん」
「そうね。証拠丸出しだわ」
友理子はもちろん、遥ちゃんも制服を着たままだった。一旦 脱いでからまた着たのかも知れないけど…。騙されたよ!
遥ちゃんは勝ち誇った表情だ。自分はセーラー姿で通常運転だが、そこで寝ている同級生の男子は真っ裸の上に勃起した陰茎まで丸出しだ。ブルマで隠れているとはいえ、ブルマを含めて見られてはいけないものだ。
友理子はジロジロと僕の身体を観察した。自分は着衣だから安心しきっていた。檻の外から興奮する動物でも観察するように上から覗き見ていた。
まるで捕まえた獲物をどうやって料理しようと考えているかのようだ。
いったい何をされるんだぁぁぁっ…。
おちんちんがビクッと跳ねて、僕は恐怖するのだった。