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おままごとで(3)

 ちゅうちゅう

 ちゅぷちゅぷっ

 ちゅうちゅう

 マーくんは喉を鳴らして飲んでいます。食欲の旺盛な赤ちゃんです。私は左手をおっぱいから離してマーくんの頭を撫でてあげました。

 可愛いです。

 ちゅうちゅう

 れろ…

 夢中になって乳首を吸っていました。出もしないのに音を立てて吸い付いています。口の中でれろっと舌が動いて生温かく湿った感触が残りました。乳首だけでなく乳輪やなだらかな肌の部分まで湿っていきます。

 まーくんの手は自分の胸の前で所在なくぶらんとさせています。

 可愛いです。

 ちゅう

 ちゅう

 ちゅうう…

 ごくっ

 ごくっ

 ちゅぷちゅぷっ

 んちゅうう…

 ごくごくっ

「ん…」

 私はお母さんになった気分でした。何だか変な気分です。マーくんの頭を撫でていた左手を彼の胴に回しました。本当に赤ちゃんを抱っこしてる感じがします。愛おしくなってきました。これが母性本能なのかなと思います。顔を赤くしているけど、退行してしまったような、無防備すぎる表情でマーくんは食事を続けました。

「よちよち。…いい子だねー… はぁ… はぁ…」

 たくさん飲んで、元気に育って欲しいと純粋に思います。赤ちゃんって可愛いな。

 でもクラスメイトだってことはもちろん忘れていません。男の子の前で恥ずかしい姿をしているんだと解っていて、私の身体は蒸気機関車のように湯気を吹いています。

 カァァ~ッて熱いんです。

 んちゅっ

 れろ

 ちゅっちゅ

 ちゅぷっ

 れろ

「っぁ…」

 私は変な声を漏らしてしまいました。恥ずかしいです…。

 乳首が引っ張られます。取れないか心配になるくらい引っ張られて少し痛いです。あむあむと甘噛して、ちゃんと厳しく育てないと乱暴で悪い子になってしまわないか本当に心配になりました。男の子はちゃんと躾ないといけないんだなって身を持ってわかりました。

 これ以上、乱暴するならお尻を叩いたほうがいいのかな…。

「ぃた… ……ん…」

 私も何だかうっとりとしてきました。

 マーくんは舌をうまく使って上手におっぱいを吸っていました。

 れろれろれろれろ

 ちゅっちゅ

 ちゅぷっ

 ちゅうっっ

 ちゅううっっ

「あっっ…!?」

 突然、私の背中に電流が走ったかのようにビクンッてなりました。強く吸われて嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちと叱りたい気持ちでゴチャゴチャになってきました。

「んっ…」

 いつのまにかマーくんの右手が私の左の乳首を露出させていました。小さな乳首を親指と人差指で挟んでコリコリとネジ回しています。摘み上げて引っ張ったり悪戯しています。

 痛いっ

 痛いっ…

「よ… よち… よち…」

 私は我慢しました。これは、あくまでままごとなんだからお芝居をしなきゃと思いました。

 今度はぷにぷにっと右手を胸に這わせます。なだらかなおっぱいを揉んでいるみたいでした。彼の手のひらに収まるほどの膨らみも弾力もありません。ただ鷲掴みにするようにして撫で回しているだけなのです。

 右手は悪戯しながら、彼の表情はうっとり安心しきった赤ちゃんのようで本当におっぱいを飲んでいるみたい。天使と悪い狼が同居しているような感じがします。

「ぅんっ! ぁんっ…」

 背中を反らせてビクンッてまた電流が走ります。全身が熱いです。脳みそがぴりぴりと痺れてきたような感じがします。

 目の前が白くなっていく感じがしました。

 じゅわ… と股間の辺りが熱い気がする…。なんだろう?

 湿っていて… ひょっとしてお漏らしでもしちゃったのかなって焦りました。隠さなきゃ… でも身体は言うことを聞いてくれません。

 私は気づいたら両手でマーくんの頭をギュッと抱き寄せて胸に押し付けていました。

 どれくらいの長い間そうしていたのでしょうか。

 私はマーくんに覆いかぶさるようにしていました。

 「んくっ…んくっ…」とマーくんが息苦しそうです。慌てて両腕の力を緩めて解放してあげました。

「ぷはぁっ。すぅっ… はぁはぁ… すぅっ… はぁはぁ…」

 マーくんは激しく息を吸い込んでいました。窒息死寸前みたいになっているのです。

「はぁ… はぁ…」

 私も息を切らしていました。口元を拭いました。よだれが垂れていたようです。

「マーくん…」

「ん? な… な、何だよ…」

 やり過ぎてしまったといった感じでマーくんはバツが悪そうです。顔がポストみたいに真っ赤でした。

「お… おいちかった?」

「っ…!」

 あれ? おかしいな…。マーくんはままごとであることを忘れていたみたいに、びくっと肩が震えました。

「お、おぅ… じゃなくて… ばぶぅ。ばぶばぶ…」

「よかったねー…」

 私はマーくんが求めるリアリティのあるおままごとになったと思って嬉しかったです。

 でもこれで終わりにさせません。

 マーくんは赤ちゃんに徹しきれていませんでしたから。

 悪い子にはお仕置きが必要なのです。


 私は自分のおっぱいが丸出しになっていることに気づいて慌てて隠しました。

 両手をクロスさせて下を向きます。

「ぁ… ぅ」

 マーくんも恥ずかしそうに目を逸らします。今まで自分たちがしていたリアルおままごとで、普段なら味わうことのない非現実的な体験をしたからでしょう。おっぱいを男の子の前で晒すなんてしたくないし、男の子だって赤ちゃんのマネっ子は恥ずかしいんだと思います。

 私は後ろを向いてズレたスポーツブラを定位置に戻しました。まだ右乳首が濡れ濡れで湿っています。右乳首はジンジンと痛みます。相当に強く摘まれたようでした。すり潰されるかのようにコリコリと捻られたのです。

 赤ちゃんはこんなことしません。

 私はこんなリアリティはおかしいと思います。

「…」

 もの凄く痛かったです。でもちゃんと我慢したんです。

 マーくんが許せません。

 私はTシャツを急いで着込みました。いつまでもこんな恰好では恥ずかしいからです。

 私がおっぱいを出して恥ずかしい思いをしたのに、そんな思いをしてまでマーくんの求めるリアリティを追求してあげたのに…。ふつふつと怒りが込み上げました。口が尖っていることに気づきました。怒りたいけど… でも唯一のお友だちなのだから嫌われたくありません。

「まだ泣いてるの? マーくん。今度はどうしたのかな?」

 私は振り向いておままごとの続きを始めました。

 マーくんは戸惑っています。まだ続けるのかとうんざりしているのかも知れません。でも逃しませんから。

「お、おぎゃ… おぎゃ…」

「ちょっと待っててね」

 私はベッドを降りてペンケースを持ってきました。

「寝てっ。寝てみてっ」

「ぉお…」

 マーくんは素直に仰向けになり、赤ちゃんみたいに足を抱え込んで寝転がりました。

 シャカシャカッ シャカシャカッ

 私はガラガラのつもりでペンケースを振りました。

「アハハハ…… アハハ…」

「んー泣き止まないなー、困ったなー」

「ハハ……? ぇ? ぁ… お、おぎゃ… おぎゃ…?」

「どうしたんだろう?」

 私は「にまっ」と心の中で笑いました。

 マーくんは私に誘導されるだけです。笑いたくても笑わせてあげません。まだ泣きやまないことにしてあげました。

「あーっ わかった。きっとアレだね。マーくんの欲しいもの取ってくるから待っててね」

「おぎゃ?」

 私は部屋を出て代替品を探しに行きました。でも欲しいものの見当はつけています。お母さんにバレないように取ってこなきゃ。


 マーくんは私のおっぱいを見て乳首にいっぱい吸い付いた。とっても恥ずかしかったけどリアリティのために我慢したのです。でも乳首を抓られて痛い思いをしたのはリアリティではありません。悪い赤ちゃんなのでちょっとしたお仕置きを思い付いたのです。


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