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全裸キャンプで(7)

 そう。

 紫村はまるで普通のことのようにヌーディストになろうと言い出したのだ。

「先輩…、それはさすがに…」

 いつもはガサツな小倉坂も口を濁していた。体育座りで早川と歌方、そして小倉坂が肩を並べて座っている。キャンプファイヤーの火を背にした紫村はギターをポロンと鳴らして微笑んだ。

「どうしてかな。海外では普通のことだよ。日本人だけがそうして内にこもっている。愚かしいことさ」

 べらべらと彼は喋り続けた。

 このキャンプにはオリエンテーションリーダーとして3年生も何名かキャンプに参加していた。

 彼が指導する班が、僕の所属する5班と早川の所属する女子の5班だ。体育座りして並ぶ女子たちの後ろに僕ら男子も雁首を揃えて座っていた。

「身も心も裸になって初めて親睦が深まるんだよ。これは建学の精神にも通ずるものがあるんだ。学校の理念を言葉だけ聞いても理解したことにはならない。体験してこそさ」

 きれいな肌に柔和な目と語り口。鍛え上げられた細マッチョな身体。才能に溢れる彼の言葉は説得力というより情熱的で、静かに訴えかけてくるものがあった。

 だけどこんなことで誰も裸になるわけがないだろと思って僕ら男子は話半分に耳を傾けていた。だが驚いたことに女子たちの反応は良好なものへと変化してくる。

「これは人として大きく成長できるチャンスなんだよ」

 紫村は黙っていれば文句のつけようのない美男子。俳優業やバンド活動なんかもこなして全国の女性から多大な支持を得る本物のカリスマだ。

 始めは抵抗していた女子たちも紫村の甘い声と焚き火の炎に魅入られて「…良いかも…」と言い出したのだ。人生に一度しかないであろう貴重な体験であるとか、人としてのレベルが数段回上がるだろうという言葉にみんな騙されたみたいだ。

 僕ら男子からすれば不毛な言葉も女子たちにすれば説得力のある神言になるらしい。

 いや、もしかしたらあのカッコイイ紫村くんのおちんちんを見てみたいという興味からくるものかも知れない。女子にもそういう好奇心ってあるものなのだろうか。

 早川は紫村の教えに口をぽかんと開けて聞き入っていた。憧れの人でも見る眼差しだ。女子も男子もみんな脱ぐのだから何も恥ずかしがることはないと語る紫村。理知的な早川でも「みんなが脱ぐなら…」と熱っぽい顔をして言い出す。これはもう一種の宗教や催眠術なのではないかと思った。

 一度やってみようと決めたなら女子たちのほうが積極的だ。

 むしろ後ろで恥ずかしがる僕ら男子をニヤニヤと笑って見ていた。

「あんたたちも脱ぐのよ? わかってんの?」

 小倉坂がニンマリと僕たちに舐めた口を聞く。これは女子の前で脱ぐ勇気がるのかと挑発しているのだ。

 僕ら男子としては女子の裸が見れるかも知れないと少し興奮していた。

 だからそれを期待して紫村を止めなかったけど、この場に居る全員がヌーディストになるのだから、当然 僕も脱がなきゃいけないのだった。

 おちんちんの毛もまだ一本だって生えてないし、皮を被ったおちんちんを見られるのは抵抗があるな…。

「うっせーよ。お前こそわかってないだろ小倉坂のくせに!」

 そうして僕と特に仲の悪い小倉坂とはいつも言い争いになってしまうのだ。

「キャハハッ こいつ赤くなってる! バッカじゃない?」

 腰まであるロングの黒髪が笑う度に揺れる。不覚にも可愛いと思ってしまった。僕もキャンプファイヤーの火に当てられたみたいだ。

 そして翌日。

 各班別に自由行動の時間に事件は起こった。

 ヌーディスト体験をしようと決めた僕らは川上へ向かうことにした。決して広いキャンプ場ではないけど、参加者全員が脱ぐわけではないのだ。

 紫村のヌーディストキャンプ計画に賛同したのは僕ら男子5班と女子5班、そして男子の3班と女子の3班だ。

 3班が参加するのは紫村が別ルートで説得していたからだ。5班にしたのと同じようにどこかで演説していたらしい。

 こうして16人の男女が自由行動の時間にキャンプ場を静かに離れることになった。先生たちや他の生徒の目を盗んで一人ずつ山を登るのだ。

 僕は歌方が登っていった後にキャンプ場を出た。順番は予め決めておいた。柵を乗り越えて山に入る。迷わないようにと山道には木に矢印が刻まれていた。想像以上に生い茂っていて草や枝が邪魔だ。密林を進んでいる気分になってくる。

「よく来たな。向こうで脱いでこい」

 後ろから声をかけられて振り向いた僕はドキリと心臓が跳ねた。

 矢印の先で待っていたのは植村さんだった。

 赤に染まったベリーショート。キッと上がった目つき。小柄だけどドラムを叩くというだけあって筋肉質な腕をしていた。

 何より驚いたのは既に裸だったことだ。

 裸と言っても葉っぱで作ったミノで大事な部分は隠れていた。

「あぅっ ひゃい」

 ウブな反応をした僕に植村が笑う。

「テントを張るのが早いな。男子はみんなそうなるぜ」

「はうっ!?」

 僕はおちんちんのハリに気づいてジャージの股間を抑えた。驚きながらもジロジロと先輩の身体を眺めていたから勃起していたのだ。

 紺色の学校指定ジャージは生地が薄い。ジャージの上からでもハッキリと形が解るくらいおちんちんが主張していた。

「いや違うんですっ これはっ」

 顔を赤くして背ける。

「気にするな。見たいんだろ」

「そ、そういうつもりじゃっ」

 と言いつつも健康な男子としてはとても興味があった。山を登ってきた男子はみんな同じ目的に違いない。

「おどおどしてたら格好悪いぞ。クラスの女子に笑われるぜ? ほらこっち向けよ。わたしの身体を見て慣らしておけよ。遠慮するな。そういう訓練の意味も込めてここに立ってやってんだ」

 なんという男前な植村先輩だろうか。

 恐る恐る顔を戻すと優しい笑みで待ってくれていた。陰影のある盛り上がった上腕筋に見惚れてしまう。腕組みをしていたのでおっぱいは見えなかった。代わりに胸の谷間がくっきりと見える。ブラに相当するものはつけていないようだ。

 目線を落とすとシックスパックに割れた腹筋が見えた。太ももは僕よりも太い。陸上部の選手みたいに美しい筋肉美がそこにあった。

「ずっとおっ勃てたままじゃ恥ずかしいぞ。慣れろよ」

 植村はそう言うとすっと腕を下ろして腰に充てる。ボディラインがしっかり見えた。

 小ぶりだけど、くんと上がったおっぱいに目が釘付けになってしまう。上向きの乳首や小さめの乳輪がほのかにピンク色で可愛い。

 おちんちんがますます上向きになった。

「ハハッ 素直な反応で可愛いな、お前らは」

 こういうことに慣れているのか、植村は堂々としていた。さすが先輩だ。男として上から来られるとムカッとなるけれど、ここまで堂々とされると仕方ないなと思ってしまった。

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