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全裸キャンプで(9)

 男子にとっては地獄絵図だった。

 小川のほとりで、僕ら男子が女子の奇襲を受けて右往左往している。

 情けないことだ。

 金田は誰もやりたくない5班のリーダーを押し付けられた気弱男子。特徴のないフチ無しメガネに冴えない顔で、見た目通り存在感というものがない。ひょろっとした身体は男として情けなさすら感じる。

「んやめてぇ~」

「うりゃー!」

 ピンクレッドの際どいビキニを身に着けている小倉坂麻友が相手だ。

 雄叫びと共に小倉坂が金田の腰ミノを強引に剥ぎ取っていた。金田は僕と同じく真っ向から襲われて堂々と競り負けたらしい。運動神経のない者同士、気持ちはよく解る。

 金田のおちんちんは陥没気味で極限まで縮こまっていた。

 ちょっと大きめの出べそみたいな感じだ。尖端はきつく皮で結ばれていて、親指の第一関節くらいの長さしかない。僕と同じく毛は生えていないし、金玉は緊張のためか皮が収縮している。まるで子どものおちんちんである。

 女子の前で全裸になったことに耐えられない金田は両手で股間を隠し、しゃがみ込んでいた。

「っしゃー!!」

 植村の声だ。

 吉村と清水の背後から近づき、瞬く間に二人の腰ミノを奪う。最初にやられた吉村のおちんちんは可もなく不可もない。毛も生え始めていて適度に剥けている。女子の裸を期待していたのか半勃起状態でぶらーんと肉棒が飛び出した。「きゃあーっ」と注目していた他の女子たちが喜々とした歓声を上げた。吉村はそこそこイケメンなのだ。

「ひゃあ」

 さすがの吉村も全裸になってイイ男が台無しだ。恰好悪い。

 吉村の後に清水の腰ミノが獲られる。清水はデブだから腰ミノがミニスカートみたいになっていた。これもあっさりと持って行かれてしまった。「むひ!」と言いながら股間を隠す。彼のおちんちんも縮こまっていたが、毛はびっしり生えて、もう子どもではない。

 イケメンの吉村のおちんちんには歓声が上がったが、ブサメンの清水にはグロテスクなものを見たという忌避の悲鳴が上がる。

「きゃははっ いっちょ上がり! 次ー!」

 小倉坂はロールプレイングゲームで雑魚を倒して悠々と先へ進む踊り子か遊び人のようだ。植村が素早く望月近づいて襲っている。獲物を見つけたとばかりに走っていく。

 彼女は勇者の影に隠れて弱った敵にとどめを刺すのが得意に違いない。

 幼い邪気に溢れた笑顔。性格とは裏腹のストレートロングの黒髪。さらさらとして彼女が動く度にふわりと舞う。

 意外に肉付きのいいお尻が可愛い。ピンクレッドのボトムは裾が白いデザインでハイレグに見える。いやらしいエッチな角度に思わず僕のおちんちんもピクッと反応を示した。

「なんだテメーら!」

 望月は腰ミノを取られまいと両手でガッチリとガードしていた。

「女の子の裸が見られると思ったか? 詰めが甘いんだよ!」

 植村が片手で望月の腰ミノを掴み引っ張った。

 そう言えば植村先輩はいつの間に水着に着替えたのだろうか。もう生乳は見せてくれないらしい。腰ミノもなく、今は背中のパックリ開いた競泳水着姿だ。水色と紺色の洗練されたデザイン。先ほどまでの原始人ぽい恰好は僕らを騙すためのフェイクということか。おっぱいまで見せてくれるという大サービスに、僕はむしろ感激した。

「おらおらおらー!」

 いい気になった小倉坂が植村に加勢した。背後から腰ミノを掴んで引っ張る。そこへまた新たなプレイヤーが駆け寄る。3班の村主(すぐり)だ。村主りょうはボーイッシュな髪型に温和な瞳の持ち主で、一年生にしてはおっぱいもお尻も大人のように発達していた。白、黄色、水色の洒落たビキニ姿はグラビアアイドルを彷彿させてくれる。

 彼女は望月のお気に入りだ。

「あはははっ それっ」

 その村主がよりによって望月の腰ミノを掴む。三方向から引っ張られた腰ミノは見るも無残に引き裂かれる。

「うおおおい! やめろやクソが!!」

 焦りに焦った望月。分類としてはDQNに属する嫌な奴だが、素っ裸にされてしまって憐れみを感じる。望月のおちんちんは少し興奮状態で1/4勃起くらいだろうか。ぴょーんと伸びた状態だ。尖端からピンク色の亀頭が少しだけ露出して女子たちの嘲笑を誘う。

「ぷっ なにアンタ! そのちんちんっ。普段は大きいこと言うくせに小っさー! お子ちゃまー」

 小倉坂が無遠慮に大笑いしていた。

 望月の陰毛は薄っすらと生え始めた程度で、生意気な割にその程度かと僕だけでなく女子たちも思っただろう。

「くっ う… ウルセー!!!」

 望月は腰を引いて両手で股間を隠している。後ろにいる村主にお尻を見られているというのに気づいていないらしい。それくらいパニクっているのだ。

 威勢はいいが、その姿は負け犬そのもの。情けないやつだよ。

「ねー、それ…。隠したら?」

 早川がプッと吹き出しそうになるのを堪えながら僕にアドバイスしてくれる。

 僕は両足を広げて尻餅を着いたまま、一部始終を眺めていた。ガタガタと震えながら動けないでいる。一番 情けないのは僕だった。

 僕はゆでダコのように赤くなり勃起したおちんちんを両手で覆う。

「ぅわぁ…」

 気づかなかったが早川の近くにスクール水着姿の歌方がいた。初めておちんちんを見ちゃったという解りやすい表情で頬を染めながら僕の股間を見ていたようだ。

 羞恥の極みだ。

 クラスメイトの前で勃起した包茎無毛おちんちんを晒した僕は恥ずかしさのあまり、貝になりたいと思う。

 手で覆うまで晒され続けたのだ。そそり勃った恥ずかしいおちんちんだよ。昨日まで同級生だった彼女たちはもう僕を同級生とは見ないだろう。女子の裸を見る前から興奮していた早とちり勃起野郎(元同級生)となるに決まっている。

 10年後も20年後も彼女たちの中の記憶に刻み込まれるのだ。

 勃起おちんちんを見られちゃった可哀想なやつという事実が残り続けるはず。卒業アルバムを見返せばいつだって僕の名前よりも先にすっぽんぽんにされて怯えている姿が思い浮かぶに違いない。

 こうして男子たちの作戦は潰えたのだった。

 紫村に女子たちを言い包めてもらって、キャンプ場でヌーティストごっこを愉しもうとしたことは、何故かバレていて逆にすっぽんぽんにさせられてしまうという失態を演じた。

 紫村のカリスマ性に女子たちはメロメロになって盲目に言いなりになると思ったのに…。

 そう言えば紫村がいない。

 あいつ… 真っ先に逃げたのだろうか。あの野郎…。


 彼の姿がどこにもなかった。


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