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全裸キャンプで(10)

 山の天気は変わりやすい。

 さっきまで晴れていたのに雨雲の量が急速に増え始めている。

 僕はそんなことにも気づかず、早川と歌方の前に裸を晒していた。

「み、見ないでっ」

「悪戯しようとした罰だっ」

 早川はとても楽しそうに笑った。無邪気な笑顔だと思う。僕ら男子が下心で女子の裸を見てやろうとした邪気に対して早川は撃退してやったという気持ちが大きいのだろう。

 僕を除く男子たちは喚きながら小川から離れていった。草むらに隠れたり木の陰に回ったりしたようだ。逃げ遅れた僕だけが女子に囲まれてしまった。

「紫村先輩はどっか行っちゃったねー」

 まず小倉坂が早川のところへ駆け寄ってくる。そんなに大きくもないおっぱいがポヨンポヨンと上下に揺れて目を見張ってしまった。

「アハハッ みんなすっぽんぽんで逃げてったよ」

 3班の村主りょうも歩いてきた。他のメンバーも後に続く。

「お前は逃げないのか?」

 いつの間にか僕の近くまで来ていた植村。驚いて見上げる。他の娘と違って鋭角的な競泳水着の彼女は強大に見えた。戦闘的でカッコイイし、ピタッとした生地のせいで身体のラインが浮かび上がり、エロ美しい。

 5班と3班の女子に囲まれた僕は足をピッタリと閉じて縮こまった。水着姿の女子の前で僕だけ素っ裸なのだ。糸くずすら身に着けていない。丸裸でおちんちんもお尻も外気に晒した状態だ。カァと顔も身体も熱くなり恥じ入る。

「こいつ、どーするー? 見せしめに処刑しちゃう?」

 キャハハと小倉坂が水鉄砲で僕の顔に水をかけた。コイツも装備していたらしい。

「ぅわっぷ!」

 両手は股間から離せない。僕は顔にかかる水をイヤイヤしながら避けた。

「やめてあげなよ」

 早川が小倉坂に進言する。男子への制裁は腰ミノを奪って恥ずかしい思いをさせてやるということだ。早川は、これ以上はする必要がないと考えている。だが僕と普段からいがみ合っている小倉坂は、僕が劣勢と見るや追い打ちをかけたいといったところだろう。

「ほら、みんなー。こいつの恥ずかしいちんこ見てやろー」

 川に落ちた犬を棒で叩く小倉坂。僕の左手を取りに来た。手首を掴んで引っ張り上げる。不利な力の入らない体勢のせいで簡単に持っていかれてしまった。

「うあっ やめろ!」

 僕は男らしい強い口調で小倉坂を威嚇する。こっちだって怒っているんだぞと伝えるためだ。しかし無神経な小倉坂には通用しなかった。

「キャハハッ あっ こいつ大っきくなってる~。やべー! キャハッ キャハハッ」

 子どもをからかうように笑うのだ。癇に障るっ。

 片手では勃起おちんちんを隠しきれず、チラチラと金玉がはみ出してしまう。小倉坂はここぞとばかりに水鉄砲で僕の顔を濡らしてきた。

「あっぷあっぷッ」

 焦って必死になったカッコ悪い顔をみんなに見られ、くすくすと女子たちに笑われてしまった。覚えてろよっ、 小倉坂め!

 僕はカッコ悪いところを見られ、早川にアハハと笑われて恥ずかしい思いをする。

 程なくして雨が降り出した。

「え?」

「さっきまで晴れてたのに…」

 早川や他のみんなも空を見上げる。

「まずいな。キャンプ場に戻ったほうがいい。こりゃ自由時間は強制終了になるな」

 植村がみんなに「帰るぞ」と号令をかけた。

 先ほどまでテンションの高かった女子たちは一気にブルーへと変わる。山の天気と同じだ。

「わ、すごい降ってきた!」

 小倉坂は僕のことを放り出して行ってしまう。他の女子たちも蜘蛛の子を散らすように始めに隠れていた森の中へと入っていった。

「本降りだね」

「ちぇっ せっかくおもしろかったのに」

 歌方と早川も僕を放って歩いていく。空を見上げるとバケツを引っくり返したような雨が顔に降り注いだ。何だか不穏な感じだ。僕も立ち上がって鍾乳洞へ戻ろうと思った。キャンプ場に帰るために服を着たかった。

「ぁ、腰ミノ…」

 早川が手に持っていたそれを返しに来た。

「忘れてた。返す。これに懲りたらもう変なこと考えないことだね」

「ぅぅ…」

 僕は何も言い返せない。腰ミノを受け取って、すぐに前を隠した。

「あれ? 着替えがない」

「うそー?」

「やだっ 無くなってる」

 ワイワイと木陰のほうから女子たちの声が上がってきた。服が無くなったと騒ぎ出す。そんなことは僕の知ったことじゃないので、僕は逃げるようにしてその場を離れた。腰ミノで前と後ろを器用に隠しながら走る。草むらに入って腰ミノを結び直し、これでおちんちんを見られることはなくなった。

「オイ! テメーら!! 服を返せー!!」

 望月が向こうからやってくる。両手で前を隠したままの全裸だ。他の連中も何故か同じ恰好。鍾乳洞に服を取りに帰ったのではないのか?

「腐れ女子どもがー!!」

「服を持ってくなんてやり過ぎだぞ!」

「知るかボケー!!」

 小倉坂も向こうで叫んでいた。

「あたしたちの服 持ってったでしょ!」

「返しなさいよ!」

 他の女子たちも同じく騒ぎ出す。

 どういうことだろう。男子も女子も服が無くなっているみたいだ。ということは僕のも無くなっちゃったのか?

 しばらく言い合いが続いたが、埒が明かない。

「ほら。これ返すわ」

 小倉坂と村主が出てきて腰ミノを放る。女子たちはそれきり井戸端会議を始めてしまった。ただ一人腰ミノを身に着けていたのは僕だけなので、仲間のために回収に向かった。

 女子たちが腰ミノを放って返してくれたので一応は男子たちの全裸問題は解決する。

「なんだよ… みんなの服が無くなってるって…」

 疑問を口に出す吉村。僕は腰ミノをみんなに配って回った。

「ちょ!! オイ! 何だよっ オレだけねーじゃねーか!!」

 だが望月の分だけ無い。彼の腰ミノがどうなったのかは僕は見ていたので知っている。小倉坂と村主と植村に引っ張られてブチブチと紐が切れてしまったのだ。修復不可能なほどにバラバラになって股間を隠す機能は皆無だった。

 他の男子たちは腰ミノを装備し直して出て来る。望月は結局、おちんちん丸出しのまま草むらに隠れた。

「揉めてる場合じゃない。点呼を取ってるかも知れないから早く帰らないと先生たちに怒られるぜ」

 植村が騒いでるみんなをまとめる。服が無くなったこと、紫村が居なくなったことは今は棚上げにするしかない。植村の言う通りキャンプ場に戻るべきだ。

「望月ぃ。行くぞー」

「こんな恰好のまま戻れるか! クソブス女子どもが!」

「しょーがねぇな。おい望月、わたしたちが隠れてた木の陰に腰ミノが一着だけある。それ持ってっていいぞ。わたしたちは先に帰るからな」

 それは植村が始めに身に着けていた腰ミノだろう。僕らは望月一人に構っていられないので先に山を降りることにする。

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