「おいおい… まずいな…。でかい川が出来ちまってる。迂回しないと」
山を登ってくるときは歩けていた場所も激しい流れの川となっていた。植村の後について僕らは他の道を探す。
「あれ… 澪ちゃんが居ない!」
早川が大声を出す。澪というのは歌方澪のこと。彼女がいつの間にか居なくなってる。はぐれたのだろうか。
「大変っ 捜さないと…」
「落ち着け早川っ。一旦 上に戻るから歌方も歩き回ってなけりゃ合流できるだろ」
植村の目論見は結論から言えば甘かった。僕らも深く考えずに従ったので同罪だ。戻っても歌方には会えないのだった。
「けっこう濁流だよ…」
「ああ、キャンプ場に戻ってもヤバイんじゃね」
吉村と金田が話している通りキャンプ場も無事ではなさそうだ。
「やべーよ! これ鉄砲水だ!」
デブの清水が悲壮感たっぷりに声を張り上げる。あまり危機感もなくキャンプ場に戻れるものだと思っていたが、どうやらそれは難しいのかも知れない。
「は? なに? てっぽう? どういうこと?」
バカそうに小倉坂が清水に問う。
「雪崩みたいなもんだよ! こりゃ今ごろキャンプ場なんか水没してるわ!」
「なんてこと言うんだ!」
植村が割って入った。
「とにかく鍾乳洞があっただろ。一旦あそこに戻ろう」
迂回しても下山は難しそうだ。下山は中止して雨が止むまで避難したほうがいいと思える。
しかし清水はもっと上に登るべきだと言い始めた。
「頂上まで行ったほうが安全なので!」
「いや、待てよっ。バラバラに行動してもらっちゃ困る」
「でも先輩、清水の言う通り頂上のほうが安全だと思いますよ」
そこへ村主が介入してきた。
「いや、頂上まで歩くのは危険だろ」
吉村が主張する。
こうして鍾乳洞へ向かう班と頂上へ登る班に分かれてしまった。
濁流を離れて来た道を引き返す。僕らはそうして鍾乳洞へ戻り、頂上へ向かうべきだと主張した清水たちがそのまま登っていった。
清水誠太、村主りょう、浅見朋愛、湧井栞、それから5班の金田橙児。
鍾乳洞に残ったのは僕と植村美聖、早川琉夏、バカの小倉坂麻友、吉村光。
金田は別にして、ちょうど3班と5班のメンバーで分かれたような感じだ。
*
「澪を捜さないと…」
早川はすっかり落ち込んでヒザを抱えて座っていた。
「望月のやつもどっかに行ったままだし、紫村のヤローもどこに行きやがった?」
植村が腕組みをして鍾乳洞の外を睨む。
歌方たちのことも心配だが、僕らの服はどこに行ったのだろう。普通に考えてみれば、誰かが持ち去ったとしか思えない。でも何のために持ち去る必要があるんだ? それが解らない。
「ねぇー。紫村先輩が服を持ってったんじゃないの?」
小倉坂ががばっと足を開いた状態で座っていた。両手を後ろについている。
「あの状況で先輩だけが先に居なくなってたんだから、きっとそうだよ」
「いや、小倉坂。そういうふうに人を疑うのはよせ」
植村が小倉坂を窘める。小倉坂はぷくぅと頬を膨らませて不満を顔に表していた。
「チッ みんなここを動くなよ。わたしが歌方を捜してくるから」
苛立った様子の植村は鍾乳洞を出る。
「えっ 先輩! あたしも行きますっ」
当然のように早川が名乗りを上げた。しかし植村に止められ、結局残ることになる。植村は「すぐに戻ってくるから」と言い残して出ていった。
残された僕らは無言のまま時を過ごす。
「やっぱりあたしも行ってくる…」
そして一時間が経過した頃、我慢できなくなった早川が行動に出る。みんなは止めようとしなかった。疲れ切っているんだ。僕は早川と離れるのは何となく嫌だったので彼女の後についていくことにした。表面上は仲間を見捨てておけないという顔をして一緒に外に出た。
そして僕と早川は歩き回った。
「雨が弱くなってきた。先に下山して応援を呼んできたほうがいいかも」
「うん…。じゃあ都築行ってくれる? あたしもう少し捜してみる」
「いや、あの… 早川を一人にできないって言うか…」
「…」
何となく気まずい。歌方のことを想って付いてきたんじゃないとバレているようだった。
早川は無言で先に進む。
ジャングルにも似た山の中を雨が降りしきる中、歩き回っていると生きて帰れないのではないかと不安になってくる。
静かに歩いていると、突然 草むらから何か影が飛び出してきた。
「きゃっ」
「何だ、お前らか」
望月だ。全裸の上に葉っぱでおちんちんを隠している。
「いいところに来た」
「あ、望月くん。下は増水してて危険だよ。鍾乳洞にみんな避難してるから行ったほうが…」
「おい。都築!それ寄越せ」
望月は早川を無視して僕に向かってきた。
「は?」
「なんでおれが葉っぱなんだよ! お前のそれ寄越せっ」
交渉の余地はないといった様子だ。僕に急速接近してくる。
「きゃー」
「おら!!」
望月は葉っぱを手放しておちんちんが丸出しになる。後ろで早川が顔を赤くして悲鳴を上げた。望月の若々しく筋肉質な全裸が露わになったからだろう。
亀頭が少し露出した程度の包茎おちんちん。陰毛は薄め。ゴツッとした感じのお尻。大人の子どもの間で揺れる成長期の肉体だ。
早川は顔を反らしたものの目線はしっかりと異性の裸をチェックしていた。
望月は手で僕を突き飛ばす。僕は「うわ」とバランスを崩して転んでしまった。さらに早川の悲鳴が大きくなる。
望月は構わずに転んだ僕に覆いかぶさり、拳を撃ち下ろしてきた。
ゴッと頬に痛みが走り、僕は早々に線維を喪失。
そしていとも簡単に腰ミノを奪い去る望月。
「あ… ぁ…」
腰ミノを外され、僕も恥ずかしいおちんちんを露出させる。情けない醜態を晒してしまった。
「ふんっ」
「ぎぁっ」
手を伸ばして腰ミノを取り返そうとする僕に、望月は容赦なくキックの嵐を降らせた。ゲシゲシと胸の辺りや腹を蹴られる。
悠々と腰ミノを装着する望月。彼は闘争に勝ったと不敵な笑みを浮かべ、早川を振り返った。
「…!」
早川も危機感を持つ。
「オイ、早川ッ。せっかくだ。おれのしゃぶれっ」
望月はとんでもないことを言い出す。ゆっくりと早川に迫って冗談ではないことを知らしめていた。かなり威圧的だ。
僕は再び全裸になった。
早川という好きな女子の目の前で、オス同士の力比べに負けるという屈辱。そして完全に皮をかぶり、まったくの無毛で筋肉も未発達の僕の裸は早川に見られて、望月と比べられただろう。
どちらがオスとして優秀なのかがハッキリしたわけだ。
「遭難して助からねーよ。暇だからしゃぶれよ!」
「嫌!! バッカじゃないの!?」
後ずさる早川。
「お前も全裸に剥いてやるぜ!」
「キャー!!」
一際、甲高い悲鳴で逃げ出す早川。背中を向けて走り出す。しかし望月がスピードで早川を上回った。素早く手首を掴んで望月に引き寄せられてしまう。
「ヘヘッ」
「嫌ァ!!!」
早川のビキニはヒモでちょうちょ結びしただけの水着だ。ブラの背中のヒモを引っ張られて、ボトムの両サイドのヒモも素早く引っ張られる。
しゅるっと解けて、一瞬にして着崩れてしまった。
ギュッと手首を強く握られて、それでも尚、ブラを片手で押さえながら暴れるように逃げる早川。しかし余裕の表情で望月は強引に彼女を抱き寄せて後ろから抱きついた。
「触るな! このっ!!」
「大人しくしろや!」
望月は早川の露わになったおっぱいを片手で揉みしだいた。暴れている内に早川の股に引っかかっていただけのボトムがずり落ち、完全に下半身が丸裸になる。
早川のアソコは僕と同じで無毛だった。
しっかりと色濃い割れ目がお尻の間から見える。
僕は地面に手を伸ばし、手探りしながら立ち上がる。目線だけはしっかりと割れ目に釘付けだ。
早川が望月の力に屈服し、膝をついてしまう。後ろから望月が覆いかぶさるようにしておっぱいをおもちゃにしていやがった。
足を開いた状態の早川。股間が丸見えだ。
よく見ると薄っすらと産毛が確認できた。
僕と一緒ではなかった。彼女のほうが少し大人なのだ。つるんつるんの僕は早川にも負けた気がして、おちんちんが勃起完了する。これ以上はもう硬くならないというところまで完全勃起を果たしたのだった。
涙が溢れていた。足が震えていた。
それでも一歩踏み出す。
「ヘヘッ」
片手でおっぱいを堪能する望月。僕の触ったことのないものを愉しそうに味わうのだ。もはや乳首は完全に露出し、ブラは首から下げているだけの前掛け同然。
腰ミノからハミ出した望月のおちんちんも隆々と勃起している。悔しいけど僕の完全体より1.3倍は大きいよ。
「いやよ!! 放せ!!」
ヒザを擦りむきながら早川は暴れる。器用にも望月は早川のぶらをササッと取り去ってしまう。これで早川も生まれたままの姿となる。
僕は生まれて初めて女の子の全裸というものを見た。
何か金玉の奥からほとばしるものを感じた。
いつの間にか涙が止まらない。
僕は望月に舐められているんだ。こんなに簡単に背中を向けている。だったら僕にもできることをしなければいけない。
手に持った石を望月の後頭部めがけ、振り下ろす。
ゲシ
「う! ってぇ!!」
異変に気づいた望月が振り返った。早川から離れて僕に敵意を向ける。
「テメェ!!」
「ひぃ」
僕の頼りない力での攻撃では大したダメージにならないらしい。頭から血が流れているが物ともしていない。
望月は僕にタックルをカマしてくる。僕と望月はもつれ合いながら木々の間に突っ込んでいく。全裸になった早川が驚いた顔でこちらを見ていた。
この隙きに逃げてくれればと思うだけだ。