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スイミングスクールウォーズⅢ(2)

 廊下を抜けて功はプールの前まで連れてこられた。授業の始まる15分前だが、先生たちはミーティング中でまだ館内に姿を見せていない。生徒たちがふざけあったり談笑する時間帯だ。
 功はスクールの古株だが、下級生たちによくイジられる。授業前や授業後にケンカばかりだ。功は自らのことを一番偉いと思っている。最年長なのだから当然だ。勉強だって一番進んでいるのだし人生経験も豊富だと自負していた。身体は小さいが歳上なのだから尊敬されて当たり前なのだ。しかし現実は違った。
 歳下3人組に胴上げでもされるみたいに担ぎ上げられていた。

「わっしょいわっしょい!」
 ぴょこっ!ぴょこぴょこっ!
 水着をずらされて、横から丸出しになったおちんちんが情けなく宙を舞う。
「やめろっ くそっ。降ろせー!」
 大樹に羽交い締めにされ隆史と一太に両足をがっちり掴まれている。恥ずかしいおちんちんが惜しげもなく女子の前で見せびらかされてしまう。
 ぴょこっ!ぴょこんっ!
 ぶらぶらと四方八方に暴れる肉棒。

「きゃーっ」
 桃と寧々の前に神輿が近づけられる。両手両足をジタバタと暴れさせるがおちんちんは隠せない。桃と寧々は嫌がりながら横目で功の股間を見ていた。
「あっち行ってよ〜!」
 と言いながらチラと包茎の具合をチェックする寧々。
「かわいそー。やめてあげなっ」
 と言いながらもじぃーっと金玉のシワを数える桃。

「わっしょいわっしょい!」
 大樹たちはおもしろがって功の丸出しおちんちんを回覧させようと他の女子のところにも近づいていく。キッズクラスの女子たちは逃げ惑った。しかし必要以上に離れていかない。遠巻きに虐められている『可哀想な男子』を見世物として観覧しているのだ。

 ぴょこっ!ぴょこんっ!
 ぶらっ ぶらんっ
 ポークビッツのような肉の棒きれとお弁当に入れるミートボール大の金玉が弾んで、羞恥を掻き立てられる。自分だけが歳下の女子たちにしっかりとおちんちんを見られてしまってショックだ。他の男子にも示しがつかない。格好悪くてダサい姿に功は涙が出そうになった。先行して鼻水がブバッと出てしまう。
「先生呼んでくるよ!」
「弱い者いじめはやめてっ」
「可哀想でしょー」
「やだっ! 来ないで!」
 女子たちはあからさまに功を弱者と認定していた。子ども扱いである。

「降ろせっ ちくしょう!」
「わしょーい!」
 下級生男子におもちゃにされる上級生男子は情けないものがある。顔を真っ赤にして引き攣らせた功の顔はしかし物笑いの種だ。

「おらっ いつも偉そうにしやがって!」
 ずでんっ
 羽交い締めにしていた大樹が功を放る。尻もちをついて「ぎゃ」と功は床に転がった。
「パンツにシミつくってる癖
に汚いままプールに入るんじゃねーぞコラ」
 どすっと大樹が背中を蹴った。
「おいっ サッカーしようぜ」
「おーぅ」

 隆史と一太が参戦してきた。いそいそと水着のズレを直そうとする功に総攻撃だ。丸出しおちんちんを隠すこともできずに蹴られまくった。

「あたしも混ぜてっ」
 ボーイッシュな少女がしゃしゃり出てくる。野乃(のの)という同級生だ。学校でも同じクラスで毎日顔を合わせている。いかにも悪戯好きそうな眼力のある男子顔負けの女の子だ。しっかりした眉に、口角(こうかく)の上がった強気な表情。明るくて元気で健康的な小麦色の肌。少しだけ胸が膨らみ始めている。
 赤い水着の野乃が躊躇なく功の肩口を蹴った。おちんちんを水着に収めようと必死の功の作業を邪魔した。
「いてっ!?」
「あははっ」
 学校でもイジられキャラなので功が反撃できないことを知っているのだ。功より身体が大きな野乃は歳下3人組男子と一緒になって功を蹴る。
 リズミカルにタイミングよく連続で蹴られることで功はおちんちん丸出しのままだ。

「なん… だハッ テメーらガハッ! 後でっ ウガッ、ぶっ… ぶっ飛ばすからなハッ!」
 蹴りの嵐の中、まずは立ち上がらなければと功は床に手を着いて、蹴られながら中腰になる。
 ぱこんっ
 野乃の足が功のお尻にヒットした。前のめりに功は転がる。女子に蹴られて、そのままでんぐり返ししてしまう功。
 大股開きで女子たちの前に股間を晒した。
「ぎゃっ」
「あっ ごめん」
 口に手を充てて本意ではなかったと謝る野乃。いじめというほどの意識はないのだ。遊びの一環として蹴ったが、野乃はここまで恥をかかせるつもりもなかった。それほど女の子にお尻を蹴られて転がされるおちんちん丸出し男子の姿は情けない。尊厳を大きく傷つけるものだった。
 しかしギャラリーからすれば滑稽な劇に温かい笑いが生まれていた。桃と寧々も、やだっクスクスと笑っている。

「ぎゃははっ マヌケせんぱい!」
 大樹は功をまた羽交い締めにして無理やり立ち上がらせた。軽々と赤ん坊のように抱え上げられる。隆史が「汚れた水着は消毒じゃー」と近寄ってきて功のパンツを脱がせにかかった。一太も協力して水着は脱がされていく。
「やめぇいろーーぁ!」

「きゃー」
「やめなって。もう先生くるよー」
 女子の声を無視してむしり取られていく水着。ズリズリと下げられて膝を通過し、足首からすぽんっと抜き取られる。野生ではない人間らしさを保つためのアイテム・水泳パンツが剥ぎ取られたのだ。水泳帽とゴーグルを残して功は全裸になってしまった。抱えられているので生まれたばかり赤ちゃんと同じ恰好だ。

「やあぁだ〜 ぜんぶ出ちゃったじゃん」
 ぷすっと吹き出す野乃。
 ぷらんっとぷらぷらする短い陰茎。
 目の前で毎日顔を合わせる女子なんかに、見られたことのない大事な部分を晒してしまう。
「うぎゃああ」

 大事なものを失った気がした。大量の鼻水が吹き出す。最年長で最も尊敬されるはずの功は後輩たちにすっぽんぽんにされてしまったのだった。

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