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閉ざされた村で 第二話 少女たちのいじめ(1)

 N市では男子よりも女子のほうが遥かに強い。
 牛田竜一は取材を続けながらそう感じた。
 全国的に草食系男子・絶食系男子が増えているということもあり、女の子のほうが肉食になってきたのは何もN市に限ったことではない。だが旧 木隠村(こがくしむら)の影響下にあるN市では独特の様相を呈していた。
 天都水織の通う高校では『女子が男子を管理する』という独特のシステムができあがっていたのだ。

 取材、というか隠れて盗撮をしていく内に、松原玲央(まつばら れお)という大人しそうな男子に目をつけた。平均以下の身長と体重で顔や学力も平均を上回ることのない玲央。いかにも気弱な男子だ。彼は今日もトイレから出てきたところを女子に捕まった。
 隠し撮り映像を見ながら竜一は息を呑んだ。

「松原さん。ちょっと手を見せてくれる?」
 彼女は鬼塚彩希(おにづか ゆいり)という生活指導班の少女である。

 生活指導班とは生徒会・風紀委員会・保健委員会などの有志から成る特別なチームだ。名目上は男女問わず生活指導の先生の下に付く直属の部隊ということになる。
 膝上3センチのスカートにキリリと締まったウエスト、地味な靴下、地味な黒タイツ、地味なローファー、地味な髪留めに、秩序と正義感に溢れた目。
 彩希は長身で背筋がピンと伸びていた。玲央よりも10センチ高い。手には何かを書き込む用紙と地味な飾り気のないボールペン。
 周りには同じような少女たちが腕に腕章を付けて玲央を取り囲んでいた。
「あなた、手を洗っていないようですね?」
「え? そんなわけっ ないよ? へへ」
 へらへらっと笑って、いじめられっ子気質の玲央は自分よりも背の高い少女に気圧されてしまった。
「手を見せてください」
「え? ぇえ?」
 鬼塚彩希は玲央の手首を引っ手繰るように掴み寄せる。
「臭ぁい」
 そして顔をしかめた。
「こんなに乾いてるんだから、やっぱり洗ってないんでしょう?」
 他の少女たちも詰め寄って覗き込む。
「いや、そんな…。手を洗ってからちゃんと乾かしたんだ」
「統計では8割の男子がトイレの後、手を洗わないらしいですよ。それにアンケートの結果でも洗うのが面倒だって言ってる男子が多いわ」
「僕はちゃんと手を洗ったよぅ」
「手を洗ってもハンカチでちゃんと拭かない男子も多いって統計データが出てるんですよ?」
「ハァ?」
「この分だとアソコもちゃんと拭いてないんじゃないかしら?」
 生活指導班の少女たちは口々に「そうよそうよ」「不潔〜」などと言い始めた。

 竜一は映像を見ながら、これが女性社会の実態なのかと憤慨した。なんという決めつけだ。だが本人たちは正義だと思っている。幼い男の子を躾けるという感覚なのだろう。

「おちんちんもチェックしましょう」
 彩希は生活指導班のリーダーである。生活指導の先生(これもまた女だ)から権限を与えられているので、怪しいと見ればいかようにも身体検査でき
る。まるで深夜の自転車盗難を疑う警察官のような振る舞いだ。

「ええっ 嫌だっ。僕、ちゃんと手を洗ったよぉ」
 暴れだす玲央。高3のはずだが、弱々しい抵抗だ。既に成長は止まっており、他の少女たちと比べても背が低く、虚弱体質っぽい。四名の少女たちは男子トイレに玲央を連れ込んだ。権限を有しているため堂々と男子トイレに入れるのだ。
 キリッとした彩希に玲央は腕を後ろに回された。
「さぁ制服を脱ぎなさい。チェックよ」

 一人の女子は検査中に他の男子が入ってこないようにドアの前で見張った。もう一人の女子は掃除用具入れの中からホースを出して何やら準備している。
 彩希が暴れる玲央の手首を抑え、絞め上げていた。
 最後の女子が玲央のベルトを外し、躊躇なくズボンを下げてしまう。

「いやんっ」
 玲央は童貞のためか、顔を真っ赤にして目をつぶりイヤイヤと首を振った。足踏みをするようにして脱がされないように抵抗したが、引き千切るようにズボンを脱がされてしまう。
「やんっ やめてくださいっ」
「これは検査です。ちゃんと拭けていなかったらバイ菌でいっぱいになっちゃうでしょう?」

 彩希の力は並以下ではないかと竜一は思う。
 ひ弱とは言え、玲央が簡単に抑え込まれるのはやはり伝説の“姫鬼”の能力なのだ。
 調べたところによるとN市には天都家(あまみやけ)以外にも姫鬼の血を受け継いだ女性たち、つまり混血児たちが広く生息しているようだ。

 女の子が並以下の力であっても、男たちは姫鬼を前にすると本来の力を出せなくなるのではないか。噂ではそう言われていた。

「鬼塚さんっ。この子、パンツの前にシミがついてるっ。臭いよ!」
「いけないわね。消毒の措置をとります。これもあなたのためなのよ?」
 言うが早いか、二人の女子は玲央の服を剥ぎ取り始めた。紺色のボクサーブリーフをずるるっと脱がしておちんちんがポロンッと飛び出る。
 女子たちはその包茎おちんちんを見ても何も感想はない。陰毛が薄くても、肉棒が1センチしかなくてもバカにすることはなかった。男の裸など見慣れている精鋭チームなので騒ぐこともない。
「いやだあっ!」
 反対に玲央はしゃがみ込もうとして無理やり立たされたり、逃げようとしてダッシュするが鎖に繋がれた犬のように戻された。短小包茎おちんちんが女子たちの前でみっともなくブルルンッと跳ね回った。学生服の上も無理やり脱がされて玲央は瞬く間にすっぽんぽんになってしまった。

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