その昔、山奥の神社で巫女をしていた少女が凶悪犯罪に巻き込まれたという凄惨な事件があった。
一等地だった山の手の町は事件以降、人口が減っていき今では人っ子一人いない。今では有名な心霊スポットとして扱われているようだ。
自分を殺した男を捜して巫女の少女は霊となって現在でもこの辺りをさまよっているらしい。
肝試しが始まる前に公民館で子ども会会長のお爺さんにその話を聞かされた子どもたちはみんなビビり上がっていた。
だが俺は違う。
ビビるわけがない。幽霊など存在しないと知っているからだ。だいたいこの辺りはれっきとした別荘地でもある。街灯だって設置されてるしホテルや民家があるのも知れ渡った事実だ。あんなのジジイのホラ話さ。
「希空だよ。はじめまして」
「お、おう…」
「あはははははは お兄ちゃん遊ぼう」
希空(のあ)と名乗った少女は俺の手を引いて走り出した。
ナイトハイクのコースに現れたショートカットの元気な女の子。「道に迷っちゃって」と話しかけてきて勢いあまり俺に激突した娘だ。起き上がるなり「お父さんとお母さんのところへ連れてって」と言い出す。
「あはははははは ねえ遊んでっ」
やがて希空はそう懇願してきた。距離感が掴めていないのか、じゃれ合うように何度も接触していた。少女の体温が温かく感じられる。
「上の別荘の娘か? しょーがないな。連れてってやっか」
「わーい」
手を引かれてどこに向かっているのかも解らずついていく。迷いなく手を引っ張っていくので、家のある方向だけは解っているようだ。
「どこから来たの?」
「俺? A県から来たぜ。子ども会の付き合いでな」
「怖いオジサンいない?」
「あ? 怖いオジサン?」
「子どもの会でしょ?」
「あぁ。いやいや。保護者の大人も一緒だよ」
『子ども会』を子供だけの会と勘違いしているのか。都会育ちの核家族とかなら昔ながらの『子ども会』を知らなくても当然か…。
「あ、温泉に入ろうっと」
希空は道を外れて突然フェンスを登る。こんなところにフェンス? 向こう側が見えない。しかし希空はパンツが見えるのも構わずに乗り越えていった。男の俺が臆するわけにもいかない。放ってもおけないしな。希空に習ってフェンスを乗り越える。
こんなところに温泉?
硫黄の臭いに包まれた空間だった。
希空は既にワンピースを脱いで地面に畳んで置いている。パンツに手をかけているところだ。脱衣所もないのかよ。バスタオルも着替えもなしによく入る気になるな。
パンツを脱いですっぽんぽんになった希空は飛び込むように温泉に浸かった。
「お兄ちゃんもおいでー。あはははははは」
大人の判断としては入るべきではないと思う。しかし「来ないの? 恥ずかしいの〜?」などと誘う希空に意地を張るように服を脱いでやった。バスタオルなくてもすぐ乾くだろ。俺も全裸になって湯に入る。
熱い。
沸騰しているのか
と思うくらいの温度だ。ボコボコと気泡が割れている。
と思うくらいの温度だ。ボコボコと気泡が割れている。
「お兄ちゃんのおちんちん大っきいね!」
「ハッ 当たり前だろっ」
子どもの前なのだから胸を張って堂々としていればいい。俺は希空の隣に歩いていって湯に浸かった。極楽じゃないか。気持ちがいい。ちょっと熱すぎるが希空が平然としているのに俺がこの程度でギブアップするのも恰好悪い。やせ我慢しながら肩まで浸かった。
「わあすごーい」
少女は股間に興味津々だ。踊るように観察していた。いろんな角度から見ている。俺も引き換えにと言ってはなんだがのっぺりとした少女の肢体を舐め回すように見てやる。真っ平らな胸につるんつるんの割れ目。ぽこっと出たお腹なんか背徳的だ。エロスは感じないが惹かれるものはある。俺は変態なのか…。
初めて見る女の裸だからなのかも知れない。
さっきから半勃起してしまっている。希空にはこれが通常サイズだと思わせておこう。
俺は手で湯を掬って顔を洗った。
「それにしてもこんなとこに温泉とはな。知らなかったぜ」
ばしゃばしゃと顔を洗う。なんだかぬるっとしている湯だな。
「希空のお家はねー。このお風呂の先にあるのっ」
「え? そうなのか。じゃあ迷子なわけじゃないのか?」
「なにが?」
「いやだからお父さんとお母さんのところに連れてって欲しいんだろ?」
「うん」
「家がすぐそこならもう帰れるだろ?」
「帰れないの」
「?」
俺は不思議に思って希空の顔を見る。あれ? いない。今まですぐそこにいたと思ったのに。
「ん? 希空ちゃーん?」
湯の中を掻き分けて進んでみた。濃い湯気のせいで前がよく見えない。
『あはははははは』
「……」
温泉の向こう岸についてしまう。希空の姿を捜して裸のまま湯気の充満する道を進んだ。だんだんと不安になってくる…。
ひゅー……
どろどろどろ…
「ぅうらめしぃや~」
「!?」
突然の声に俺は跳ね上がった。
驚いた俺は声のしたほうを振り向いた。着物の女が立っている。顔面が血だらけで目の上が大きく腫れ上がっていた。痛々しい顔がひひっと笑っており不気味だ。
ぶら〜ん。
火の玉が目の前を横切った。
「ひぃッ」
俺は木の幹を背にすとんと尻もちをついた。
じょばー…
「あれ? ウチの学校の子じゃないよ?」
「まあ、服を着ていないわ」
「どうした? どうした?」
着物の女が三人。わらわらと出てくる。
よく見れば歳の近い女子たちだ。顔に見覚えはない。一人は特殊メイクをしており、一人は釣り竿を持っていて、一人はスマホと懐中電灯を持っていた。
じょばー…
じょぼぼぼぼぼ〜
懐中電灯で照らされる。俺はお尻の下に水たまりをつくって、固まったまま少女たちを見上げていた。
「あ、やだっ。この子ったらお漏らししてるっ」
「あらあら。怖がらせすぎちゃったのね」
「わっ きったねー」
じょぼぼぼぼぼ〜
M字開脚をしたまま、現在進行系で水たまりを広げている俺。素っ裸で放尿するさまを隠し立てすることなく見せつけていた。唖然とした顔で見られている。
皮をかぶった結び目から溢れ出るように小水がジョボジョボと音を立てて出てくる。ダムが決壊するかのごとく先っちょから黄金の水を延々と垂れ流していた。