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お楽しみ会で 〜地獄のフルチンフルーツバスケット〜(3)

△チビ太


 仕方がないことだ。自分が我慢をすれば済む話じゃないか。

 それでうまくやってこれたし、これからも円滑に行くことだろう。みんなが喜んでくれるなら、充の言う通りにしよう。


 一人目の犠牲者、チビ太はそう考えた。いつも通りのことだ。


「青い色が入ってる服を着てる人!」

 フルーツバスケットが始まって最初の鬼である靖奈が声を張り上げた。その瞬間に青い色の入った服を身に着けた6人が動く。

 自分の服にワンポイントで青が入っていたことに遅れて気づいた者が2人。

 キュロットスカートの靖奈はチビ太に狙いを定めていたようで、チビ太が退いたイスに向かって突進してきた。青いジャージを穿いていたチビ太は自分が条件に当てはまるとすぐに判断できたものの、靖奈の勢いに道を譲らざるを得なかった。足がもつれて転ぶ。

「あ…」

 鬼を含めて既に5人が座席を取っていた。残りは遅れて動いた2人とチビ太の三つ巴だ。一人はTシャツの胸に青いブランドロゴの入っていた充。もう一人は里見富美加(さとみ ふみか)というクラスイチの可愛い女子。ポニーテールのシュシュが青いので彼女でも該当するのだ。


 時計で言えば12時の方角に充。9時の方角に富美加。5時の位置にチビ太。

 チビ太は靖奈に道を譲ったことで『終わった』と思った。転けるようにしてぺたんと床に座ってしまい、『鬼』は決定的だ。立ち上がる頃には彼の座るイスがなくなっているだろう。


「けっ、ノロマめ」

 充がそう呟いたような気がした。ずっと充に付き従ってきたのに、酷い言われようじゃないか。チビ太はすぐに絶望的な気持ちに陥る。


「きゃんっ!?」

 びたーんと富美加が盛大に転ける。


「え?」

 いったい、何が起こった? チビ太は目を疑った。

 まだイスが空いているじゃないか。

 富美加が座る予定だったイスだ。チビ太はよろよろと立ち上がって空いているイスを悠々とゲットできた。

 当然のように充も富美加が始めに座っていたイスに収まっていた。

 これで次の鬼の決定する。


 転んだときにスカートが捲れてパンモロしている里見富美加が鬼になった。


 ライトピンクのボーダー柄が眩しい、深穿きパンツだ。少し足を開いて股間の辺りが露わになり、セクシーポーズとなっている。前のめりに倒れたのでお尻の形が丸わかりの恥ずかしい恰好だ。

 クラスメイトたちから「ぎゃはは」と「大丈夫っ?」の2種類の声がかけられる。


「だっせー、パンツ丸出しでやんのっ」

 充を始めとした悪乗り男子たちが手を叩く。

「酷いっ。今、ミツル、足引っ掛けたでしょー!?」

 女子たちからは抗議の声が上がった。


 何にしてもチビ太は助かったと胸を撫で下ろす。充はひょっとして自分を助けてくれたのだろうか? チビ太は嬉しくなる。やはり子分を守ってこその親分だ。ズボンを脱がなくて済むと安心した。


 だが緊急事態。富美加は鼻血を出していたのだ。

 保健室へと退場処分となる。担任の先生が付き添いで教室からいなくなった。


「じゃ一番最後に座ったお前が鬼な!」

 そして無情に充はチビ太に宣告する。


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