「学級… 裁判?」
間の抜けた顔で反芻する僕。
「そう。鷹橋は未知の力を使って、千菜を襲った件、改めて話し合いましょう」
「ほぇ…」
「初めはテニスをしていたときだわ。運動場の足跡に、砂の幽霊。遥にケガをさせた何者かが居ると思った。後で男子たちに聞いてみたわ。そしたら鷹橋だけがいつも体育の授業を欠席してるって」
「…ぅげ」
「休みでも見学でもなく、居ないのよ、ずっとあんただけ。保健室だって言ってるみたいね鷹橋? でも保健の先生にも聞いているわ。鷹橋は来てないって」
「げぇ…」
バレとるがな、全部。
「様子のおかしい千菜さんにも聞いてみた。そしたら何かの気配を感じるって言っていた」
「ぅ」
僕は気のせいだと思い込もうとしていたが、やはり千菜にはバレていたらしい。
「それからセーラー服が盗まれた事件、みここがゴミ袋に入った私たちのセーラー服を見つけてくれたわ。千菜さんはゴミ捨て場で何者かに襲われた。ハッキリと鷹橋に襲われたと千菜さんは泣きながら教えてくれたの」
「ぅぅ」
千菜の姿は見えない。みんなの後ろに隠れているのだろう。
「私たちの制服の中に鷹橋の制服もあった。もうあからさまに怪しいと女子のみんなで情報を共有したわ。それで風邪で寝込んでいるあんたの家に行ったの」
「そしたら千菜のこのブルマでいやらしいことしてたわっ」
遥ちゃんが説明を加える。
「だから証拠も押収して写真も撮ったったわ」
「でも学級会ではつい仏心で過激すぎる証拠を提出できなかった。状況証拠だけで千菜を襲ったことを証明できると思ったのに…」
友理子が不満そうに唇を噛む。
「ここまでで申し開きはあるのかしら?」
「ぅぅないです…」
勃起したおちんちんをブラブラさせて下を向く僕。反論したところで、もう助からないだろうと思ったのだ。
「もうすぐ体育の授業が始まるから、その恰好のままついてきなさいよ」
「こ、この恰好でぇ…?」
「姿を隠せるんでしょ? 知ってるわ。先生にはバレないように隠れてなさいよ。でも私たちは鷹橋を囲むので逃げられませんよ」
僕はワケも解らず連れていかれる。
実体を晒すのは嫌なので再度、透明化を発動する。何だよコレ…? 遥ちゃんにしっかり左手首を握られて、僕の周りを女子たちが囲む。
透明人間になって姿は見えないはずなのに、僕の姿は彼女たちには見えているようだった。
それもそうか。遠くからは判別しにくいが、スプレーでの彩色とチョークの粉による型取りで薄っすらと僕の裸体シルエットが浮き上がっているのだ。
見ようによっては本当に幽霊っぽい。
僕は女子たちが集団で廊下を歩いて行く中、全裸で追随していく。
セーラー服姿の他クラス女子二人組が対面からやってきた。もうすぐ授業が始まるので教室に戻るところだろう。僕の姿を見てギョッとする。
「え… なにアレ……?」
「男子? おち… ん… ちん…??」
勃起したおちんちんにも粉が薄っすらかかって輪郭がハッキリと解る。ヒソヒソと二人組が僕を注目して振り返る。いやんっ 恥ずかしい! 見るなぁ!
「これはね…」
友理子が立ち止まって説明をしていた。二人組は頷いている。どんな説明したらこの惨状を納得するんだ…。
尚も廊下を練り歩いて、玄関を通り、上履きから運動靴に替え、女子たちは和気あいあいと運動場に出た。もうみんな普段のテンションに戻っている。僕は裸足のままだ。
「鷹橋、いい? あなたはこれから透明人間よ」
「な… んですと…?」
「これから私たちはあなたを無視します」
「へ?」
「存在をスルーするの。オバケ扱いよ。先生やさっきの二人組のようにバレても私たち女子のみんなはシラを切るわ」
「そういうこと。先生に何を聞かれても見えてないことにするから」
遥ちゃんが笑顔で言葉を加える。
「これが鷹橋に対する罰よ。学級裁判の結論はもう出てるの」
「話し合いは!?」
「まだ何かある? 何か反論があれば聞くわ。弁明することがあればしてみて。でも女子のみんなで話し合って先に結論だけは出てるの」
「そんなぁ」
「必死に弁明することね。もしかしたら慈悲で許してもらえるかも」
友理子は歩きながら告げる。
千菜の汚されたブルマを掲げる。
「これを穿いてもらうわ。いつまでもそんなもの晒して恥ずかしいのでしょ? せめてものの情けよ。足を上げて」
「な…? へ…?」
僕はもう言われるままに従っていた。ビニール袋から取り出された臭いのキツイ汚れたブルマに足を通す。何でもいいからそれを穿かせてもらっておちんちんを隠せるなら良いことじゃないか。ブルマが太ももを通って装着完了だ。
あれ?
ぞんざいに穿かされたらしい。
亀頭の先端だけが顔を出していた。
友理子に右手首を握られてしまい、自分で直すこともできない。
「ちょ… あの… ちょっとこれ… 恥ずかしいので…」
「何のこと?」
「え…」
僕はそのまま歩かされる。
女子に囲まれて僕はこんなに卑猥な恰好だ。恥ずかしいのと妙な快感…。ブルマを穿いた興奮でおちんちんが中でびくんっびくんっと反応していた。
小さなブルマがぱつんぱつんに広がって、歩く度にずり下がっていく。半ケツ状態になり、亀頭が完全に露出したところで止まった。
傍から見るとブルマだけが空中を移動しているように見えるだろう。近づいてよく見ると男子の裸体がブルマを穿いて歩いている変態オバケである。
周りからクスクスと笑い声が聞こえてきた。
僕が振り返ると女子たちは素知らぬ顔で明後日のほうを向いていた。他の女子も見てみるが一瞬で目をそらして談笑するフリをしている。
もう既に始まっているのだ。
透明人間の罰が。
運動場に整列する女子たち。向かいに体育の先生が立つ。
年配の女性教諭は形だけの体育指導だった。積極的な指導はなくて放任主義らしい。ニコニコとゲームをさせて監視員のような人だ。
先生は僕の姿を見て「ま」と驚いた。
「どうしたんですか? 先生」
遥ちゃんが元気に問う。
「いえ、そこに何かいるような気が…」
「何がいるのかしら…??」
ざわざわと女子たちは知らんぷりしていた。
「疲れてるのかしらねぇ… 昔から霊感は強いほうだけどまた見るなんて…」
先生は僕の存在を幽霊と認定したようだ。千菜と同じようにである。これで大人たちの前に突き出されることはなくなった。同年の女子に裁かれるのみだ。
そして難なく体育の授業が始まる。
「今日はミニバスケをやりますよ」
僕は遥ちゃんと友理子に手首を握られたまま女子の集団に紛れ込んでいた。ゲームをしている連中以外はコート外で練習か待機だ。
「ふぁーあ! 今日も暑いなー」
遥ちゃんはいつも通りの明るさで伸びをした。両手を上げたので、握られた僕の片手も吊り上げられる。
みここが千菜を連れて前からやってくる。千菜はみここの背中に隠れながらだった。
「座ろうか」
遥ちゃんに釣られて僕も運動場に座る。友理子とみここも座って千菜はモジモジと立ち尽くした。
僕のブルマの股間がこんもりと盛り上がって勃起していることを如実に知らせている。みんなそれを見ているはずなのにガン無視だ。
「千菜さんも座りなよー」
「…」
彼女はガチガチと震えてみここの後ろに腰を下ろした。相変わらず幽霊でも見るようにして僕のことを怖がっていた。
「昨日のテレビでさー、ニュース見ててぇ、お笑いコンビの人が女子校に侵入して制服盗んで捕まったってー。怖いねー」
ぺちゃぺちゃと喋り始める遥ちゃん。やがて手首から手が離される。僕は二人から解放されて自由だ。逃げようと思えばいつでも逃げられる。
しかし不思議と快感なのだ。
日常的に会話する女の子の輪に異物であるブルマを穿いた僕が混じっていることが。
一人興奮してブルマの前を膨らませて、先端からはガマン汁を垂らしている。見えているはずなのに彼女たちは僕をスルーしてくれている。
僕はこれから透明人間として生きようと思う。
あははうふふとみんな僕を無視して楽しそうに会話を続けた。
彼女たちの輪の中心に移動して、ブルマを太ももまでずらして寝そべった。
あぁ、変態の僕のおちんちんを見て、みんな!
普通に体育の授業を受けている女子たちの前で僕はこんなに勃起しているんだ。
突然の僕の行為にぎょっとする女子たち。しかし一度無視すると決め込んだので何も言われなかった。
彼女たちは僕が恥ずかしい思いをすることが罰になると思っているのだ。言わば仕返しではある。今まで覗かれて下着姿を見られたことに対しての罰として、僕の痴態を見てやることが僕にとっての不利益になると思っているわけだ。
確かに恥ずかしかった。
思春期のおちんちんは皮を被って見られたくないものだった。
だけど、僕はあらぬ方向に開眼してしまったのだ。
今まで一方的に見る側だったことの反動だろうか。ジロジロと情けない身体を見られることへの快感に酔い痴れてしまっていた。
僕は竿を握ってシコシコと擦りだした。ティーン男子のオナニー姿は見られてはいけないものだ。沽券に関わるのだから。だけど僕は透明人間。スプレーでマーキングされようと、粉が降りかかろうと見えてないことにしてくれているのだ。
こんなに恥ずかしい行為を悲鳴もあげず受け入れてくれたのだ。
しこしこっ
しこしこっ
千菜は背を向けて顔だけでチラチラとこちらを警戒しながら後ずさって離れていく。
みここは昨日何を食べただとか話に夢中だ。僕のほうをチラチラ見下しながらだけど、さすがにどっしり構えているね。
しこしこっ
しこしこっ
友理子は眉根を寄せながらも話を合わせている。思いの外、与えた罰が効果的でないことに気づいただろう。見られる恥ずかしさを味わえという罰は、意に反して見られることを歓びだした僕に引いているのかも知れない。
しこしこっ
しこしこっ
「もういや… 何コイツ…」
遥ちゃんは堪らず立ち上がる。嫌悪感を顕にして運動靴で僕の金玉を踏みつけた。
ぐりぐりっ
「やめなさいよっ 汚らわしい」
「うぅっあぁっ♡」
「このっ このぉっ」
運動靴が金玉を押し潰して様々な形に変形させる。
ぐにぃぐにゅう…
ぐりぐりっ
金玉を痛めつければ僕がやめると思ったのか。
その痛みは快感に変わっていた。
「ウッ!」
ドピュッ!
お腹の上に白濁液が飛び散った。金玉をムギュッとされたことでそれがスイッチになってしまったようだ。射精するところをみんなの前で見られちゃった…。みっともない恰好で恥ずかしいオナニーを見られて、挙句に射精する瞬間まで見られて…。
ビクビクッ
ビクンッ
僕は背を反らして幸福を感じていた。
「キャッ」
まさか射精するとは思わなかったのだろう。大好きな遥ちゃんの可愛い悲鳴が響いた。
「遥、どうしたの? は、は、反応したら負けよ…」
動揺する友理子。
「べ、別に… 私たちもミニバスケしよ。もう放っとこうよっ」
「そうね。もうずっと無視すればいいのよ…」
4人共ゲームを始めるらしい。
当然、僕は後をついていった。もう逃げる気なんてない。そうだ、現実から逃げちゃいけないんだ。辛いことがあっても目をそらしちゃいけないのさ。一緒にゲームを愉しめばいいんだ。わざとボールにぶつかってパスカットしたり、わざとコートに転がって踏まれたりするんだ。
そうして、みんなが僕を無視するんだ。
変態の僕を受け入れてくれるんだ。
透明人間として受け入れてくれたんだ。
こんなに恥ずかしいブルマ姿の僕をもっと見ておくれっ。
僕は絶頂の余韻に浸りながら、みんなの輪に向かって走っていくのだった。