「ふんっ 謝ったからって帳消しになると思うなよ」
美律はニカッと腕組みして僕を見下ろしていた。茉莉の拘束から解放された僕は、二人の女子に囲まれベッドの上でおちんちんを抑えて丸くなっている。
「エロいこと考えてるせんぱいが悪いんすよー?」
茉莉は僕より遥かに大人っぽく振る舞う。歳上の僕に向かって嘲るような目で見やがって…。
しかし僕は痛みでエッチな気分になって完全勃起させられ、ピクピクと小刻みに痙攣していた。おまけに無様に泣かされてひれ伏すなんて男の恥だ。
畜生っ畜生っ!
「なんか、顔赤くしてはぁはぁしてますね。キモいんですけど」
茉莉が冷徹な口調でバカにする。
「謝ったから今日のことはみんなに黙っててあげるよ、猛雄っ」美律(ほのり)は口の端を上げて悪戯っ子の目になる。「二度と姫乃に悪さしないでよ。逆らったらこんなんじゃ済まないからねっ」
僕は予感した。美律のあの目は『加虐』の喜びを見出した女子の目。つまり味を占めたのだ。男子をマウンティングするための極意のようなものを身につけた感じだった。
キーンコーンカーンコーン
「予鈴だ。行かなきゃ」
美律と茉莉は顔を見合わせた。休んでいる姫乃と違って二人は見舞いに来ていただけなのだ。教室に戻らなければならない。
「はよ行けっ…」
僕はぶつぶつと呟きつつ、そばに落ちていたタオルを腰に巻いた。今は身につけるものがこれしかない。
「なんか言った?」
「言ってねーよ、バカが」
「何その反抗的な態度。ぜんぜん反省してない」
「鐘が鳴ってんぞ。はよ行けったら、…ゴリラ女め」
「聞こえたよ!」
最後は小さく呟いたつもりだったが悪態はハッキリ声に出ていたようだ。
「そんなこと言う男子はこうしてあげるっ」
美律は細い腕をシュッと伸ばしてタオルを掴んでいた。
ぺろんっ
スカートでも捲るようにタオルがふわりと捲れ上がる。未だに勃起しているおちんちんがまたしても女子たちの目に映った。僕は両手でタオルを抑える。
「ひゃっ」
「あははっ。手で抑えてスカート捲られた女子みたいっ」
「それっ こっちも!」
茉莉が子供っぽい笑みで美律のマネをした。おかげで後ろから捲られて無防備なお尻が完全丸出しになった。
ぷりんっ
「きゃっっ」
頬を染めた姫乃がベッドから僕のお尻を直視していた。顔は両手で覆っているけど隙間から見ているのだ。
生っ白いプリッ尻(けつ)を見られた。僕は両手で後ろを抑え、お尻を隠す。
「くそっ…」
「そぅれっ」
また前から美律がタオルを捲り上げてきた。
ぺろんっ
恥ずかしい勃起おちんちんがまたしても女子たちの前でフリフリと横揺れしてしまった。
「くぉっ やめろっ」
僕は内股でまたタオルの前を抑える。だがまた茉莉に後ろを捲られてしまう。
く… こうなったら右手で前を、左手で後ろを抑える作戦に出るしかない。
「そう言えば小1のときあんた姫乃のスカート捲ってたよね! 思い出したっ」
「その頃から変態行為してたんですね、せんぱい?」
美律と茉莉は両手でタオルを掴んで捲ろうとしてくる。僕は「知らねえよっ」と言いながらクルクルとその場で回りながらなんとかタオルを抑えるしかできない。
「そろそろホントに行かなきゃ。あんた姫乃になんかしたら承知しないんだからねっ」
そう言うと美律はその場を離れた。合わせて茉莉も保健室の出口へと向かう。
「……ぁっ!☆? か、か、返せっ」
腰のタオルが解けていた。
保健室から出ていく美律と茉莉。美律の左手に白いタオルが見えた。
「せんせーい、そいつ見張っててくださいねー」
「くださいねー、じゃねー! か、か、返せー!」
気がつけば頭の先から爪先まで全裸だ。身につけるものがない。
たったった
美律が去っていく。
僕は躊躇しながらも保健室のドアのところまで追いかけた。さすがに廊下には出られないな。首だけ隙間から出して廊下を見る。なんと廊下を走っていくバカ女二人。廊下を走るなっと思いながら彼女たちの姿を目で追うと50メートル先に白いタオルが落ちていることに気づく。
美律のやつめ…。わざとあんなところに落としたのか…?
このままの恰好で廊下に出るのはかなり抵抗がある。取りにいけない…。
「せ、せ、せんせー」
焦った僕は小山先生に頼み込む。
「たったっタオルを! せんせー、タオルをっ…」
「いつまで遊んでいる? 早くその粗末なものを仕舞ってベッドで寝ていなさい」
小山先生は関心のない感じで仕事に集中しているようだ。僕らが騒いでいたのを遊びとしか思っていないらしい。
僕は再び廊下を見てみる。誰もいない…。
小山先生が助けてくれないのなら、一か八か自分で取りに行くしかないな。
「先生っ、ちょ、タオルすぐそこに落ちてるんで取りに行っていいっすか?」
「わいせつ物陳列もほどほどにしておけよ?」
「はいいっ」
僕はキョロキョロと辺りを見回しながら全裸で廊下に出る。ペタペタと歩くとひんやりして気持ちいい。
廊下という空間が新鮮に感じられる。全裸で歩く背徳感が堪らない。ドキドキとしながら僕は先タオルが落ちているところへ向かって歩いていった。
あの角を誰も曲がってくるなよ……。
タオルまであと30メートル。