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水泳部の合宿で(3)

「出しな」
 少女の鋭い目つきがカズを睨んだ。カズは何とか逃げ道はないものかと逡巡したが、成実がまた腕を振り上げたので、首を引っ込めてポケットの中のパンティを取り出した。
「信じられない」
 夏子がカズの手から素早くパンティを奪い返し、成実に向かって一つ頷いた。間違いなく自分のものだと確信を込めた頷きだ。
「こいつどうする?」
「ぐっぅ」
 成実が腕を振り上げたままカズの胸ぐらをさらに押し上げる。
「先輩たち呼んでこようっ」
「そうだね」
 夏子と成実が頷きあった。とその2人の背後、廊下から人の話し声が聞こえてくる。
「智子ー。早くーこっちだよー」
「ここね? 中にいるのね?」
 複数の足音と共に誰かが更衣室に入ってきた。
「あ、先輩たちだっ」
 現れたのはカズの1つ下の後輩である智子、そして先導するのはあの金髪の少女だった。
「二人とも大丈夫? 何にもされてない?」
 智子は足早に夏子と成実の元へ向かった。急いで駆けつけたという表情だ。水着姿のままだった。まだ練習中の筈なのに更衣室に戻ってくるのが早すぎるのではないかとカズは心の中で文句を言う。
「成実さん手を離して…」
 手前まで来て智子はハッとした表情をする。カズのことに気づいたようだ。
「ほらっこの人ー。変態だよー」
 間に割って入る金髪の少女。
「チーちゃん。知ってるの?こいつ?」
 チーと呼ばれた金髪の少女は屈託なく「うん!」と返事する。カズはこれはマズいと顔をしかめた。この少女はカズの一連の弱みを握っている。きっと智子に報告したのだろう。だから智子が飛んできたのだ。
「二人とも離れて。その人とても危険な人だから!」
 カズは智子に危険な人だと言われてショックを受ける。一時期だけ水泳部だったカズと顔見知りなのだ。まさか後輩に危険人物扱いを受けるとは…。優しい良き先輩を演じていたはずなのに…。
 成実は「ふんっ」と侮蔑の目をカズに向けながら手を離す。夏子は素直にキャプテンである智子に従った。カズを取り囲むように少女たちがカズを睨む。
「キャプテンこいつどうします? 警察にでも連絡しますか?」
 成実が強めの口調で智子に問いかける。
「うん…。いや待って。まずは…先生に言わなきゃ」
「つーほーしよー」
「キャプテン、私下着盗られました」
「えっ。ホントに。じゃあ…やっぱり警察が先…」
「いや、キャプテン。私たちでこの人懲らしめましょう」
 夏子が肩を怒らせる。
「え、でも…」
「あたしも賛成。こういう奴は警察行っても反省なんてしませんよ」
「よーしお仕置きだねー」
 智子は終始困ったという顔をしていた。
「よし決まり決まり。やっぱアレですよねー、あたしたちの着替えを使っていやらしいことしようとしてたんだから、恥ずかしい思いしてもらいましょうよ」
 何かを企むようにニヤついた成実。智子は成実に問われてもどう返していいか解らない。
「そうよねっ。どうせエッチなことしようとしてたんだから。ちょっとあなた、今ここで何しようとしてたかやってみなさいよ」
 どうやら刑罰が決まったようだ。カズは飲み込まれるような展開に頭が働かないでいた。なんでこんなことになったんだ。何をしろと言われたのかも解らない。
「…え…? あの…そろそろ帰ってもいいですか…」
「は? あなた人の話聞いてました?」
「お前警察突き出されたいのか!?」
「のかー?」
 状況が解っているのかいないのか金髪のチーちゃんが囃し立てる。ハーフだろうか、日本育ちの外国人なのかカズはそんなどうでもいいことを考えた。
「え? えぇ?」
 カズは順調に人生のステップを歩んでいた筈の自分が警察沙汰になるなんて想像つかないでいた。
「脱げって言ってんだよ」
「え? なんで!?」
「なんでじゃない! この下着ドロボー」
 成実が少し苛ついた口調でカズを責める。このままだとまたビンタを喰らわされるだろう。
「あ、いや… ちょっとした出来心じゃないか… そんな怒ることじゃないと思う…」
「あん!?」
「信じられない…。自分がどんなことをしたのか全然理解してないわこの人」
「口でちゃんと言わないと解らないバカなんだな。全裸になってオナニーしろって言ってんだ! それで許してやるって言ってんだよ!」
「な…」
 カズはようやく事態が飲み込めてきた。そうだポケットに下着を入れたのは自分なのだ。チーちゃんは「ヤレヤレー」と野次を飛ばしている。智子はオロオロと口を挟めないでいた。
「警察呼ばれたくなかったら早くしろよ」
「待ってくれ…。ボクはイヤイヤやらされてるだけなんだっ」
「は? だから?」
「だ、だから主犯は別にいてー…あー」
「だから自分は悪くないとでも言いたいんですか?」
「そ、そう。そう。悪くないんだ」
「必死だなお前」
 成実が哀れみの目を向けていた。言い逃れもできなさそうな雰囲気だ。
「最低な人間ですね」
「く…」
 カズは何も言い返せなかった。悪友たちとの悪ノリ対決の罰ゲームで水泳部の盗撮をすることになったが確かに友人を売るのは最低だと思った。
「ほら早くしろよ」
 仕方がないとポロシャツに手をかける。おずおずと脱ぎ捨てる。タンクトップ一枚になった。下級生たちの前でストリップショーをするハメになるとは。
「こ、これで…勘弁してくれ…ないか?」
「あ? 何?」
「だから…」
「キャプテン、やっぱり警察に通報しましょう」
「ちょ、ちょっと。ちょちょ…」
 カズは急いでタンクトップも脱ぎ去った。彼の上半身が露わになる。
「ほ、ほ、ほ、ほら」
 男の上半身の裸を見ても夏子たちは動じない。水泳部なら当然なのか。オロオロとしているのは智子だけだった。チーちゃんに至っては興味津々といった表情だ。
「全裸って言った筈ですけど?」
 上半身だけで許してもらえるかもと思っていたが、カズは観念した。ズボンに手をかける。カチャリとベルトを外し、ジッパーを下ろす。静かにそれを見守る競泳水着姿の女子たち。それがエロスを掻き立てる要因になったのかも知れない。ズボンを下ろし足首から引き抜くと、とたんに恥ずかしさが急上昇した。普段は見せない自らの下着姿を異性の前に晒している。カズは両手で股間の辺りを覆った。
「うわ…」
 夏子が顔をしかめる。汚いものを見たという感想のようだ。
「ブリーフて」
 ふっと成実が鼻で嘲笑った。確かにいい歳なのに白のブリーフを履いている歳上の男は格好良くはないだろう。
「も、もう許してあげてもいいんじゃ…」
 智子だけは顔を赤らめているが、その言葉には誰も頷かなかった。
「パンティみたーい」
 カズの脂肪の付いた身体がブリーフを必要以上に小さく見せていた。チーちゃんがブリーフを指さしてケラケラと笑う。
「てかさぁー何でお前勃ってんの?」
 成実の言葉にクスリと夏子が嘲笑った。ブリーフの股間が膨らんでいたのだ。どうして自分のおちんちんがそうなっているのか答えられない。自分でも解らないのだ。何もしていないのにおちんちんは半勃ちだった。

コメント

  1. 匿名 より:

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    自分としては理不尽ないじめよりも、理由あってのお仕置きの方が物語の引っかかりが少なく自然に読めます。
    前者のがいいよーって趣味の方がいるのも分かりますが(´∀`)

  2. 山田厨房 より:

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    > 自分としては理不尽ないじめよりも、理由あってのお仕置きの方が物語の引っかかりが少なく自然に読めます。
    > 前者のがいいよーって趣味の方がいるのも分かりますが(´∀`)
    女子が怒る理由は確かにこのブログにおいて重要なポイントですね。理不尽にならないよう気をつけてはいるのですが…。
    エロシーンを盛りこもうとして理由付けが残念だと共感を得られないですね。
    貴重なご意見ありがとう。

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