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Killing Park Ⅱ ブランコ遊戯(1)

 これが罪の代償なのか? 健一は息を切らせて走り続けた。こんな筈じゃなかった。一人で行動しているところを彼女たちに狙われたのだ。いきなり後ろから襲われて殴る蹴るの暴行を受けた。健一は隙を見て何とか抜けだしてきたのだが追いつかれるのも時間の問題だ。
 気がつけばそこは公園だった。
「観念しろよぉオラ!」
「もう逃げられねーよ」
 鼠をいたぶる猫のように無邪気で残忍な目をした彼女たちは、じわりじわりと健一に詰め寄っていく。襲ってきたのは4人の女子だ。身体は小さい癖に威圧感を持って健一を追ってくる六実。喧嘩の腕は健一より強いだろう。両サイドに回り込んだのは背の高い稲葉とラガーマンのような身体つきの長田。陸上部所属らしく足で健一の逃げ道を塞ぐ倉見。完璧なフォーメーションで取り囲まれている。
「六実ぃ、こいつ弱すぎるよ?」
 長身の稲葉が肩を回しながら近付いてくる。バスケかバレーボールでもやっていそうだ。
「くっ」
 そのとき健一はデジャヴを感じた。以前にも一度こんなことがあったような気がした。いや気のせいだろう…。健一は稲葉に向かっていく。彼女なら突破口が開けると判断したのだ。稲葉は他の女子に比べれば動きが鈍い方だろう。ちょっとフェイントでもかけてやれば軽く逃げられると思っていた。だがフェイントを仕掛けて成功したと思った矢先だ。反射神経のある稲葉はすばやく足を出して健一の足に引っ掛けた。リーチを活かした攻撃だ。
「うっ!」
 健一はボールのように転がった。倒されるのは想定外だったが、すばやく身体を起こして脱出を試みる。
 しかしいつの間にか六実が腕組みをして健一の前に立ちはだかっていた。健一は構わず六実に向かっていく。飛び蹴りでも食らわしてやれと健一は本気の蹴りを繰り出した。女子に暴力を振るう日が来ることになろうとは…。健一は容赦するつもりなどない。六実の頼みで他の三人は動いているようだからコイツさえ倒せば…。
 六実はふわりと健一の体を躱し、回し蹴りを放った。それが見事に決まって健一は呻き声とともに地面にひれ伏した。
「バカじゃないの?」
 六実はすかさず健一の腕を捻り上げる。
「いててててっ!」
「弟があんたにいじめられたって泣いてた。たっぷりお仕置きしてやるから」
 そう言うと六実は一層力を込めていく。細い腕なのに何という力だ。逃げ出そうと藻掻くが簡単には脱出できそうにない。骨が軋む音が虚しく響く。健一は負けるはずがないと思っていた女子に力負けしているその事実に多大なショックを受けた。
「今日はそうだな… あれで遊ぼうか?」
 六実が指さしたのはブランコだった。健一は引き摺られるようにしてブランコのところへ連れて行かれた。そのブランコで遊んでいた二人の女の子が只ならぬ殺気を感じたのか、その場を離れていく。
「大人しく歩けよ」
「暴れるなお前!」
 健一は途中、きるだけ暴れたわけだが、両腕と両足を稲葉・長田コンビに抱えられて抵抗むなしく捕らえられてしまった。
「長田、こいつ大人しくさせてくれる?」
 2基のブランコが揺れているその間に放り出された。健一は両手両足が自由になった途端に逃げ出す体勢をとる。しかし長田に学生服を掴まれたままで思うように動けなかった。それどころか長田に簡単に引き倒されてマウントポジジョンを取られてしまった。上からパンチの雨が降ってきた。ゴッ!ゴッ!と鈍い音があたりに響く。
「うっ!クッ!!ちくしょー!!!」
 みるみる健一の顔が腫れていく。手をバタバタさせながら防御する。
「喧嘩強いって噂ウソなのかな~?」
 手持ち無沙汰なのか、すぐ隣で倉見がブランコで遊び始めた。
「オラ!オラ!」
 長田はニヤニヤと笑いながら拳を振り下ろす。健一は腕を振り回しながら防いで、二度三度と下からの攻撃を試みた。だが腰の入っていないパンチなど長田は物ともせず健一の防壁の間を縫ってパンチを落としてくる。
 男と喧嘩をしてもこんなに一方的にやられるなんて一度もなかったのに…。
 やがて健一は意識が遠のいていった。動かなくなった健一を見て長田は「やっと大人しくなったわ」と六実に報告をする。
「じゃ、脱がしちゃおうか」
「やった~」
 六実が言い放つと倉見が待ってましたとばかりに健一のズボンに飛びついた。長田が健一の制服のボタンを外しにかかり、稲葉が靴と靴下を脱がしてしまう。
「や…ぅめ…」
 健一は途切れ途切れの意識の中で何をされているのかを察知して声を上げた。
「弟に謝ってくれたら許してあげる」
 六実は健一の髪を掴んで左右に振った。健一は何をすることもできずただされるがままだ。女子たちの手によって手早くボクサーブリーフ一枚だけの格好となってしまった。

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