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修学旅行で(3)

 低学年の頃、水泳の授業でスクール水着に着替えるときに、おれは真っ先に全裸になるタイプだ。

 他の誰よりも早くフルチンになって女子に見せびらかすのが好きだった。

「きゃー」

「いやだもうっ」

 女子たちの悲鳴が心地よかったのだ。

 他の男子たちは笑ってくれて、俺は調子に乗って机の上で踊ったものだ。テレビのお笑い芸人が裸になって笑わせているのと同じこと。人気芸人になった気分で気持ちがいい。何人かの女子はクスクスと笑っていたし、顔を赤くして困ってる女子を見ると俺も面白かった。

 俺は成長して裸がこんなに恥ずかしいことなんだと初めて気づく。

 机の上で自発的に踊るのと違って、夜の道端でタオルを引っ張られて踊らされるのは屈辱的で惨めな感じがする。

 そして、ついにはタオルを盗られ、ぶりんとお尻を突き出して俺はヒザを着いていた。

 地べたに四つん這いになり、金玉の裏から尻の穴まで、後ろに居た女子たちに見られてしまった。

「きゃっ」

「やだっっ んもうっ!」

 中邑の表情が歪み、市河が怒ったような顔つきになる。

「ぷっはっ やっべー! あははっ」

 渓口が大口を開けて甲高い声を発し、お腹を抑える。全身を使って無邪気に笑っていた。

「あれえ? 草凪ぃ? 素っ裸じゃん。警察に捕まっちゃうよー?」

 笹木は腰に手をやってエロかっこよくポーズをとり、もう片方の手で俺のハンドタオルをひらひらと旗のように振っていた。

 腰を高く突き上げて、大股を開いていた俺は痴態を隠すべく、すぐさま立ち上がった。脱げたサンダルを履いて、両手は股間へ。だが後ろを気にして、やっぱり左手を後ろへ回し、お尻の割れ目を隠した。しかし前が手薄になって笹木と渓口の目が気になる。

 手のひらでカップをつくり、しっかりとおちんちんを包み込んだ。

「返せっ バカやろっ」

 俺は内股で腰を低くしながら声を荒げた。

「みんな大声 出さないでよっ。夜なんだから人が来るよ」

 中邑はとても常識的な優等生の意見を言う。

 俺たちのクラスは成人式で騒ぐやつや、居酒屋の前で道を塞いではしゃぐやつが嫌いだ。ああゆう駄目な大人になりたくないよねー、なんてホームルームで話したものだ。

 そんな嫌な大人になりかけていたので、みんなは笑いを堪えて静になる。

「返してやれよ」

 男子の一人がクククッと笑いながら笹木に進言した。

「しょーがないな」

 笹木が俺の前に来てハンドタオルを差し出す。それを受け取るためには再びどちらかの手を身体から離さなければいけない。笹木はそれを期待してニヤニヤしていた。渓口もその瞬間を見逃さまいと近寄ってくる。唇をすぼめて真顔に努めていた。

 俺は結局、後ろの美少女中邑にお尻を見られるのが嫌なので右手で取ることを選択する。笹木と渓口に見られるのは悔しいが、バカ女子なんだからと自分に言い聞かせた。犬や猫に見られるのと同じだと思うようにする。

 さっ

 素早くタオルを掴む。

 っと思ったら俺の手は空を切っていた。

「んあ?」

「へへへっ」

 笹木が闘牛士のようにヒラリとハンドタオルを引っ込めたのだ。お尻の後ろに隠される。俺はそれを追おうとしたが丸出しおちんちんを長く晒すのは恥ずかしい。

 とりあえず右手を股間に戻し、「返せっ このバカ」と文句を言うしかなかった。

 「ごめんごめん。ほら」と彼女は再び俺の前にタオルをチラつかせた。

 笹木の悪戯な笑みがまぶしい。薄着の上半身は肩や鎖骨、二の腕や胸のなだらかな谷間が見えてドキッとした。首を傾けてサイドポニテが揺れる。湯上がりのいい匂いがした。

 俺は目を逸らし、目のやり場を探す。ショートパンツから出てる健康的な太ももに目がいってしまう。女子の足って何か毛も生えてないしスベスベで気持ちが良さそうだ…。ショートパンツなんて下着とさして変わらない恰好じゃないか。ドキドキが大きくなって、もうおちんちんを見られるのは嫌だと思った。時間が経つにつれて恥ずかしさの度合いが増していった。

「くっ…」

「ごめんって。今度はホントに返すって」

 ニィッとした憎らしくも可愛らしい笑みが俺を追い詰めてくる。仕方ない。もう一度だけ、超神速でタオルを奪い取ろう。

 こんなもの居合と同じだ…。

 俺は強い…。

 男子と女子でどっちが優れていると思ってやがるんだ…。

 笹木が反応できないくらいのスピードとタイミングで取ってやる…。

 俺ならできる…。

 カッと目線を上げる!

 俺がウルトラハイパー神速で股間から手を離した瞬間だった。

「人が来るっ!」

 極めて潜めた声で誰かが発した。男子たちが駆け寄ってきて、中邑と市河も後ろから近づいてくる。

 見ると暗がりの向こうから人影がやってくるではないか。

「見られたら通報されちゃうよっ」

 渓口が慌てた珍しく様子で俺の真横に立った。こいつ、こんなに背が低かったんだなと思う。

「壁をつくらなきゃ」

 市河が提案して中邑の手を引いた。男子たちも「やべっ」とか言いながら俺の周りに集まる。俺は笹木に胸を押されて雑居ビルの外壁にまで追いやられる。

「みんなで守ってあげようよっ」

 中邑の涼やかな声が俺に降り注がれる。目を大きく開けて焦ってる感じの中邑は可憐で守ってやりたくなるな。キモい怪物に追われるパニック映画のヒロインのようで、なんかエロい。

 セリフ的には俺が守られるみたいだが、か弱い女の子を守ってやるんだと俺はポーッとしていた。

 ちなみに俺の威信をかけた神速は、笹木にあっさり手を引っ込められたんだけどな。

 

「あっ、向こうからも人が来るわ」

 市河はメガネをクイクイと上げながら知らせる。

「まずいよっ」

 渓口がオロオロとする。

 中邑が俺の右腕を掴み、渓口が左腕を掴む。そのまま引かれて壁に押し付けられる。市河と笹木が俺の前に覆い塞がった。4人の壁が俺を世間から隠す。

 むんずっ

 笹木の細い指がおちんちんに絡んだ。

「ゥッ」

 ハンドタオルを押し充ててきたのだ。金玉を下から包み込む感じでキュッと締め付けた。空いている左手も手伝って上から覆ってくる。竿のほうも隠さなきゃとタオルの端を持って壁に押し付けるようにしてきた。


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