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全裸キャンプで(4)

 キャンプ一日目の夜は定番のカレーをつくる。

 ありきたりなイベントだけど女子の手づくり料理を味わえるのなら定番も悪くない。そう思っていた。力仕事は男子がやったんだから、料理については女子に任せればいい。

 今どき古い考え方だけど、料理というものは女にやらせるに限る。

「ちょっと。都築っ。ボーッとしてないでニンジンの皮剥いてよ」

「えっ… ぅ… うん」

 しかしまあ、これくらいなら…。僕は早川からニンジンを受け取る。

 …男でも料理人という仕事はあるからね。全部が全部を女子に任せるというわけじゃない…。

「ちょっと男子! 遊んでないで火を起こしてっ」

 早川は水遊びしていた5班の男子たちを呼んでいた。テキパキと指示をするんだな。女子としては生意気だけど、颯爽と指示を飛ばす姿は惚れ惚れしてしまった。

「もうっ 男子ってそういうのヘタクソね。ニンジンの大きさが全部違うし」

 早川はそう言いながらチェックするだけで、自分は先生のように見て回るだけだ。ハンゴウスイサンも口で男子たちに指図しながら、結局 野菜は全部僕が切ることになった。

 ルーを溶かす分量や味見は歌方さんが担当する。

 おどおどしながら心配なほど危なっかしい手つきなのだが、結論から言えば味は良かった。早川と歌方さんは親友で、お互いのことはよく解っているようだった。煮込み中も早川は歌方さんに指示は出さない。信頼しきっているようだ。

「ねえ紙皿を出しといてよ!」

「あ、うんっ」

 僕がうろちょろしていると、すかさず早川から指示が飛んでくる。

「そうよ! 動きな! 男子!」

 小倉坂は何をやっていたのだろう。早川と一緒になって命令してくるけど、あいつだってずっと手伝ってなかったじゃないか。

「ホント男子って役立たずよねー」

 小倉坂が爆笑しながら僕ら男子をバカにしていた。くそっ。

 雨は激しさを増していた。

 鍾乳洞まで戻ってきた僕と早川は水気を手で振り払う。当然だけどバスタオルなんてないから。僕はずっと早川に背を向けていた。お尻は丸見えだけど、勃起おちんちんを見られてしまうよりはマシだ。

「気温下がってきたみたい。寒い」

「うん。今は動き回らないほうがいいね」

「まずいよ。ここで夜を明かすことになりそうじゃん」

 早川の声には焦りの色があった。強気な彼女も鉄砲水を目の当たりにしてからは何度も泣きそうになっていたんだ。どうにか励まさなきゃ。

「昨日食べたカレーおいしかったよね」

「は? こんなときになに言ってんの?」

「あ、ごめん…」

 二の句が継げない。気の利いたことを言おうとして裏目に出る。何がいけなかったんだろう。

「山の夜は夏でもヤバイんだよ…」

 鍾乳洞の中だからなのか、外よりもだいぶ寒く感じる。

「わかってるわ」

「あ、ごめん」

 僕は早川を安心させるどころか不安にさせるようなことばかり言ってしまうようだ。

 時間は刻々と過ぎていった。

 雨はやまないまま、辺りは暗くなっていく。

 お腹が減ってきたし、トイレだって行きたい。ここには電気も娯楽もないし、僕には着るものもない。

 鍾乳洞の入口に近いところで僕らは肩を並べて座っていた。冷たい岩場にお尻を直で付けるとひんやりして気持ちがいい。だけどずっと座っていると身体がどんどん冷えていった。

 それから勃起は治まっていた。なるべく早川を見ないように努め、体育座りで一点だけを見つめて過ごすしかなかった。

「ここで寝るしかなさそう…」

 早川は憔悴しきった様子でつぶやく。

「明日だよ、明日っ。朝になったらすぐに出よう。すぐに下りられるよ、こんな山」

「うん」

 気のない返事で、やっぱり僕は頼りにされていないようだ。そして「寒い…」と言って自分の身体を抱くようにして震えていた。

 ずっと思っていたことがある。凍えないようにするためには人間の体温でお互いを温め合うのが効果的だ。でも、この状態で抱き合うのはチキンの僕からは言い出しにくかった。

「…」

 でも凍えている早川をこのままにしておくなんて…。もしかしたら命に関わるかも知れないんだ。いや、でもどうかな…。

「ねぇ都築の手ってさ。温かかったよね」

「え? あ、手?」

 おちんちんのことだろうか。強引に引っ張ってくれて握られた陰茎のことを言っているようだ。

「夏でこんなに寒いの反則だよ。手だけでも握ってていい?」

「えっ… あぅへ?」

 おちんちんを握りたいだって!?

 いや…。

 僕はあまりに動揺してしまって何を考えているのだろう。想像だけでまた勃起が始まってきた。

「あっはっぐっ。いや、おっ! えっとはぐう! いやハグとか!あ、のほうがいいかもっ」

 声が裏返りながら抱き合うという単語をハグに変えて、多少ソフトに表現してみた。

「うん。あたしもそれ考えてた」

 見ると早川は耳を赤くしながら下を向いてつぶやくように言った。いつもの強気な彼女ではなかった。

「あ えっと! これは決してあのっ。体温の低下を避けるためのものでへ!」

 しかし、さすがに行動力があるのは早川だった。

 エロくないことを強調しようと言い訳をする僕を尻目に、早川は立ち上がるなり、僕の背中に手を回してきた。

「わかってるよ。そんなの…」

 見透かしたように早川は後ろから抱きついてくる。腕がお腹に回って、もう片手は胸の辺りに張り付いていた。

「おっおっ…」

 激しく動揺する僕に「もうっ。落ち着いてよ」と静かに抗議する早川。肩甲骨の辺りに早川の顔が充てられて、彼女の小さな胸がわずかに背中に感じられる。

 横目で見ると、早川は女の子座りをしていているのが確認できた。

 ムクムクッ

 早川の体温を感じていると、1秒程度で完勃起してしまった。

 おちんちんはギンギンに打ち震えていた。

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