「男子はお前で最後だな。向こうの鍾乳洞で脱いでこい。脱いだらこっちのほうに川があるから来い。裸の女子たちが待ってるからな」
植村先輩の指示で僕は鍾乳洞に向かった。
眩しい乳首と小麦色で小ぶりなおっぱいと別れるのは辛かったけど、これから早川や歌方のおっぱいもアソコも見ることができるのだと自分を言い聞かせた。
男子たちの計画は達成されつつある。
植村先輩のおっぱいを見れたことで、これならと期待値が上がってきたのだった。
実は全裸キャンプの真の発案者は望月流牙(もちづき りゅうが)という生徒なのだ。
紫村は同級生や下級生を問わず男子たちからは疎まれる存在だが、利用価値があると考える輩は多かった。望月はその中でも悪どくて、先輩を先輩とも思わないやつだ。「せんぱいの力でぇー、女どもを裸にしてやりましょーヨ!」と調子よく紫村に話を持ちかけていたことは、僕も知っている事実。
「女性陣だけを裸にするのはいただけないな。みんなで平等にであれば考えてやってもいい」
紫村は意外にも乗ってきた。
元々は3班の村主(すぐり)という、1年の癖におっぱいのでかい女子がターゲットである。望月が小学生時代から狙ったきた娘だ。望月は恋愛というより「せっくすしてやんよ!」とエッチな目的を持っていたようだ。
僕にはよく解らなかったが早川の裸が見れるなら… と流れに便乗することにした。
そしてキャンプの前に綿密に計画され、キャンプ場の外に鍾乳洞やきれいな小川があることも先輩たちからの情報で確認できていた。
僕は鍾乳洞に足を踏み入れる。
男子たちがたむろしていた。
「おせーよ!」
短髪でギラついた目の男が僕の姿を見るなり怒鳴った。彼が望月だ。
僕は植村のおっぱいを見た後だったのでジャージの前をモジモジさせながら歩いていた。その歩みは亀のように遅い。仲間の男子たちにだって勃起してるとバレるのは恥ずかしかったのだ。
「これで揃ったね。腰ミノを作っておいたからコレに着替えるといい」
紫村が奥から歩み寄ってくる。
男子たちは既に裸で、特製の腰ミノを身に着けていた。
緑色のビニール紐みたいな草を何本も垂れさせた、スカート状の着物。ヌーティストと言っても変態性嗜好を愉しむわけじゃない。紫村からすれば真に自然志向で原始の生活を説いているわけだ。本当に真っ裸でとアダルトビデオみたいなことを主張している望月とは対立していた。
しかし女子たちを説得するためにも変態の遊びではないことは強調したいところだ。そのための腰ミノである。それは望月も納得していた。
受け取って、わさわさと草の感触を確かめる。それだけで自然を感じてしまう。僕はみんなに背を向けてジャージを脱ぎ去った。腰ミノを身に着けてからパンツも脱ぐ。きれいに畳んで隅っこのほうにジャージを置いた。
それから勃起がバレないように腰を落としながらみんなのほうを向き直る。
3年のオリエンテーションリーダー紫村が「行こうか」と号令をかける。細マッチョの肉体に草かんむりや木の実のネックレスなど、彼だけ特別感のある恰好だ。
「グズグズすんな!」
ギラついた望月が外に出ていく。同じ5班のハミ出し者だ。
「やっぱり恥ずかしいなぁ」
メガネをかけた男が後に続く。彼は金田橙児(かねだ とうじ)。ひょろひょろして弱々しい体格だが巨根らしい。一応、5班のリーダーだ。
「裸が待ってるねー。楽しみだわー」
ウキウキとしているのは吉村光(よしむら ひかり)というクラス一の色魔だ。元々は1班だったのに今回の噂を聞きつけトレードで5班に入ってきたやつ。不届き者である。
「ぶふふ」
不気味に笑っている太った男は清水誠太(しみず せいた)。3班の男子でむっつりスケベの太ったやつだ。
「あれ? 他の3班のやつらは?」
僕は清水以外の3班の姿が見えないことに気づいた。あと3人はいるはずだ。
「ああ、怖気づいたのさ。ヘタレなやつらよ」
清水は「ぶふふ」と他のメンバーを貶した。確かに興味なさそうな顔をしていた僕の親友・和真と他二人は気弱な男子だった。直前で参加を取り止めたらしい。
裸の男子は、僕を含めて6人か。
草を掻き分けて小川に向かう。
裸で歩くのは気持ちが良かった。山の中は拓けた場所と木々が密集した場所、人間の侵入を拒む厳しい自然が広がっていた。虫や小動物がいるのが気になる。
小川のせせらぎが聞こえた。
「お、あそこだ」
歩いていくと緩やかな坂になった地形で川幅5メートルくらいの小川が見えてくる。遥か上流から流れてくる透明の水が気持ちよさそうだ。このままキャンプ場のほうまで続いているのだろう。水深はせいぜいヒザまでみたい。水遊びするにはちょうどいい。
「ここで間違いないんだよな」
望月が辺りをキョロキョロと探し回る。女子を早く見たいのだろう。
「やばいー。ドキドキしてきたー」
甘い声で吉村が興奮している。
「全裸…」
デブの清水が目を血走らせていた。
僕は僕で腰を引いた状態で早川の姿を捜してみる。
「はっはっはっ 慌てるな。君たち。彼女たちは逃げないよ」
一人、余裕の態度で手を広げ、笑みを浮かべる気持ち悪い紫村。
「でも、気配もないじゃねーすか!」
「ほんとにここで合ってるんですかねー」
確かに声も聞こえてこないし人がここに居た形跡もない。せせらぎの音が静かに響いてくるだけだ。鳥の鳴き声が上空で響く。風に揺れる木々。大自然の中で穏やかな時間が流れる。
周りには興奮した裸の男たち。
なんだかおかしい。
…見られている?
木々の向こうから視線を感じた気がした。
女子たちは一方的に僕らを見ているんじゃないか?
気づいたときはもう遅かった。
「やっちゃえー!!」
女子の声だ。
木々の後ろに隠れていた女子たちが号令に合わせて一斉に飛び出してきた。
「!!??」
男子たちは振り向いて現れた女子のほうを注目する。彼女たちは水着姿だった。
おっぱいや腰ミノの隙間から割れ目を見ようと思っていた僕らは当てが外れる。
「え? え??」
何がなんだか解らなかった。満面の笑みを浮かべた早川が、たまたま一番近くに居た僕のほうに向かってきた。
「それえっ」
彼女は楽しそうに、まるで始めから計画されていたかのように僕の腰ミノをむんずと掴むと引っ張った。僕は慌てて腰ミノを掴み返すが油断しきっていたので挙動が遅れる。
ぶちっ
わさっと取り去られる。
勃起したおちんちんが、ぶらんぶらんぶらーん! と飛び出す。
「きゃはっ やった!」
片手で腰ミノを掲げて、早川は勝ち名乗りを揚げる。童心に帰ったかのような眩しい笑顔だった。改めて惚れ直すほどに弾けた笑顔だった。
しかし、びんよよよーんと揺れる勃起おちんちんを見て少しハッと驚く。まさか勃起しているとは思っていなかったらしい。
「あうっ」
僕は急速に顔を真っ赤に蒸気させ、片手で勃起を隠しながら腰ミノに手を伸ばした。
「きゃっ」
可愛らしく奏でる悲鳴。早川はもう片方の手に装備していた水鉄砲を速射した。
ぴゅー! と勢い良く僕の顔に浴びせられて熱くなった顔が冷やされる。
じゅう~と水分が蒸発するような気がした。
「うわあん」
運動神経の悪い僕はバランスを崩してすてーんと尻餅を着いてしまった。両手をついて足を広げてしまったので勃起おちんちんが丸見えだ。
「わ」
早川は目を見開いて僕の失態を心配し覗き込む。まさかすっ転ぶとは… という驚きの表情だった。そして勃起おちんちんを見てしまったという複雑な表情。
僕たちは騙された。
紫村を利用して女子の裸を見ようとしたけど、逆にドッキリを仕掛けられていたのだ。
期待していた裸はそこにはなく、可愛らしい水着女子が居るだけだった。