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女子のお誕生会で(3)

 ぴんぽーんと立て続けに呼び鈴が鳴り、中邑のお誕生日会に招かれた友だちが次々にやってきた。
 笹木と渓口の後から来たのは杁山、喜多野、伊駒の3人だ。

「…どうして草凪が居るの?」
 杁山は同じクラスの目立たない女子。背が小さくて丸顔の大人しい性格だ。不審感いっぱいの目で俺を牽制する。近くの笹木に自分の疑問をぶつけていた。

「さぁ〜? 好きなんじゃないの? 中邑さんのこと」
 返ってきた答えは俺を貶めるものだった。笹木はニヤニヤとしている。
「ちがっ…」
「えー! マジで〜!?」
 隣のクラスの喜多野と伊駒だ。俺が否定する声をかき消して二人して声を揃えて盛り上がった。

「だってねアイツ…。知ってる? 修学旅行のとき。中邑さんにぃ…」
「ワー! うるせえ!」
 会話を邪魔してやる。過去のことを引き合いに出してくるんじゃない!

「うふふっ やだっ」
「うそぉ!? ちんちん丸出しで…?」
「ふんふん、それでそれで?」
 部屋の隅に鎮座する俺を無視して女子どもは井戸端会議を始めていた。笹木がニヤニヤと小声で過去の出来事を喋り、渓口が「小さかったよ。クスッ」とか「勃起してたし」などと合いの手を入れる。
「その後、先生に叱られてぇ…」

「くっそ! やめろやめろっっ!」

「ぅわー… お尻を?」
「この歳でお仕置きって…」
 事情を知らない喜多野と伊駒がドン引きしていた。伊駒は中邑に次ぐ美少女。清楚で純粋な彼女になんて下品な情報を流してくれるんだ。許すまじ笹木!


 ぴんぽーんと鳴り、さらに女子が増えた。
 まずいな。早く帰ったほうがいい…。
 隣のクラスの西濃。存在感のない暗い子で、友だちも連れず単独でやってきたようだった。彼女は怪訝な目で俺を見る。
「いらっしゃい。西濃さん」
「こんにちは」

 俺はこっそり女子の輪を避けてリビングを出た。そのまま玄関に向かう。
 だがその直後に、またぴんぽーんと鳴った。
「!?」
 玄関の前まで来て、外に出るに出られなくなった俺。背後から中邑がやってきた。
「何やってんの 草凪? トイレならあっちだよ」
 中邑は俺を避けて通り、玄関を開けて新たな客を招き入れる。

「こんにちは、中邑さん」
「…え、なんで草凪が出迎えてるの?」
 柏城と小島だった。

 同じクラスの綺麗ど
ころ2名である。垢抜けて明るい二人組だ。かなりびっくりした様子で「なんで草凪!?」と驚いている。

「うっそー。中邑ちゃんのことを!?」
「だからって… 男子一人で来る?」
 後から来たこの二人にも笹木があることないこと吹聴していく。西濃が後ろでそれを聞きながら不安そうな顔で俺を見ていた。結局、俺は追及される形でリビングに押し戻される。

 さらにさらにこの直後、ぴんぽーんと3名が現れた。
 隣の隣のクラスからも呼んでいたのだ。砂藤に守谷、最後に渡部である。
 中邑の交遊の広さが判明していく。

「むう」
 ひょこっと渡部の後ろから6歳くらいの女児が顔を出した。むっすとした表情で連れて来られた感が凄い。渡部の妹らしい。余計なのを連れてきやがって…。
 最後にやってきたこの4名にも俺が中邑を好きなことを暴露されてしまう。すべて笹木が面白がって話したのだ。「告白しに来た」などと事実ではないことまで解説を加えていた。

「な…」
 壮観だ。
 お母さんとお姉さんの二人を除いて、14名の少女が勢揃いしてしまった。完全に帰るタイミングを逃した。
 ワイワイガヤガヤと見渡す限り女子の領域だ。男子禁制、秘密の花園。男子が覗いてはいけない世界である。
「ぉぉぅ…」
 俺は萎縮して動けなくなっていた。

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