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女子のお誕生会で(6)

「きゃーっ」
 黄色い悲鳴が方々で上がる。

 けっ。
 まだTシャツを脱いだだけなのに、この程度で悲鳴とは。女というやつはピーチクパーク煩いったらないぜ。

 俺はカーテンの全開になったベランダを背にして上半身裸になった。窓も開いているので涼しい風も入ってくる。
 Tシャツを脱ぐときに例の変な帽子が邪魔だったので一緒に脱げたわけだが、もう一度ちゃんと被り直した。ただ全裸になるよりもこういうアイテムを身に付けていたほうが衣装っぽくていい。蝶ネクタイとHAPPYとデザインされたメガネもあるので、これでただの素っ裸ではなくなる。れっきとした舞台衣装なのだ。

「やだ、なんか乳首勃ってる…」

 誰かが小声で誰かに耳打ちをしている。構うもんか。何も恥ずかしいことなんてない。ハーフパンツに手をかけてボタンを外し、一気に下ろす。
「きゃーっ」
「いやだっ」
 ブリーフ姿の俺を見て女子たちはより一層、声を上げた。
 おちんちんが少しムクリと反応する。

「本当に脱いでるしっ」と小島。
「マジでやるんだっ」と渡部姉。

 ムクムク…。

「なんか動いてない?」と山元が市河に聞いていた。

 見られてる…。
 ムクムクムク…。

 俺は清々しい気持ちで足でハーフパンツを蹴飛ばした。床に置いておいた直径15センチの紙皿を拾い上げる。軽く股間に充てて半勃起のおちんちんをさり気なく隠した。
 何だろう、この気持ち…。背を反らし、胸を張った。足も肩幅に開いて威風堂々と下着姿を見せてやった。紙皿で勃起し始めているのは隠しているが…。これは女子たちが恥ずかしいだろうから隠してやっているだけだ。
 慌てているのはむしろ女どものほうなのだ。

「もうっ」
 中邑なんか頬を染めて目線を逸らしているじゃないか。俺が堂々と澄ました顔で裸体を向けてやったので彼女は恥ずかしがっている。

「いいぞいいぞっ」
 しかし笹木はゆったり床に腰を下ろして笑っていた。渓口も足をバタつかせ、手を叩いて笑っている。中邑と違って女らしさの欠片もない。

 女子の反応は様々だ。
 中邑の両隣に座る西濃と伊駒も顔を赤くしている。恥じらいがあって大変よろしい。
 伊駒の隣にちょこんと座る渡部妹は小首を傾げ、何が起きているのか解っていないようだった。こいつは裸芸の何がおもしろいのかも解らないだろうな。

 ショーを単純に楽しんでいるのは笹木を筆頭に、渓口、山元、柏城、喜多野、砂藤、渡部だ。彼女たちはノリが良く、手を叩き喝采を上げ、大いに笑ってくれた。せっかく芸をやるのだからコイツらの反応が一番正しい。
 「うわぁ、よくやるよ…」と呆れた様子なのは小島。
 そして「低能ね」といった表情で俺を蔑むのは市河。
 じぃ〜っと何を考えているのか解らない感じで見てくるのはぽっちゃり杁山。
 最後に目を見開いて鼻の穴を広げている守谷。

 杁山と守谷はちょっと耳が赤くて、目は充血している。熱っぽい視線で興味しんしんといった様子だ。

「どうした? 早く脱げよっ」
 身も蓋もデリカシーもない喜多野はアハハと笑いながら野次を飛ばす。女子の反応を見ていた俺はふと我に返った。ハーフパンツを脱いでからブリーフを脱ぐまでの時間が長いと、まるで俺が恥ずかしがっているみたいだ。そんなことがあるわけがない。男はいつだって堂々としているものだ。俺は躊躇なくブリーフを下ろしてやる所存である。

「靴下もちゃんと脱げよ」
「っ!!?」
 ブリーフに手をかけたところでまた喜多野が声を上げる。群衆の中に笑いが生じていた。こういうのは靴下を脱いでからブリーフじゃないのか? という突っ込みだ。
 俺が恥ずかしさのあまり脱ぐ順番を間違えたんじゃないのかという空気だった。脱ぐ順番などどっちでもいいだろう!
 俺は敢えて間違ったんじゃないと示すために紙皿を股間に充てながら先にブリーフを脱ぐ。

 片手でブリーフの両サイドを少しずつ摺り下ろして膝まで下ろしてやった。大丈夫だ。股間は紙皿でしっかりガードしてある。

 女子たちの空気感が変わった。

 息を呑むというのか、笑いが引っ込んで「おぉ」という感心が高まったようだ。笹木、渓口、砂藤だけはまだショーを楽しむノリで手を叩いて笑っていた。しかし「本当に全裸になるのかよ」と表情が一変したのは喜多野だ。俺が脱げずに泣き出してしまうのを期待でもしていたのだろうか。勇気のあるやつだと喜多野は俺のことを認めたようだ。
 柏木と渡部姉はショーを楽しんでいたが、少し恥じらいが上回ってきた様子で頬を染めて目をパチクリとさせる。マジックショーで『人体切断』にタネがあると解っていても「ほんとに大丈夫かな?」と心配するような感じだろうか。

 中邑は両手で顔を覆うようにして口元を隠した。顔が真っ赤で身体を引き気味にしている。西濃は下を向いて、伊駒は甲斐甲斐しく中邑を守るように身を寄せていた。
 相変わらずぽけーっとした様子の渡部妹。

「いやだっ もうっ」
 中邑は誰よりも恥ずかしがっている。お母さんとお姉さんの前だから殊更なのかも知れない。修学旅行のときは夜だったし状況が状況だからな。
 チラチラと横目で俺の股間を見てくる。

 ムクムク。
 ムックゥ…。
 半勃起だったおちんちんはバキバキに硬くなっていった。紙皿を押し退けようとしているのかと疑うほどに俺の押さえつける力に反発してくる。
 紙皿の上からでも硬さが解るほどにカチンカチンだ。
 大丈夫だ。女子たちにはバレていない。

 あ… れ…?
 でも少し… 恥ずかしくなってきた… ぞ…?

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