俺は素っ裸で大開脚をしていた。カッチカチに勃起したままだ。
「出てるじゃないの! もう!」
怒った市河の声だった。無言で見てると思ったらここぞとばかりに批難してくる。市河はクソ真面目だからエッチな芸は許しませんという立ち位置なんだろうな。
「やだー! おちんちん!」渓口が愉しそうに叫んだ。
「いやーん もう!」伊駒は全速力で顔を背けた。
「ふぇぅ…っ」西濃は目を閉じて、本当に嫌そうに斜め下を向いた。
「てめー! なに失敗こいてんだよ!」と頬を染めて怒る喜多野。
悲鳴はすぐに笑い声に変わっていく。
「あははっ 小さーい!」待ち構えていたかのように笑う笹木。用意していたかのようなセリフだ。
「だめだっ 受ける〜っ!」腹を抱えて笑う砂藤。
ギャル二人組は臆することなく俺に近づいてきた。
俺は我に返って露出してぶらんぶらんしているおちんちんを両手で隠した。
「ほら、立ちなさいよ」
「立たせてあげるって」
両サイドから笹木と砂藤が俺の腕を抱えた。この二人は始めからこうするのが目的だったのか!?
「やめろや!」
「手伝ってあげるんでしょ。しっかり立って! ほらっ」
転んだ男子が起き上がるのを手伝う優しい女子。ではない。両腕を持って行かれて抱き込まれてしまった。両手の自由が無理やり奪われる。股間ががら空きだ。俺はむくっと上体を起こされる。
「きゃあん! なによそれ! もうっ」
渡部姉が顔を顰めた。勃起したおちんちんなど初めて見たに違いない。
「見るな! くそっ どっか行け! 出てけっ!」
俺は体操座りのように膝を曲げて足をぴったり閉じた。かかとで股間を抑えて隠れるように工夫する。
「なによ! ずっと大きくしてたの!?」
山元が騙されたというような顔をして怒ってきた。
悲鳴を上げて引いている女子グループをよそに、怒る女子グループは立ち上がって近づいてきた。笹木と砂藤が先陣を切っているので来やすかったのだろう。
山元、市河、喜多野が俺に前にやってきた。
「ちょっと、どういうことなの!? 説明しなよ!」
「ほんとそうだわ。はしたない!」
「返答いかんによっては殺すぞ!」
彼女たちは親友に変なものを見せたことに対する断罪と正義感によって突き動かされていた。楽しい芸と見せかけて、女子たちの反応を見て興奮して勃起してましたなんて、女子たちからすれば裏切られたということになるのか。
「おら立てっ」
喜多野に喉輪をされながら俺は体操座りの状態から強引に立たされた。
「んだよっ くっそ! 触んな! 離せ! バカ! ブスども! 見るなっ やめろ! こっから出てけ!」
俺は泣きそうになってありったけの言葉で抵抗した。
立ってしまって勃ってしまったおちんちんが隠せない。片足を上げて何とか隠そうとするが完璧には隠せなかった。屈もうとして、くの字に身体を曲げているのだが、「ちゃんと立て」と怒られて腕を引き上げられる。俺はソファーのほうへ連れて行かれた。
観客席に飛び込むような形で俺はみんなの前に立った。膝で一生懸命、モジモジとおちんちんを隠す。しかし14人の視線は一つ遮っても全部は無理だ。あらゆる角度からおちんちんを見られている。
「見るんじゃねー!! ばっきゃーろー!!」
俺はマジギレして激しく怒ってみせた。しかしカマキリ程度の虫がカマを広げて威嚇しても人間様はビビらない。女子たちは俺の威嚇に少しもビビることなく「どういうことなの!?」とぎゃーぎゃー問い詰めてきた。
「そんな小さい声で凄んでも怖くないぞ?」
笹木が耳元でグサッと心を刺してくる。
「中邑さんに謝りな!」
山元は親友の前で人を喜ばせる芸ではなく私欲に溺れた芸を見せていたことに対してかなり怒っていた。中邑は下を向いて両手で顔を覆っているばかりだ。罪悪感が植え付けられていく。
「どうして大きくさせてるのよ! 説明できないの?」
市河が俺の後ろに回って尻をぺちんっと叩いた。反動でおちんちんがみんなの前でブラブラ揺れる。
「な… なんなんだっ このやろ!」
喜多野も威勢はいいが攻め手がないらしい。勃起したおちんちんを見るのは初めてなのだろう。男の子っぽい容姿だが、恥じらう姿は割りと可愛らしいじゃないか。
「…」トラウマを植え付けられたかのような放心している顔の渡部妹。
「もうっ 最低!」妹の目を覆って部屋から連れ出す渡部姉。相当にお怒りのようだ。
「あれって包茎って言うんだよねぇ」ヒソヒソと杁山が守谷に話していた。
「ちょっと感動したわ。勃起って初めて見ちゃった」クスクスと守谷は杁山に感想を漏らしていた。
むっつり女子コンビめ。違うクラス同士なのに、すっかり意気投合しているようだった。
「これはもうアレだよね。修学旅行のときみたいにお仕置きしなきゃいけないんじゃない?」
柏城が意外にも積極的な意見を述べた。
「前は先生にお尻叩きされてたよね。今度はそれにプラスしておちんちん叩きしたらっ?」
懲らしめちゃえっと小島が乗ってきた。
「ほら。どういうことなのか説明できないならお仕置きするよっ?」
山元が詰めてくる。
俺は「うっせぇ…ブツブツ…」と大声で言い放った。自分で思っているよりも声がでない。完全に萎縮してしまった。いくら男でもこれだけの女子に囲まれたら… 手も足も出ない…。卑怯なやつらめ…。しかしだからと言って認めるわけにはいかない。大勢に囲まれたからと言って女に男が負けるわけがないのだ。断じて認めない。
結果、「うっせぇ…」としか言いようがなかった。
「声小さいよ! アソコは大っきくしてるけど!」
あははっと寛容なグループの女子たちが笑った。
渓口が女の子座りでしゃがみ込んだまま俺を見上げてきた。下を向いて表情を隠す俺を下から覗き込んできやがる。俺の悔しがる表情をニヤニヤと観察しているみたいだ。
俺は自然と泣きそうになってきた。