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お楽しみ会で 〜地獄のフルチンフルーツバスケット〜(2)

△ミツル


 今日の5、6時間目は学期末恒例の『みんな大好き、お楽しみ会』だ。

 だが、いつもと様相が違っていた。


 充はノーパンなのだ。


 1時間目のプールの授業が終わった後、その事件は起こった。着替えのとき、ブリーフがなくなっていたのだ。これは前代未聞の事件である。いったい誰が、あんなものを盗む必要があるのだろうか?

 だがこのクラスにパンツ泥棒が居るのは間違いない。捕まえてやる。

 落ち着かないのを我慢しつつ、クラスメイトの面々を見回す。まだ2時間目の授業中だが、充は目を光らせて挙動のおかしいヤツ、教室内の違和感を探していた。


 着替えのときにこちらを見てニヤニヤしているようなヤツはいなかった。ただの悪戯なら気配で解るはず。仕掛けてきたヤツは困っている充のリアクションを見たいから悪戯をするわけだから見ている気配というものは少なからず「ある」ものなのだ。

 だがそれがないということは本当にただの『盗難』である。『盗難』? ただ欲しいから盗んだ? 男子のパンツなど欲しいヤツなんて本当にいるのか?

 疑問は拭えなかった。

 充は誰がやったんだと騒ぎ、喚くことはしない。バスタオルを巻いてスク水を脱ぎ、パンツを穿かずにズボンを身に着けた。たんたんと、ごく自然に、何食わぬ顔で。


 朝のホームルームが始まる前、アンコと喧嘩したことは関係しているのだろうか? お楽しみ会のフルーツバスケットで『鬼』の間は『ズボン及びスカートを脱げ』と提案したことが誰かの反感を買った。充分あり得るだろう。充も、もし鬼になればルールに従いズボンを脱ぐことになる。そのときノーパンならフルチンでフルーツバスケットに挑むことになるわけだ。

 犯人の狙いはソレだろう。充に恥をかかせようというわけである。

 そんなことでは動じないさ。

 逆にそんなヤツは返り討ちにしてやろう。鬼にならない自信はある。あぶり出して全裸にして逆立ちさせて歩かせてやればいいのだ。


 犯人の目星は何人かピックアップできる。

 筆頭は今朝の喧嘩の相手、前田靖奈(まえだ やすな)だ。通称アンコ。

 近所に住む腐れ縁の女子で、何かと言うと上から目線で突っかかってくる生意気なヤツ。充は彼女が嫌いだった。アンコも充の乱暴なところをいつも怒ってくるので嫌いなのだろうと思われる。

 男子の着替えは教室を使う。鍵は学級委員長が持っている他、職員室にも予備がある。それを使えば女子にも盗みを働くことは可能だ。有力な容疑者である。


 二人目の容疑者はリュウシン。森谷竜心(もりたに りゅうしん)だ。

 彼は充の友人である。

 学級委員長を務め、正義感のある男。こいつは友人として仲がいいのだが、充の無茶苦茶な提案には平然と異を唱える。決して同調したりしないわけだ。友人だからこそ間違っていると全力で当たってくる熱いヤツ。異常なルールの提案に反対したリュウシンなら、充に諦めさせるためにパンツ泥棒をしたとも考えられる。

 彼は正義のためなら何でもやる。


 三人目の容疑者は下平瑠璃香(しもひら るりか)。通称ヘンタイラリ子だ。

 男子のパンツがただ欲しくて盗んだ説が成り立つとすれば間違いなく犯人はラリ子だろう。彼女は低学年の頃、男子が体操着に着替えるのを盗み見ていたことがあった。プールのときも股間を注目されていたような気がするし。暗い性格で何を考えているか解らない怖さもある。

 実行に移すだけの度胸があるかは怪しいが、ヘンタイラリ子の名を冠するだけあって“可能性”は捨てきれなかった。

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