その深衣奈の一言で俺は凍りついた。
「美里ちゃん、コイツのブリーフ脱がしてあげなよ」
深衣奈は美里の肩をたたいた。俺は引きつった顔を美里に向けた。好きな女子なのに。みんなの前で好きな女の子にパンツを脱がされる!?
場の空気が変わったと思う。深衣奈は本当に愉しそうに笑った。俺はその無邪気さに恐怖した。深衣奈の女子たちはそこまでするつもりはなかったという雰囲気だ。でも限度を知らないこの先輩なら本当に俺を丸裸にするだろう。
俺は再びエビが跳ねるように身体全部を使って暴れた。何としても最後の一枚は守りぬかねば!そのおかげもあって千代の左手ロックは外れ、跳ねた足が南の顎を捉えた。南が後ろに倒れる。倒れる際に見てはいけない南のパンツを見てしまった。クソッ痩せれば可愛いのに!俺は狂ったように左手を振り回し、早希のおっぱいの辺りを押してしまった。
「きゃー」
「暴れだしたよ。コイツ、みんなで止めて!」
深衣奈が指示を出す。狼狽えていた1年の女子、面白半分で眺めていた2年の女子が近寄ってきて周りを取り囲む。だが彼女たちは積極的には何もできない。
暴れた甲斐もあって、激痛の走る右腕のロックが緩んだ。真悠子が怯んだ好きに右腕を抜き出し、俺は身体を起こして逃げ出す。しかし間抜けにも足首に絡まったズボンが邪魔で盛大に転んでしまった。
たくさんの失笑が聞こえる。うつ伏せに倒れた俺はそれでもすぐに起き上がろうとした。だがすっと首筋に白い腕が巻かれる。裸締めだ。俺はお好み焼きをひっくり返すかのごとく後方に倒れ込む。やばい、このままでは落ちる!
「よし真悠子、ナイスっ」
俺は両腕で白い腕を外そうともがくが徒労に終わる。それどころか足首に絡まるズボンは早希によって取り除かれ、上着は千代と深衣奈が協力して脱がしてきた。ついでに靴下と上履きも脱がされてしまう。
落ちるすんでのところでロックが外された。再び彼女たちが俺の周りを取り囲む。俺は咳を繰り返し身体を丸めた。四面楚歌とはこのことか。追い詰められた俺は最後の力を振り絞って逃げ出した。すぐに早希と深衣奈に捕まるが俺は叫びながら無茶苦茶に暴れた。腕を振り回し、身体を振って走った。誰かのおっぱいを触った気がする。俺は奇跡的に彼女たちの間を抜けだすことができた。教室の外へでなければ!パンツ一丁で校舎を走り回ることになるかも知れないが、美里にちんちんを見られるのだけは避けたい。
「あ」
目の前に復活した南が鬼の形相で立っていた。俺はあぁこれで終わったなと思った。太い腕がスローモーションで迫ってくる。
ゴッ。きれいに南の右ストレートが決まる。俺は鼻から血を吹き出して倒れた。
暴れ疲れた俺は、息を切らせて動きを止めた。意識も飛んでいたかも知れない。
「よくもこれだけ暴れたな。少しは罪の意識感じろよコイツ!」
俺はブリーフ一丁で10数人の女子に囲まれている。恥ずかしい。力で負けて。情けない。本当に情けない痴態だ。
「コイツどうする?」
南が荒い呼吸を繰り返す。
「みんなの前でもっと恥ずかしいことさせようよ」
腕組みをした早希は笑ってみんなに呼びかける。
「美里ちゃんどうしたい?」
深衣奈が美里の顔を覗き込む。
「別にもう興味ないけど、これだけ暴れてみんなに迷惑掛けたし、お仕置きは必要かな、ねえ早希?」
「よし、美里、じゃあまずパンツ脱がしちゃえ」
「ええー私?」
美里は言いながらも前に進み出て俺のブリーフに手を掛ける。そして躊躇なく、ぐっと引き下げる。好きな女の子にこんな屈辱的なことをされるなんて俺のプライドが許さない。しかし俺は思うように身体が動かない。動かないけれど、脱がされまいと俺は辛うじて動く両手でブリーフをガッチリすばやくロックしていた。
「コイツ、手、邪魔っ」
美里が力任せにブリーフを引っ張った。
「や、やめてくれ」
伸びに伸びたブリーフの裾からもうちんちんが見え隠れしている。女子たちは固唾を飲んで見守る子や「やれー」と囃し立てる子など様々だ。美里にこんな形で性器を見せたくない!
美里を足蹴にすることなんてできない。守りの薄いお尻の方から引っ張られる。お尻が丸出しだ。せめて前だけでも守らなければ…。ブリーフのゴムがビッ!ビッ!と伸び切る音が響いた。
「駄目だ、脱がせない。みんな手伝って?」
美里の呼びかけに、早希と深衣奈が俺の腕を片方ずつ取る。千代と真悠子がブリーフに引っ掛かった俺の指を丁寧に外していく。ついにブリーフから手が離れてしまった。
「やっと手が離れたね。じゃ脱がすよー。みんな見ててっ」
ついに美里の手によって、俺のよれよれになったブリーフはするするするっと下げられる。性器が露わになる。太もものところまで下げられたところで女子たちの声が上がる。勝利の歓声、驚き、汚いものを見てしまったという悲鳴。美里の手は止まらず足首までブリーフが下げられる。そして足首から引き抜かれる。最後の布を剥ぎ取られてしまった。ブリーフを脱がされてついに俺は全裸になってしまった。美里は俺のちんちんを見つめていた。俺は両足を抱え込むように曲げようとする。だが美里の手で太ももが押さえつけられた。これでちんちんを隠す術をすべて失ってしまった。美里の冷たい指が太ももに絡み付いて不覚にも気持ちがいいと思った。
「顔真っ赤っ赤だね」
「小さい…」
「毛が汚い。グロいね」
「ちんちんてこんななんだ…」
女子たちは口々に感想を言い合った。俺を取り囲んで、みんな俺のちんちんを見て笑っていた。俺はできるだけ内股にして何とかちんちんを隠そうとした。
「美里、しごいてやれよ」
早希が言った。
「えー嫌だ。こんなの触りたくない」
美里は否定する。俺は恥ずかしくて堪らない。目の前に大好きな美里が居る。彼女は服を着ていて俺は素っ裸。女子はみんな服を着ているのに俺だけ生まれたままの姿。死にたい。本当に情けないとしか言えない。
俺はいつの間にか泣いていた。啜り泣く。嘘だろ…。女子の前でみっともなく涙を流すなんて、男として、小さくてもプライドはズタズタだった。