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閉ざされた村で 竜一の章 プロローグ 姫鬼の舌遣い(1)

 “姫鬼”と言っても外見や腕力などは人間の女性とさほど変わりがない。

 このような女型の鬼のことは古来より“姫鬼”と呼ぶ。人間が鬼と化した“鬼女”とは違い、姫鬼は純粋な妖かしである。

 彼女たちは集落をつくり、人間と交わり、子を成して平和に暮らしていた。姫鬼こそ女性の王国の祖である。

 だが平安時代に悪さをする妖怪として貶められ、名のある武将に討ち滅ぼされてしまった―。


 牛田竜一(うしだ りゅういち)は素っ裸のまま走っていた。
 辺りは男子禁制の森だ。竜一は早く森を抜けなければと焦る。必死で走った。だが幸い村の女たちが追ってくる気配はなかった。
 足の裏は尖った石ころや小枝が刺さり血だらけだ。顔や胸に返り血をたくさん浴びている。目の前が赤く滲んでいるような気がした。気にしてはいられない。
 右手には御神体と呼ばれる小太刀を携えている。言い伝えによれば鬼を斬るためのものだそうだ。役に立つのだろうか。錆びて使い物にならないような気はしている。竜一はそれでもお守りのように大事に抱えていた。
 ひたすらに走る。ぶらぶらとみっともなく陰茎を曝け出して恥も外聞もない。そんなことよりも〈やつが来る〉という焦りでまともな思考回路が働かなかった。何に変えても逃げ切ることが重要だ。一山越えれば他県に入るだろう。一昼夜かかるかも知れないが走り続ければ体力の面ではやつらとて人間と同じ。脚力だって人間の女と同様なのだ。死ぬ気で走れば大丈夫だろう。
 問題なのは捕まったとき。竜一のように領域(テリトリー)を犯した男を生かしておくとは思えなかった。とにかく複数人数の女たちに捕まらなければ竜一の勝ちだ。生き延びれば『証言』だけでも使いようはある。彼女たちの実態を明るみにするのだ。

 ガサガサと落ち葉が踏まれているかのような音や獣が草むらに隠れているような気配がした。
 陽が落ちかけて既に森の中は真っ暗だが高い木々の隙間から僅かに光源が漏れて竜一を導いていた。
 下を小川が流れている。急角度だが竜一は滑り降りて4歩程度で横断した。足を引っ掛けて小高い岩場を登る。大股開きで尻の穴も金玉袋も後ろから見れば丸見えだ。誰も見てないと思って崖を大胆に登った。
 どさっ
「ふうっ… ふう… !? ひぃい!?」
 小猿でも降ってきたのかと思った。
 竜一はその場に力が抜けたように腰を落とす。

「うふふふっ」
 女が立っていた。
「わちの足から逃げられるとお思いなの?」

 雪のような白い着物だ。いや襦袢というものだろうか。帯はなく、はだけて太ももや下着、おへそまでも見えていた。足元は草履だ。
「うふふふっ。まだ諦めのついていないといったお顔ね」
 少女の姿をした姫鬼だ。
 腰まである艶っぽい黒髪に14・5歳程度の幼い容貌。ひどく赤い口紅に、頬には朱が差している。とろりとした目つきは酔っ払っているようにも見えた。身長は竜一よりも頭二つ分は低い。要するにまだ子どもだ。下着も露わにして堂々と歩いてくる。
「みなが捜しておりますよ。今、お兄さんに逃げられると困るのですって」
 にやと笑った。
 殺すしかない。
 竜一は刀を鞘から抜いて振るおうとした。だが同時にパシッと手首を蹴り飛ばされる。少女は緩慢とした動きに見えたが、手首につま先を的確に合わせられて、小太刀は3メートルほどの距離を飛んだ。
「うぐっ」
 竜一は恐怖する。
『この娘は確か天都(あまみや)の…。やはりコイツが姫鬼だったのか』
 今さら気づいても後の祭りだ。
 手首を掴まれた。ギリリと締め付けられる。少女の左腕一本で竜一は吊り上げられた。腰が浮いて強制的に立ち上がってしまった。
「う、うわぁっ」
 恐怖に顔がひきつって空いている手で少女を突き倒そうとする。突き飛ばして逃げ出すつもりだった。しかし左手も軽々とキャッチされて両腕が塞がった。
「お兄さんのこと犯して構わんって言われてるよ? ちょっと試してみていいかな?」
 にたと笑う。
 少女が悪戯っ子にお仕置きでもするときのような目だ。
 大の大人が子ども扱いにされている。竜一は複雑な感情が込み上げて、瞬時に抵抗を試みた。少女にねじ伏せられる大人などあるわけがない。怒りや情けなさで抵抗したが恐怖は打ち消せなかった。コイツは鬼だ。姫鬼(ひめおに)と呼ばれる類の妖魔と聞いた。そんなものが本当に存在するなんて…。
 見た目は至って普通の人間だ。力も普通以下のはず。だがこの娘の力は異常だった。聞いていた話と違う。本物の“鬼”としか思えない。
「ぁはああぁあっっ!?」
 竜一は悲鳴を上げた。手首が捩じ切られそうだ。押されて後ずさり、背中を木の幹に押し付けられる。少女は舌っ足らずの口調で「わちが舐めてあげるねぇ」と言ってしゃがんだ。
 物怖じしない大胆な娘だ。M字開脚で下着も露わに、はしたない恰好で、いつの間にか小さな胸の膨らみも見えていた。肩から着物がずり落ちそうだった。
 舌先を尖らせて伸ばしてくる。剥き出しの亀頭にちろっと触れた。
「ぅっ」
「お兄さん。逃げないの?」
 言ってから少女はまた舌先で小馬鹿にするように突っついてきた。生温かく湿った感触が肉棒の先を舐める。尿道口やカリを突っつかれて快楽の電流がゾクゾクッと全身に走った。
「はうっ」
 竜一は童貞だ。草食系を通り越して植物系男子と呼ばれている。26歳にもなって女性の経験がない。風俗にも行ったことがなかった。キスはおろか、手を握ったこともない。だから女の前で裸になったのはこの村が初めてだ。
 ほんの少しの快楽でムクムクと勃起していた。ちろちろと舌先が微動し、ちょんちょんと突つかれるとたちまちに亀頭が真上を向いてしまったのだ。
 女が怖い。初めてそう思った。
 竜一は少女を突き飛ばそうと掴まれた手首のまま振り回す。しかし固定されて1ミリも動きやしない。蹴り倒そうと右足を上げてみるが、少女は至近距離に居すぎて蹴ることもできない。せいぜい膝で小突く程度だ。少女はそんな攻撃を意に介せず、ぱくりと亀頭を咥えた。上を向いたレバーを引き下げるように肉棒はグイと下を向いていった。勃起したまま、彼女が舐めやすいように無理やり下げられる。そして美味しそうにもぐもぐと動かす。小さく開いた口の隙間から唾がいやらしく糸を引いて伸びるのを見てしまった。
「あぁっ… あはぁっ…!?」
 大量の唾液はとろりとして人間のそれより粘性があるように感じた。同じ成分なのかも知れないがやはりどこか人間と違うような気もする。
「うぅんっ。はむっ。んっんっ んっんっ♪」
 はむはむと嘲るように亀頭を圧迫してきた。ビクッビクッと背がしなって身体が跳ねた。全身から一気に汗が吹き出してくる。歳下の女から与えられる初めての快楽に脳が痺れていった。
 少女はうっとりとして膨張した亀頭を舌でローリングしていた。れろれろと大胆に暴れる。竜一はなんとか膝で蹴り倒そうとするが少女はまったくどこふく風だ。逃げようがなく竜一はずるずると腰の力が抜けて尻もちをついていった。木の根元に座り込んでしまったのだ。
『お、犯される…』
「んんっんっんっ」

 美味しそうに、肉棒にむしゃぶりつく少女。快楽に身を任せて竜一は徐々に抵抗の意思を失っていった。

 今回のお話は全12回投稿を予定しています。

 『伝奇もの+18禁』を書きたくて文体はほどほどに固いですね。

 書き始めて意外に長編になってしまったので、よりディープなものはブロマガで書くことにしました。

 今回『竜一の章』と銘打っているのはブログ用に書き下ろしたからです。短編になっています。長編の前日譚のような感じですね。

 閉ざされた母系社会の村で起こる惨劇。男性の尊厳はまったくありません。

 M男性でなければ読破は不可能かと思いますが…。

 どうぞお付き合い宜しくお願い致します。

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