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掃除当番で(1)

 佳苗は怒っていた。けんじたちは掃除当番なのに掃除をせずに箒を持って遊んでいるだけだからだ。駄弁ったり箒でちゃんばらごっこをしたり、とにかく協力しようとしない。
「ちょっと、あんたたち! ちゃんとやりなさいよっ」
 佳苗はそうやって度々注意していた。
「ハハッ。んなかったりぃこと言ってっと老けるぞっ」
 けんじは憎たらしい笑みを浮かべて、一度たりともまともに取り合おうとしなかった。
 佳苗は自分のことを真面目過ぎだとは思わない。掃除なんてやって当たり前だし、誰かがサボったとしても結局は誰かがやるものだ。佳苗たちの班は5人で1階から4階までの東階段を担当していた。女子は2名で男子はけんじを含めて3名。だが男子3人はサボってばかりなので階段掃除は実質、佳苗ともう一人の女子、田村深智(みち)の2人だけで行なっていた。だから怒り心頭なのだ。女子だけが真面目に掃除して、男子は免除されてるなんて許せない。何とかして懲らしめる方法はないものだろうか。
 先生に訴えたことがある。しかし見回りに来た先生の前では掃除をしているふりを始めるのだ。これでは効果がない。男性の教諭だからだろうか。あまり深刻に考えてくれていないように思う。
 けんじたちはクラスでは特に目立つわけではないが悪ぶって格好をつけている。不良とまではいかないが、真面目に生活する生徒たちのことは馬鹿にしていた。そのこともあって佳苗はかねてからいい印象を持てなかった。けんじたちのことは女子たちの間では嫌な奴らとして認識されていたのだ。
「もう、あいつらまたサボってんじゃん」
 深智はちりとりを持って腰を屈めながらけんじたちのことを横目で見る。
「私もう一回言ってくる」
「やめときなって。効果ないよ」
 佳苗は箒で掃くのを中断してツカツカとけんじたちの側に寄っていった。
「ヒャッハッハッ」
「お前それ最悪じゃん。ハハッ」
「でも、俺はその娘のこと好きでも何でもないし。仕方ないわ」
 会話の内容は解らないがロクでもないことだけは解る。箒をバット代わりにして振り回してる背の低い男子は笠原、通称クーちゃん。黒縁メガネをクイッと持ち上げてクールそうに振舞っているのは寺田、通称テリオ。そしてリーダー風を吹かせているのが川西けんじ。3人は階段から少し離れた廊下で駄弁っていた。そうやって掃除の時間が終わるまで時間を潰しているのだ。佳苗たちが掃除を終えるのを待ってから自分たちも掃除をやり終えた顔をして帰っていくのだ。佳苗は肩を怒らせて腰に手を当てて仁王立ちになる。箒は金棒のように誇示して持つ。
「おっ、何だよ? 終わったんか? はえーじゃん。よし帰ろうぜっ」
 けんじはへらへらと笑みを浮かべて仲間たちに帰ろうと促す。
「掃除まだ終わってないよ」
「あん? 」
 帰ろうとするけんじたちの足が止まった。
「まだ掃除してるんですけど」
「何だよ。まだかよ。ちっ、早く終わらせろよな…」
 言葉尻は小さく、けんじの身体はもう佳苗の方を向いていなかった。用がないならこっち来んなとでも言いたげだ。
「なんで私たちがあんたたちの分までやらなきゃいけないの?」
「…」
 けんじは心底鬱陶しそうな顔をしていた。振り向いてその顔を佳苗に見せてやる。
「いつもいつも。自分の掃除区域くらい自分でやりなよ!」
「うっぜーな。小姑かよ」
 小姑がそんなこと言うかどうか佳苗は知らないが、恐らく鬱陶しい奴と言いたいのだろう。
「何回でも先生に言いつけるからね!」
「ぷっ! 言えばいいじゃん。どうぞどうぞ」
 けんじはおどけて佳苗を馬鹿にする。
「クラス会議でも議題にあげるし!」
「はっ。好きにすればぁ? 怖かねぇんだよ。な?」
 けんじはクーちゃんとテリオに同意を求める。2人ともそうそうという顔をしていた。
「もう! ムカつく! 絶対言ってやる」
「言えばぁっつってんだろ」
 ニヤニヤとけんじは佳苗に一歩近づいた。近づいたかと思うと一気に距離を詰めてきた。そして横を通り過ぎる。佳苗の履いていたスカートが思い切りめくり上げられていた。
「いやっ…」
 佳苗は一瞬遅れて気づいて急いでスカートを手で抑える。箒がからんと音を立てて倒れた。次の瞬間には一気に笑いが起こる。「ヒャハハッ」と佳苗を馬鹿にする笑い声だ。
「薄ピンクのパンツだったな?」
「!?」
 けんじにスカートをめくられた。その事実に佳苗は顔を赤くしてうずくまった。3人の男子の笑い声が響く。佳苗の頬に涙が伝った。


コメント

  1. tk より:

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    けんじ達を泣いて反省するまでフルチンの刑や公開生尻叩きの刑にしてほしいです。
    強い女教師でもいないのだろうか。

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