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修学旅行で(1)

 修学旅行のとき俺は裸で外を歩いたことがある。

 別館に泊まっていて、風呂に入るためには本館まで行かなければならないのだ。距離としては100メートルくらいだろうか。

 別館にもユニットバスはあるが水の出が悪く、故障っぽいから使うなと言われていた。本館の大浴場のほうが広々しているし、旅行に来ている感があるからぜんぜん良いんだけどな。

 だが結局はこれが原因で俺はおちんちんを見られてしまったのだ。

 風呂の時間になってあることに気づいた。

 家からタオルを持ってくるのを忘れていたのだ。

 ズボラな性格だから旅行の準備といっても替えの靴下とパンツくらいしか持っていくものを思いつかない。だいたい小学生なんてそんなもんだろ。違うのか?

 とにかく俺は服なんてずっと同じでいいし、髪型もボーズだから気にしないし、トイレから出てもズボンの裾でテキトーに拭くしな。歯ブラシやなんかは母ちゃんに持って行けと言われてカバンに詰められたわ。

 でもバスタオルと股間を隠すようなタオルは忘れてた。小さいハンドタオルは母ちゃんに持たされてきたから、これで代用するしかないな。

「何だ、お前フリチンか?」

 風呂場で入浴を監督?する男の先生が俺に聞いてきた。

 脱衣所で服を脱いで大浴場に入るとき、俺が股間も隠さずに大手を振って歩いていくのを見て不思議に思ったのだろう。他の生徒はタオルやスポンジを持って入っていた。

 みんな準備がいいな。シャンプーなんか備え付けのやつ使えばいいだろ。スポンジなんか要らないし、手で洗えばいいんだ。

 ハンドタオルは身体を拭くために残しておいた。

 大浴場といっても家の風呂の4倍くらいで大したことないな。何十人も入れるわけじゃない。このことから入浴は交代制となっていた。

 4人ずつ、時間差で入らなければならない。大人数だから10分くらいしか浸かっていられないのだ。風呂くらいゆっくり入りたいけどな。

 風呂から上がって俺は驚愕した。

 服が無くなっていたのだ。

 サトシの奴!

 こいつは俺らより先に入浴した一つ前の組の男子だ。俺よりバカでいたずら好きの奴で、やっていいこととダメなことの区別がついてない。

「ハンドタオルしかねぇ!」

 周りの奴が「どうした?」とか聞いてくるが、服が無くなっていることに対して「ふーん」くらいの返しで問題として捉えられなかったようだ。

 先生も「ハンドタオルがあってよかったな。サトシは後で叱っておいてやる」程度の返しだ。別館に戻るのに全裸で行かなければならないというのに、ハンドタオルがあるから全裸ではないとの判断かよ!

 その小さなタオルで身体を拭いて、俺はホテルのサンダルとハンドタオルだけで別館に戻ることになった。

「うふふ」

「きゃっきゃ」

 前から柏城と山元が歩いてくる。

 同じクラスの女子だ。女風呂も交代制で次の組がやってきたところなのだろう。

「きゃっ」

 短く悲鳴を上げる柏城。山元も目を見開いて驚いてやがる。男風呂の敷居からハンドタオル一枚の裸の俺が出てきたからだ。

 こんなもの恥ずかしがるようなもんじゃないさ。一応、股間は隠れているんだからな。俺は堂々としていた。

「うわバカがいる…」

「何なの!あんた!?」

「うるせぇ! ブッス!」

 俺は股間に充てたハンドタオルをグイッと肌に密着させて隙間を作らないようにした。お尻を向けないようにそいつらの横を通り抜ける。

 汚物でも見るかのように柏城と山元が顔をしかめる。

「きゃ」

 廊下の曲がり角から小島と横峰が顔を出した。柏城・山元と同じ組の女子だ。

「なに、あいつどうしたの? 素っ裸で…」

 小島が他の男子に聞いている。俺と同じ入浴組の男子だ。「サトシに服持ってかれたみたいだぜ」と説明しながらも笑って足早に去っていった。

 俺は小島と横峰にお尻を向けないように前を向いた。必然的に柏城と山元にぷりんっとしたお尻を見られることになる。

 後ろで小さく「いやっ」と悲鳴が上がった。柏城がドン引きした表情で軽蔑してるぜ。

「かわいそう…」

「誰かに服貸してもらえばいいのに…」

 小島・横峰が一メートルの至近距離で俺に憐れみの言葉をかけた。

 俺は左手でケツの割れ目を隠しながら右手のタオルでギュッとおちんちんを包み込む。

 なんだか屈辱だ。いつも顔を合わせている同じクラスの女子たちに、ほぼ丸裸の状態を見られているなんて。

 カラカラ…と女風呂のドアが開いてまた女子の声が聞こえてきた。

「うわぁ…」

「ひっ」

 などと耳に届く。

「ぷっ 何アレっ?」

「やべーっ」

 遅れて笑い声も追加して聞こえてきた。

 俺と同じ時間帯に入っていた組の女子だろう。風呂から上がってこれから別館に帰るところだ。ということは俺と一緒に別館に向かうことになる。

 俺は足早に小島と横峰の間をすり抜けた。狭い廊下だから真ん中を通るしかない。

 二人の肩に触れる。ドンッと押すようにして無理やり抜けて角を曲がった。

 二人だか三人ならまだしも、人数が増えると嫌だ。目が多くなれば、屈辱感がさらに強まるのだ。

 クラスメイトの女子たちの、クスクスと笑う声が聞こえてくるようだった。

コメント

  1. 匿名 より:

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    いいシチュですね。続き期待です。

  2. Chuboo より:

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    遅くなりましたが、ありがとうございます。
    ご期待に添えたかどうかわかりませんが、先週分で「修学旅行で」は完結できました。
    せっかくの旅行なので、続きを書けるといいなと。全裸で三十三間堂を回ってみたいものです。

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