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修学旅行で(5)

 別館まで、あと70メートルくらいか?

 しばらくは普通に歩くことができた。

 中邑と市河は後ろを気にしながら、笹木と渓口は前を気にするフリをしてクッチャベリながら歩いた。

 裸の俺に飽きたのか、もう笑いもせず普通に進んでいく。お喋りに夢中で笹木と渓口は振り向きもしなかった。中邑と市河も索敵は続けているが、今日はどこの観光スポットに行ったと報告し合って俺のことは眼中にないようだ。

 何だか一人だけ全裸の俺が本当にバカみたいだ。

 みんなが笑ってくれるからスク水の着替えも早脱ぎで机の上に立つことができたのだ。今日だってそんなノリで裸で帰ればみんな笑ってくれると思っていた。

 現に男子たちは「裸で帰んのかっ」て笑ってくれて、俺は人気者気取りだった。女子だって笹木や渓口はあの頃みたいに笑ってくれた。しかし男子と違って女子たちの笑い方は質が違っている。だからこそ何だか気恥ずかしいと思ったわけだが…。男子たちみたいなカラッとした笑いじゃないのだ。

 笑わせているつもりが、実は笑われているのではないか?

 そしてついには笑いもなくなって、日常のお喋りをする女子たち。俺が素っ裸なのに4人とも平常心で歩いていやがるんだ。

 何だか人気者としてのプライドが傷つくぜ。

 惨めな感じがしてきた。

 俺を囲む女子たちは現代人としてまっとうに服を着て歩いているのに、俺は現代人の枠から外れて犬のように裸であるのが当たり前になっていた。

 笑いがないとただただ恥ずかしいだけだ。

 悲鳴も笑いもないなんて…。女子の前で裸で居ると、ただただ惨めで情けない。

 そして裸のまま外を歩くというのは、恥ずかしい行為だと思い知った。

 タブーを犯して笑いをとってスター気取りなんて、ただの幼稚な行為でしかなかった。

「あっ さっきのオバサンよ!」

 市河が声を殺して報告する。俺は顔を上げて振り向いた。

「うそっ? なんでっ?」

「戻ってくるよ! 急いでっ」

 笹木と中邑が反応する。

「遊んでるフリしよっ。押しくらまんじゅうだっっ!」

 渓口が提案する。

 市河の発見が早く、女子たちは素早く連携することができた。まるで練習でもしてたんですかってくらい迅速だ。

「ごっふっっ!」

 俺は四方から駆け寄ってきた女子に押しつぶされる。

 渓口の言った通り押しくらまんじゅうだ。4人がお尻を向けて俺を囲んだ。

「それっ 押しくらまんじゅうっ 押されて泣くなっっ♪」

 女子たちは校庭で遊ぶみたいにキャッキャウフフしはじめた。

 今度は外壁もないから作戦としてはコレしかなかっただろう。

 ゆっくりとオバサンと犬が近づいてくる。俺たちを怪しんで無遠慮に見てきた。距離的にはまだ50メートルくらいか。

 ジトッと訝しげに俺たちを見ながらどんどん近づいてきた。ときどきそっぽを向いて平静を装ってはいるが、あからさまに俺たちを怪しんでいるらしい。来た道をすぐ戻ってくる時点で不自然だが、オバサンは素知らぬ顔で俺たちの様子を見ていた。

 うまくごまかせるだろうか。

 笹木のお尻がどすっと俺を打った。股間を抑えた俺の両手の上からヒップアタックだ。ずしっと強い当たりで俺はよろける。だが、転ぶことはない。中邑と市河もお尻を俺に押し当てた。彼女たちは大人しいものでゼロ距離からグイグイ押してくる。ジャージ越しに伝わる市河の柔らかいお尻。プリーツスカート越しの中邑の柔らかいお尻。密着してグイグイと俺を押してきた。

「押しくらまんじゅうっ 押されて泣くなっっ♪」

「うぐっ… はうっ…」

 ばっす!

 力加減を知らない渓口が飛んでくる。小さなお尻だ。まるで何かの恨みを晴らすかのようにぶち当たってきた。よろける俺はまた中邑と市河に支えられる。

 笹木と渓口はおもしろがって可愛らしいポーズで何度もお尻を突き出してきた。

「や、やんめ… ろ…」

「頭引っ込めなさいよっ。ちゃんと遊んでるフリしなきゃっ」

 市河に諭される俺。

「あははっ 押されて泣くなっっ♪」

 ばっす!

 渓口がジャンピングでヒップアタックしてきた。ポロッとタオルが俺の手から離れる。

「ここは街灯が近いからちょっとずつソッチに移動しよっ」

 中邑が気を利かせてまんじゅうの集団は街灯の下を離れていった。

「おでのたお… るぅ…」

 手を伸ばしても中邑の太ももに触れるくらいでタオルはどこかへ行ってしまった。スベスベの柔らかな太ももだ。弾力があって温かい。

「あはっ♪」

 4人の女子のお尻がグイんグイんと俺を押してきた。手の上から思い切りお尻をぶつけられて尻肉の柔らかさを感じる。温かくて包み込まれるようだった。押されておちんちんがぐにゃっと潰れる。ふとんの上にダイビングしたみたいな感覚でおちんちんが変形する。ふとんに押し付けて気持ちいいときの感触だ。

 両手はおちんちんを離れて為されるがままだ。

 俺のお尻が中邑のお尻と市河のお尻に押されて気持ちがいい。中邑はグイグイと撚るようにしてお尻で「の」の字を書き回し、上下に擦り付けるように押し上げ、押し下げ…。市河はフリフリとフラダンスでも踊るように俺を挑発しながら擦り付ける…。また二人して俺を尻相撲で土俵の外に押し出すかのように可愛いお尻を突き出してくる。

「はっぐ… ふぐぅ…」

「きゃはっ まんじゅー! おっされて泣け泣けっ」

 笹木が意地悪くはしゃぎだした。声のトーンは夜だから抑えめだが、何か仕返しでもするかのように力を込めてきやがる。

 餅つきでもするみたいに笹木と渓口は交互に俺の股間を狙っていた。

「ほげっぷ!?」

「きゃはっ」

 ぱさぁっと笹木のサイドポニテの髪が揺れて俺の顔にかかった。

「えーい」

 小ぶりな渓口のお尻が下から突き上げるように打ってくる。まるで幼児みたいなふにゃふにゃの小さなお尻だ。

 笹木に押されれば市河に押し返され、渓口に押されれば中邑に押し返され…。

 柔らかいお尻で押されていると身体が10秒もしない内に熱くなってくる。少しでも隙間を作らないように身体を寄せ合う女子たち。防御もできない、倒れることもできない…。

 まるで煉獄だ…(某漫画の…)。

 オバサンが横を通り過ぎる。

 このまま何事もなく行ってくれれば…。

 静かに通り過ぎていく。

 良かった…。

 ホッとしたのも束の間。

「ワン!」

「!!?」

「ちょっとあんたたち?」

 60代くらいのオバサンはだみ声で呼びかけてきたのだった。


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